「へ、どうしたの急に」
突然のむぎからの提案。立花と一緒にお泊まり会なんてしたのはいつが最後だろうか。
「私とリリちゃん、明日お泊まり会するでしょ?で、刀也お兄ちゃんはお兄ちゃんの家に泊まるって聞いたから立花お姉ちゃんの家でお泊まり会すればいいんじゃないかなと思って」
なるほど、我が妹ながら偶にすごい提案をする。
「なんで刀也くん達の予定も知ってるの…」
「お兄ちゃんが言ってたし」
「なるほどね」
どうやら拒否権なんて無いみたいで、
「まぁ、たまにはいいかな」と、妹に乗せられる私も私だろう。
「立花に言ってみるね」
「まぁ、立花お姉ちゃんならOKしか返ってこないよ」
「私もそんな気がする」
なんて2人で笑い会う
朝の支度をしてむぎと一緒にリリちゃんと合流して学校に行く。
2人と別れて、教室に行けばいつも通りの刀也くん。
「おはよう」
「おはようございます」
「立花、隣の教室に居るよね?」
「あぁ、居ますよ」
「ん、ありがとう」
「何か聞きに行くことでも?」
「明日、立花とお泊まり会しようかなって」
「へぇ…珍しいですね」
「むぎからの提案なの。明日、黛くんも兄さんのとこに泊まりに行くんでしょ?」
「えぇ、まぁ…」
「行く前にうち寄ってくれる?兄さんのところに持って行って欲しいのものあるから…雑用みたいなことお願いしちゃって申し訳ないけど…」
「いえ、全然いいですよ。どうせ行くことに変わりないですから」
「ありがとう。」
お礼を告げて立花のところに向かう。
立花は一人でぼーっと窓の外を見ていた。
誰かが登校してくるのを待っているように。
「立花」
「あれ、桜華じゃん。どしたの?」
「んー?明日、立花の家に泊まりに行っていい?」
「いいね!久しぶりのお泊まり会だ〜!!お母さんに伝えとく!むしろ今日から泊まりくれば?」
「それでもいいね」
「じゃ、それで決定で!楽しみだな〜!」
「じゃあ、夕飯のときそっち行くね」
「了解〜じゃ、後で」
にこにこ顔の立花。私も浮かれてしまう。
少しだけ上がった気分で教室に戻ると私の様子に気がついたのか刀也くんが
「随分ご機嫌ですね?そんなに楽しみなんですか」
なんて聞くから、
「今日の夜からお邪魔することになったの」
「…立花の提案だな?」
「ご名答」
「夕飯は?」
「そっち行く」
「母さんに言っとく」
「立花忘れそうだもんね…ありがとう」
「大したことないからいいんだよ」
そう言って忘れないうちにメッセージを叶さんに送る刀也くん
「学年で真面目な黛くんが学校でスマホ使ってるなんて私しか見れない光景だね」
「そんな僕を咎めない真面目な社も大概だろ」
そんなことを言ってふたりで笑った。
ああ、早く放課後にならないかな
放課後、イブラヒムくんとアルスちゃんにサヨナラを言ってる立花を刀也くんと回収して帰路につく。
「桜華パジャマとか着替えどうする?私の着る?」
「ううん、大丈夫一応荷物もってくる。足りなかったら貸してくれるでしょ?」
「まぁね?まぁ、何かあれば桜華が家に取りに行けばいいしね〜」
「すぐだしね」
「まぁ、最悪窓から荷物貰えばいいんじゃないですか」
私と立花の会話を聞いていた刀也くんが口を挟む。
「刀也、もしかして天才?そうじゃん、私の部屋から荷物渡してもらえばいいだけじゃん!」
「懐かしいね、昔窓から移動して母さんに怒られたこと思い出すよ…」
「本当に懐かしいな…」
私と刀也くんの視線が立花に向く。
「流石にもうしないって!」と立花
「まぁ、流石に疑ってないよ」と言うと
安心したようで少し面白かった。
家に着いてふたりに後でねと言って別れる。
制服から着替えて、軽く荷物をまとめる。特に持っていくものもないから、立花と刀也くんにメッセージを飛ばしておく。
母さんに行ってくるねと声をかけると、
久しぶりなんだから楽しんできな〜と言ってくれた。
ピンポーンと隣の家の呼び鈴を鳴らせば、
制服から着替えた刀也くんが迎えてくれた。
「はやかったな」
「そう?楽しみだからかな」
「まぁ、とりあえず手洗ってこい、荷物は置いてくるから」
「ん、ありがとうお願いするね、叶さーんお邪魔します」
刀也くんに荷物を預けて、手を洗ってリビングに行く。叶さんは夕飯の準備をしていた。
待ってるのも性にあわず、キッチンに入って手伝えることを聞いた。
叶さんも私が手伝うのが当たり前のようになっていて、すぐにこれお願いねと言ってくれるからありがたいことだと思う。
刀也くんは荷物を置いてきてくれたようで
ダイニングテーブルからキッチンの様子を見ていた。その後に立花も来て、立花が何を言ったかは分からないけど、耳を真っ赤にして机に伏す刀也くんは面白かった。立花は楽しそうにしてた。こんなふたりが見れるのも久しぶりだなって感じた。そのあとも宿題が終わってリビングに降りてきたリリちゃんと少しお話したりもした。リリちゃんに、桜華ちゃんのご飯美味しいから嬉しいって言われて嬉しかった。叶さんもわかるなんて同調してきたので照れてしまった。
叶さんと夕飯を作って、配膳していく。
刀也くんも手伝ってくれたおかげで思いのほか早く終わった。その間に立花は葛葉さんと灰くんを呼びに行ってた。リビングの扉が開いて入ってきたのは葛葉さんだった。
「あれ?桜華じゃん?今日泊まんの?」
という疑問に
「立花の部屋でお泊まり会しに来ました」
と返すと
「ほーん、なんか、懐かしいな…めちゃめちゃ久しぶりだな」
懐かしんでいる葛葉さん。確かにそうだ。葛葉さんとはなかなか話す機会がなかった。
「そうですね、葛葉さんずっと会えてませんでしたし」なんて話していると、
「父さん、雑談もその辺にして」と刀也くん
「なんだぁ〜?嫉妬は見苦しいぞ〜」なんて茶化す葛葉さん
「はぁ?別にそんなんじゃない」そう言って拗ねてるのかむくれてるのか分からない刀也くん。
「葛葉、刀也からかうのもその辺にしな」
叶さんの言葉で、ふたりとも静かになるのだから母は本当に強しだと思う。
がチャリと扉の音。
見れば立花が居て、少し不貞腐れた顔をしている。
「お兄ちゃん、扉叩いてるのに返事してくれ無いんだけどー!」
「じゃあ、私が灰くん呼んでくるよ?」
「え〜どうせ桜華も無理だよ〜?」
「大丈夫大丈夫」
「まぁ、期待しないで待っとく〜」
「酷いな〜」
そう言いながら、リビングを出て灰くんの部屋に向かう。
「灰くん?」
一応声をかけるが声は返ってこない。
4回扉をノックして開かなかったら、それまでだろう。
コンコンコン、コン、私のノックの音だけが廊下に響く。
…開かないか、流石に灰くんはもう覚えてないんだろうな。
そう思って扉を離れようとすると、ガチャっと鍵の外れる音と、扉の開く音。
「どうしたの、桜華」
声の方を見上げると、灰くんが居て、思わず
「まだ、覚えててくれたの?」と聞いた。
「俺が言ったこと、忘れるわけないでしょ。てっきり、あれっきりかと思ってたけど桜華も覚えてたんだ?」
「あの時はすごいお世話になったからね、忘れられないよ。そっか、覚えててくれたんだ、また、何かあったら来ていい?」
「俺が力になれることなら、ね」
「頼もしいや、ありがとう。あと、夕飯だから灰くんもほら来て」
「え〜…俺眠いんだけど」
「いいからいいから、私も手伝ったから食べて欲しいの」
「…大丈夫だよ、桜華のご飯は美味しいから美味しいって言ってくれるよ」
「灰くんの感想も聞きたいの。ほら、下いくよ〜」
「はいはい」
灰くんは後ろ手で扉を閉めて、私は灰くんの袖を引いてリビングに行く。
「連れてきたよ〜」と言いながらリビングに入ると立花が、
「え〜!?桜華何やったらお兄ちゃんを部屋から引っ張り出せんの?」なんて驚いてたから私と灰くんは顔を見合わせて、
「えー?秘密〜ね、灰くん?」
「そうだね、俺らの秘密だね」
なんて笑えば、ずるい〜なんて言う立花。
「ほら、いいからご飯食べよ?冷めちゃう」
そう急かして、灰くんを椅子に座らせて自分も刀也くんの前に座る。なんだか、ご機嫌が少し斜めに見えたけど、みんなのいただきますの声でその違和感は何処かに隠れてしまった。夕飯は美味しかった。
「ごちそうさまでした。」
みんなご飯を食べ終わって、食後のゆったりとした時間が流れる。
「ほのかちゃん、食器片付けたらお風呂はいってきちゃいな」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
母さんと桜華がそんな会話をして、風呂に向かう桜華。
「え〜!私も行く〜!」とうるさい立花と
「じゃ、リリちゃんもおいで」とリリも誘う桜華。
「じゃー私も行きます」と存外乗り気なリリもなんだか珍しい。
食器を洗う母さんの隣に立って、食器を拭く
「何?珍しいじゃん」
「別にたまにはいいだろ」
桜華が手伝っていたから、僕もたまには母さんに貢献しようと思っていると、
「ふぅん?下心だな?」
「は?」
「お風呂上がりの桜華ちゃん見たいんじゃないの?」
「桜華が母さんのこと手伝ってたから僕もたまには手伝おうって思っただけだけど!?」
「またまた〜」
「ほんとだし!」
母さんに下心だと茶化されつつも、皿を拭いていく。当たり前に、濡れた食器は減っていき食器棚へ気づけば終わっていて、母さんに
「ありがとう、早く終わったから冷蔵庫のシュークリーム食べていいよ」
「じゃあ、食べる…」
冷蔵庫からシュークリームを出して食べる。
カスタードがぎっしり詰まってるそれは、
甘くて僕の心を満たしていく。
「あがったので次の人どうぞ〜」
タオルで髪を拭きながら、リビングに入ってくる。
「桜華髪乾かしなよ〜」
「ん、あとで、いいかな…タオルで拭き終わって無いし…」
立花とリリの髪を乾かして満足してしまったんだろう。シュークリームを食べ終えて、手を洗いに行くついでに言う。
「髪の毛乾かしてやるから、ソファ座ってろ。」
「え、刀也くんお風呂行ってきなよ。その間に乾かしてるし、」
「お前もう眠いだろ…立花、ベッドとか整えてこい。リリ、ドライヤー持ってきといて」
「了解〜」
「はーい」
「うえぇ…?叶さ…」
「誰もお風呂行かないなら、お母さんはいりまーす」
「そういう事だから大人しくしてろ」
「はぁい…」
カスタードクリームがついた手を洗う。
桜華の居るソファに向かうと、リリがドライヤーを持っていて僕に渡してくれた。
「熱かったら言えよ」
「うん」
肩より少し長い髪に指を通す。
「髪の量多いから、きっと時間がかかるよ」
「別に時間なんていくらでもあるだろ、僕にやらせてくれよ」
「刀也くん、変なところで頑固だよね…」
「はいはい」
彼女に触れる理由を探しているなんて言う下心を彼女は分かっていないらしい。
次第に乾いていく髪と、ぱちぱちと眠そうに目を瞬かせる彼女。
「眠かったら寝てもいいんだぞ」
「や、とやくんぜったい、へやにはこんでくれるじゃん、じぶんでいくもん、」
「もう、舌まわってないぞ…」
「んむ…」
髪はもう乾いてる。彼女も既に落ちかけている。ドライヤーのスイッチを切って、彼女を見ればほぼ眠っていて、リリは
「早く部屋運んできなよ。ドライヤーは片付けておくから」なんて言われてしまった。
ソファに眠る彼女を抱き上げると、
「とやくん…?」とぽやぽやした彼女に名前を呼ばれる。
「はいはい、とーやくんですよ」なんて言えば、ふふふなんてご機嫌で僕の首に手を回してきて抱き着いてくる。
んーなんて言いながら擦り寄ってくる。
そのまま、立花の部屋まで行くと、まぁ、
立花にからかわれる。
「桜華めちゃめちゃ刀也のこと好きじゃん〜離れないね〜」なんて冗談を言う。
「ほら、桜華、立花の部屋」そう言いながら敷かれた布団に寝かせようとすると、
「とーやくん一緒じゃないの…?」なんて聞いてくる。流石にそれは危ないと思っていると、のんびりした立花は、
「もう、桜華と一緒に刀也の部屋で寝ればいいんじゃない?桜華明日もいるから私は明日一緒に寝ればいいし」なんて。
僕から離れたがらないおねむのほのかちゃんの相手をするのが面倒くさいのか立花はそう言い放った。
「流石に男女で同じ部屋はまずいだろ」
「別に桜華が離れなかったって言えばいいだけでしょ?チャンスなんだから一緒に寝とけー!」
「いや、おまえ、明日申し訳なさそうにする
桜華を見ることになるぞ…」
「いいの?寝起きの無防備桜華見れるけど」
「いや、それは、」なんて口ごもっていると
「はい、出てった出てった。じゃ、おやすみ二人とも、ごゆっくりどうぞ」
「あ、おい!」
追い出された僕は、仕方なしに本当に不本意ながら、桜華と寝ることになった。
桜華には立花に追い出されたって言い訳しよう。僕は、別に立花の部屋に運ぼうとしただけで、一緒に寝るなんて思ってなかったし、なんて、言い訳がましい言葉を並べていると、桜華がとーやくん、ねよ?と首をこてんとして僕の袖を引いたのだから、僕は悪くないなと思って電気を消して布団に入って眠ることにした。胸元に擦り寄って僕の傍で寝る彼女は可愛くて僕の心を乱すずるい人だなと思った。おやすみかわいいひと。
2020/10/02
2020/10/08