家に行くと立花の姿はなくて、
どうしようかなと悩んでいると、
「あれ、桜華ちゃん?もしかして暇になった?」と叶さんに聞かれた。
「そう、ですね。立花居ないようですし…」
「じゃあ、ちょっと一緒にお話しよう?」
「いいですね!叶さんと話すの久しぶりだから嬉しいです!」
楽しくて面白い叶さんのお話が聞けるのは嬉しい。
黛家のリビングにおじゃまして、いつもの席に座る。叶さんは私に合わせて私の前に座ってくれた。いつもの癖で席に座っちゃったなぁって思いながら叶さんと話す。
「そういえば立花はどこに行ったんですか?」
「ん〜?アルスちゃんと遊んでくるって」
「なるほど、仲が良さそうでよかった…」
「ところで、最近どうなの」
「どう、と言われるても…?」
「刀也と」
叶さんは時々こうしてからかってくる。
もちろん、心配しているのもあると思ってる。
「いつも通り、ですよ。幼馴染ですから」
「そう。うちの子ってばヘタレなんだから」
そう言って綺麗なタレ目を細めて私を見つめる。
ああ、立花とそっくり。
「きっと、私も彼も一線を超える勇気ないと思いますよ」
叶さんが出してくれたあったかいココアに
一口口をつけた。
ほっ、と暖かくなる不思議なココア。
それは叶さんも同じで核心をついてくるくせに、私たちに全てを委ねている。
「あ、桜華ちゃん。」
温かいココアの入ったマグカップを手で包んで暖をとっていると思い出したかのように私の名前を呼ぶ叶さん。
「はい?」
「刀也起こしてきてくれる?」
「お易い御用です。ココアいつもありがとうございます。」
叶さんに感謝を伝えて階段を上る。
コンコンと私のノックの音が響く。
「刀也くん、起きてる?部屋、入るよ?」
少し待って、なんの返事もなかったから静かに扉を開けて部屋に入る。
ベッドで寝てる刀也くんを起こそうと思ったけど、叶さんのいたずらっ子のような笑顔を思い出して、ほっぺをつついたり、少しむにーっとのばして遊んでみたりする。双子のほっぺはなかなかむにむにでたまに立花に触らせてもらったりする。これだけ遊んでいるのに起きる様子のない刀也くんに対して、少し、勇気をだして、いつも呼ばない名前を呼ぶ。
「刀也、とーや、とやくん、」
でもやっぱり、どれもしっくり来なくて、
「刀也くん、起きて」
布団を少しめくって、肩を揺らす。
「ぅ、桜華…?」
掠れた寝起きの声で名前を呼ばれる。
「うん、おはよう」
「なん、じ…」
「今?今11時かな。叶さんがお昼そろそろ作ってくれるよ」
「ん、わかった…」
また布団に潜って寝ようとする彼に、
「ご飯出来たら呼ぶね」と言うと
「とーやって名前呼んでくれたら、おきる」
なんて言われて、ああ、聞かれてた。
「とーやのばか」と、もう呼ぶことの無いかもしれない呼びかたをした。
「桜華ちゃん」はっきりとした声で、
懐かしい呼び名。
「本当にもう…」してやったりみたいな顔で、寝癖で少しボサボサな髪で、格好なんてついてないのに、楽しそうなこの人は、
いつも私を乱すのだから本当にずるい人だと思った。叶さんのそう言うところがそっくりなのだとどこか他人事のように思ったのだった。
「先に席に着いてるから着替えるんだよ?」
「ん、分かってる」
扉を閉めて、階下へ下ると、
「刀也起きてたでしょ」なーんて叶さんに言われた。
「悪趣味なんですから本当に、私なんてからかって楽しいですか…?」
「可愛い子はついいじめちゃうって言うでしょ」
「可愛い子って……」
「母さん、桜華をいじめないでくださいよ」
「あーあ、来ちゃった。」
「本当に桜華からかうのやめてくださいよ」
「ふーん?まあ、ご飯出来てるから座んな」
「じゃあ、私帰りますね」
家族団欒を邪魔しちゃ悪いと、あと、熱い顔の火照りをバレたくなくて帰ろうとすると
二人して、「え?」なんて言うのだ。
「母さん桜華の分まで作ってますよ」
「桜華ちゃんの分作っちゃったよ」
なんて声を揃えるものだから、おかしくて
「ふふ、あはは」って笑ってしまった。
笑っている私にきょとん、としている二人だけど刀也くんが私の手を引いていつものようにいつもの場所に私を座らせて、自分は目の前の椅子に座った。
叶さんが、「たまにはそこ母さんにも座らせてよ」と言っていたけれど、
「ここは僕の場所ですよ」とはっきり言っていた。
お昼ご飯はカルボナーラだった。
髪を結んで、いただきますと言って
美味しくて温かいカルボナーラを頂いた。
流石叶さん、美味しいお昼ご飯でした。
2020/09/26