不器用に素直、鈍感なあの人

「じゃ、立花のことよろしく」
「叶さんもいるわけだし大丈夫だよ?」
「それでも、だよ。ガクくんに持ってくのはこれだけで大丈夫?」
「うん、さっき確認したから大丈夫だと思う。雑用させてごめんね」
「どうせ、泊まり行くついでなんだから気にするなよ」
「それもそっか。ありがとう、刀也くん」
出張を見送る夫婦のような会話。
兄はその距離感をどう思っているのか。
「リリ、むぎちゃんのところに迷惑かけるなよ」
「今更だよ?当たり前に決まってんじゃん」
「リリちゃんなら、心配することも何も無いけどね」
そう朗らかに言う桜華ちゃんは、うちの家族に弱いと思う。頼りにしてくれてるって言うのもあるんだろうけど。
「まぁ、それもそうだな。」私の頭を不器用に撫でる刀也お兄ちゃん。この人も、灰お兄ちゃんもお姉ちゃんも、みんな不器用だと思う。私も含めて。だから、桜華ちゃんとかガクくんとかむぎちゃんとか、社家の人は不器用な私たちの支えかたをよく知っている。
「いってらっしゃい、刀也お兄ちゃん」
私がお兄ちゃんと呼ぶのが珍しいのか、目を見開いてとても驚いている刀也お兄ちゃん。
そんな様子を見て、ニコニコと笑う桜華ちゃん。「刀也くん」という桜華ちゃんの声で、ハッと我に返ったお兄ちゃんは撫でていた私の頭をぐしゃぐしゃにして、「お前も楽しんでこいよ」なんてカッコつけて行ってしまった。珍しい立花お姉ちゃんと桜華ちゃんのお泊まり会。ふたりはどんな話をするんだろう。きっと、私とむぎちゃんと変わらない話を楽しくしていると思いながら、「じゃ、桜華ちゃん立花お姉ちゃんをよろしくね」
「リリちゃんもそれ言うの?私がむしろよろしくされるほうだよ」
大概、桜華ちゃんも鈍いよなぁなんて感じつつ手を振って、むぎちゃんの居る社家にお邪魔するのだった。