ふたり、ねむる、まどろみ

どうしてこうなった。
起きて直ぐに思ったのは、
そんなことだった。
背中の温もりと、肩に埋められた頭。
私の頬にサラサラの髪の毛があたる。
お腹に回された腕は私を離すことはなく、
私はされるがままでいることしか出来ない。
目の前のサイドテーブルの時計を見れば、
もう九時を回っていてああ、寝すぎたなぁと
現実逃避をする。かと言って、この現状から抜け出さなければ行けないのも事実で、
刀也くん、と少し掠れた声で名前を呼ぶ。
ん、と呻きながら肩にさらにすり寄っては、
まだ起きそうにもない。
お腹に回っている刀也くんの手を
優しく叩きながら、刀也くん、起きよう?と
声をかけ続ける。
「ほのか…?」
「うん、私だよ」
「も、ちょっとだけ…」
「あと5分したら起きようね」
「ん…」
肯定とも否定ともつかない返事。
寝惚けている彼の体温は高くて暖かい。
私も、眠たくなってしまう。
サイドテーブルの時計に手をかけて、
アラームを設定する。
10分後に今度は多分、彼が起きるはずだから
私もまた微睡みの中に飛び込んでしまおう。
重たくなった瞼を素直に閉じて、
ほんの少しの暖かく柔らかな眠りに落ちるのだった。

ピピピ、と聞き慣れたうるさい音。
いつものように手探りでいつもの場所に
手を伸ばすと、そこにはなくて、
自分が包み込んでいる彼女の手の中に収まっていた。アラームを時計を見ると、九時を過ぎてもうすぐ十時になる頃合いだった。
アラームの設定が変えられているのを見ると
彼女が一度起きて設定したのだろう。
「桜華、」
起きたばかりの掠れた、変な声。
ぅ…と眩しそうに目を細めて、僕の瞳を見る夕暮れの色。ぱちぱちと目を瞬いて、
「おはよぅ…」と彼女もまた掠れた声。
少し乱れた服、寝癖のついた髪、寝起きの眠そうに潤む瞳。朝から扇情的というか、どこか抜けているこの幼馴染は、本当に僕を乱す人だと思う。
「ごはん、たべよっか、」なんて、柔らかな笑みを浮かべて僕に提案する彼女に、
「ん、」と手を差し出して一緒に緩やかな階段を下りるのだった。降ろされた髪はいつものようにまとめられ、顔を洗ってしっかりと目覚めた顔で立花や母さんと楽しそうに話している彼女の気の抜けた所を見れるのは、僕だけなのかな、なんて自惚れたことを考えたけれど、結局僕と彼女は平行線で停滞だ。それに、僕より立花の方が気の抜けた、素の彼女を知っていると思うと、羨ましいなという嫉妬心が顔を出す。ああ、閉じ込めてしまえれば良いのに。
「刀也くん、ごはん」
「今行く」
そんな僕の葛藤を知らない彼女は今日も、
僕に無邪気な笑みを浮かべるのだ。