初めての、逢瀬

「ごめん、おまたせ…待った…よね?」
「ん、別にこれくらいどうってことないからいちいち気にしなくていいんだよ。それより、その格好、似合ってる」
桜色の淡いワンピースを翻して、僕に気を遣う彼女の首元には、僕のあげたネックレスが輝いていてそれだけでなんだか僕の心は満たされたように錯覚した。
「あ、ありがとう…?」
照れているのか返事もどこかふわふわしていて惚れた弱みとでも言うか愛しいと思ってしまった。
「ん」
手を出せば、おずおずと自分の手を出して僕の手に重ねる。
「じゃ、行きますよ」
「うん、楽しみだな…」
本当に楽しそうに嬉しそうな顔をするから、誘って良かったという気持ちと、彼女を独り占め出来るという喜びで僕の足も浮ついている気がする。
電車に乗って、目的地まで。
何に乗りたいとか、何がしたいと聞くと、
彼女は笑わないでね?と真面目な顔で
メリーゴーランドに乗りたいと言った。
僕は可愛いなと思った。きっとお姫様のように見えるとも思った。盲目なほどまでに、彼女を愛しいと思ってしまっているんだと気がついてなんと答えようか迷ったけど、
メリーゴーランドと観覧車、あとは向こうに着いてからでも遅くないだろ、と言うと
うん、そうだねと柔らかな笑みを浮かべた。
休日の遊園地は人が多くて、家族連れや恋人達で賑わっているようだった。
彼女の手を引いてチケットを買う。
いくらだった?と聞いてくる彼女に、
デートなんだから僕にかっこつけさせてくれよなんて言うと、デート、と驚いたような彼女。しばらくして、またそう呟くと嬉しそうにそっかと言って僕の袖を掴んで、よろしくね彼氏さんなんて言ってきたから、迷子になるなよ彼女さんって返した。ふふふって楽しそうに笑う彼女の手を引いてアトラクションの案内を見る。
「あ、お化け屋敷あるよ?」
「はぁ?ここに来て怖いもの行くんですか」
「私は行きたいなぁ…ビックリするのは苦手だけど結構楽しいじゃない?」
「まぁ、いいですけど、先に他の行ってからな」
「はーい」
遊園地とかの待ち時間は気まずくなるカップルがいるなんていうが彼女はパンフレットを見ては次ここ行って、お昼はここにする?なんて楽しそうに次に回る所の予定を立てては僕に聞いてくる。そんな彼女が本当に可愛い。僕がすることは時々こっちはどうかなんて提案するくらいだ。彼女は僕の意見を聞いては、それもいいねと楽しそうに言うのだ。
色々回って、お昼を食べて、メリーゴーランドに楽しそうに乗る彼女をカメラに収めて、気がつけばもう夕暮れが近くて、彼女が寂しそうにもう日が暮れてきたね、と言うから彼女の手をしっかりと握って、最後、観覧車乗って帰ろうと言えば、そうだねと笑った。寂しくて帰りたくないと思うのは、僕だけじゃないと分かって嬉しく思った。
ゆっくりと地上からどんどん遠ざかっていく
夕暮れの街の景色は綺麗で、それに見惚れている彼女も綺麗で、夕焼け、彼女の色。
「今日、楽しかった」
「ん、私もすごく楽しかったよ。お化け屋敷の刀也くんの反応相変わらずで面白かった」そうケラケラ笑う彼女。
「それはもう別にいいだろ…」
今日の感想を言い合っているうちに観覧車はどんどん頂上に近付いている。
「もうすぐ頂上だね」
そういう彼女は夕焼けが沈み、藍色の空を見ていた。
「これが終わったら帰らなきゃだね」
「僕も終わらなければなんて思うよ」
「刀也くんにしては珍しいね、言葉にするなんて」
そう笑う彼女の言葉は確かに的を射ている。
「何処かの誰かさんに伝わらないから僕も行動してるだけだよ」
「そっか」
「僕は、大切に思ってるし傷つけないように誓うよ」
「私のことを大切にしてくれてるのは、分かってるよ。でも、別に良いんだよ?」
「僕が良くないんだよ、僕の隣にずっと居るのはお前だけでいいんだよ」
そう言った時の彼女の夕焼けは揺れ震え潤んで、
「勘違いするよ」
「これだけ伝えても勘違いしてくれないのかよ」
「ばか」
「馬鹿って…返事は?」
「ずっと一緒に居たいって思ってるよ…」
「それでいいんだよ」
泣いている彼女の涙を拭う。
頂上はとっくに過ぎて、僕らはまた地上に戻るのだ。彼女と当たり前の日常をまた。
変わった僕らの関係が、将来を共にする確実なものになるように握った手は離さないと誓った。

2020/10/02
2020/10/08