名前を呼ばれて目を開けると、
とても、優しい顔をした刀也くん。
「とやくん…?」
私は自分の部屋で寝ていたはずだけど…
「懐かしいね、刀也くんなんて学生時代の呼び方するの。いつもは刀也って呼ぶのに」
「へ…?」
優しい、愛おしそうな目で私をみて、
懐かしいと笑う彼。
「ご飯出来たから食べよう。お腹すいただろ?」
そう言って自然な動作で私の手を取って、
下の階へ降りていく。
「ママ!も〜!遅いよ!さくや待ちくたびれたよ〜?」
「ご、ごめんね」
「ほら、さくや椅子に座って」
「は〜いパパ」
手を引かれて、さくやちゃんの前に座った。
刀也くんは、そのままさくやちゃんの隣に座った。
「それじゃあ、手を合わせて。いただきます」
「いただきます」と私とさくやちゃんの声が重なる。
お行儀がいいのは刀也くんらしいなと思った。
目の前に置かれているビーフシチューを
口に運ぶ温かくて美味しい。
「さくや、口についてる」
甲斐甲斐しく世話を焼いている。
この、明らかに夢の中であろう空間。
私の前で幸せそうに食事をとる二人。
いつか、本当にこんな光景を自分の目で
見ることが出来るといいなと願いながら
温かなビーフシチューに再び口をつけるのだった。
再び目を開けたら、やっぱり私の部屋で、
日曜日の10時。少し寝すぎてしまった。
パジャマのまま洗面所へ顔を洗いにいくと
リビングには立花と刀也くんがいて、
明らかな寝起き姿を見られて恥ずかしいと思いながらも、
「お、おはよう」と言い逃げて
洗面所へ向かった。
あんな夢を見たばかりだからか、
鏡に移る自分の顔は真っ赤だった。
2020/09/25