春一番は、すぐそこに

寒い日は未だに続くがもう、月が変わるころだった。カレンダーを捲って次の月を見た時に、自分の字で分かりやすく華やかな装飾もついているその日は紛れもなく幼馴染の誕生日だった。今年は何をあげようか。毎年そういう風に考えて悩んでは一人でプレゼントを買いに行っている。刀也は刀也で買いたいものがあるだろうし、茶化しすぎるのも良くないから次第に暗黙の了解となった。
ショッピングモールでひとりで回っていれば桜華とむぎちゃんとガクが居た。
私に気がついて手を振る桜華とむぎちゃん、
私に気がついたガクは真っ先に私の方に近寄ってきた。ピコンとなる通知を見れば、
桜華からで、兄さんをよろしくねとだけあった。私、もうひとりで買い物出来るんだけどなぁ…なんて思いながら、この過保護な幼馴染とその兄に甘えてしまうのだけど。
ガクが私の前に来て、桜華達に手を振って解散する。
「桜華の誕生日プレゼント選びっすよね、今日ショッピングモールに居るの」
「やっぱり、バレてる?」
「桜華は気がついてないけど、むぎと俺にはお見通しっすよ〜」
なんて笑うガクは、流石兄と言うべきなのか桜華のことを可愛がっているなと思った。
「で、何買うとか決めてるのか?」
「今年は服にでもしようかなぁって」
「いいんじゃないか?俺も最近可愛い服を着てる桜華見てないし丁度いいと思うな」
「桜華はそのままでも可愛いけどもっと可愛い服来て欲しいからね」
適当なアパレルショップに入って洋服を見る
「あ」
ショップの壁には薄い桜色の可愛らしい春のワンピース。まだ、これを着るには寒いかもしれないけれど、彼女の誕生日の頃は暖かくなっていると思う。
「ね、ガクあの桜のワンピース可愛いくない?」
彼女の兄にそう問えば優しい表情をして、「絶対似合う…」と呟いていた。
こいつも存外妹大好きのシスコンだと思う。
傍らにあった桜色の鞄には紫のスカーフの飾りがついていてこれも一緒に買った。
ついでと言わんばかりにガクは、アンクルストラップのついた白い低めのヒールを買っていた。全身みんなで桜華を独占出来るな〜なんて思いながら、多分、兄の刀也はアクセサリーでも買ってくるだろう。独占欲が強いというか、早く伝えてしまえばいいのにと思っているけど、あの二人が一線を越えようとしないのだ。もどかしいふたりを思いつつ、ショップの袋を提げてガクと一緒に喜ぶ桜華の顔を思いながら早く春の日を迎えたいと思った。桜の芽吹きはすぐそこに。

2020/09/30