忘れ物と隠し事

「あっ」
私の声を聞いた刀也くんが、どうかしたんですかと私に声をかけた。
「あー…ジャージ忘れちゃった…立花、今日ジャージ持ってないよね?」
「残念なことに、家に干してありましたね。」
「そうだよね…今日、寒いから絶対に必要だと思ったのに…」
あーっと言いながら、しゃがみこむ私にがさごそと何かを漁ってる刀也くん。しばらくすると、バサッと頭に何かを被せられて、驚いていると、
「男子はマラソンやるんで、僕実は必要無いんですよね。僕、使わないんで使っていいですよ」
「ごめん、ありがとう。今度なんか奢る」
「プリンでお願いします。」
刀也くんから借りたジャージを畳んで鞄にしまう。何限かを無事に終わらせ、体育の時間を迎えた。
刀也くんのジャージは、思ったより大きくて、思いのほか、その、彼ジャーみたいになってしまって、ちょっと恥ずかしかった。同じクラスの女子に少しからかわれた。大きい分、いつもより暖かかった。
体育が終わって、着替え終わった休み時間に、立花にからかわれた。
「桜華、刀也のジャージ着てたでしょ〜?なに、付き合った?」
「そんなわけないでしょ。ジャージ忘れたから、刀也くんが貸してくれただけ。立花のジャージ干してあったって刀也くんが言ってたから、慈悲で貸してくれただけだよ。」
「ふーん」意味ありげにそういう立花を不思議に思いながら、次の授業のチャイムが鳴った。急いでロッカーから次の教科の道具を出して教室に駆け込むのだった。
「私、普通に体育着ロッカーに入ってたんだけどな」なんて呟く立花の声は、私には聞こえなかった。

放課後、帰る準備をしてる刀也くんに、「ジャージありがとう、洗って返すね」と言うと別にいいのと、言われたが私がちゃんと洗って返すねと圧をかけると流石にうんと引き下がってくれた。幼馴染とはいえ、汗をかいたジャージをそのまま返すなんて出来るわけがない。これでも、女の子なのだ。
立花と、刀也くんと当たり前のように帰る。いつもは立花と二人だけど、部活が無いらしく刀也くんも一緒だった。三人で普通に世間話をしてサヨナラをするのだった。

「刀也、嘘ついたでしょ」
「なにが」
「私のジャージ干してあるなんて」
「あー…」
「別にいいけど、今度エクレア買ってきてよね」
「ちゃんと、黙ってろよ?」
そんな会話があったのか、なかったのかさてはてね

2020/09/09