エンカウント、想定外恋話

「「あ」」
たまたま、ショッピングモールで買い物をしていると、立花ちゃんの兄の刀也くんとばったり出会った。俺と彼個人との交友は、全くと言っていいほど無いのだから、気まずい。
「こんな所で会うなんて奇遇ですね」
「えっ、うん、そうだね…刀也くんは、何買いに来たの?」
そう聞くと、一度何かを考えてから
「妹のプレゼントを」
「立花ちゃんと刀也くん、妹さん居るんだ」
「えぇ、あと兄が一人。」
「へぇ〜、いいね」
「あんまりそう思いませんけどね」
同い年だと言うのに壁を作るかのような敬語がどこか苦手だと彼と話す度に思う。
「そういう、三枝くんは何をしに?」
「俺?俺は服見に来た。あと靴とか」
「あぁ、季節の変わり目ですもんね」
「そうそう」
適当に服や靴、友人などの話を軽くしていると、立花ちゃんと同じクラスの雨宮ちゃんが居て俺と刀也くんに気がつくと真っ先に走ってきた。
「ちょうどいいところに!あまみゃを助けると思ってうちに来ませんか」
そう言って持っていた紙の束からひとつを俺たちに渡す。
「カフェけるべろす…?」
「あぁ、雨宮もここでバイトを?」
「うん、時給も良いし学校からも近いからねぇ〜!制服も可愛いしぃ〜!」
間延びした雨宮ちゃんの声を聞き流しながら、チラシに目を通す。どうやら和をコンセプトにした喫茶店らしい。大正浪漫と言うのだろうか、そんな風貌のお店のようだ。
「刀也くん、これから暇?」
「えぇ、まぁ、買い物が終われば」
「一緒にここ行こ!!」
「…まぁ、いいですけど」
「やったぁ!!」
雨宮ちゃんもやった〜ノルマ達成〜!とチラシを配り終えたようだった。
「雨宮ちゃん、後でお店に行くね!」
「あまみゃこれでシフト終わりですけど、桜華ちゃんなら居ますよ〜」と意味ありげな視線を刀也くんに投げていた。
「そうですか、お疲れさまです。じゃ、僕らも買い物済ませて早く休憩しましょう」
そう早口で言ってショッピングモールで買い物をする。刀也くんは、紫色や黄緑を手に取っては、うーんと唸って悩んでいる。
唸っている彼を横目に、アクセサリーを見ていると可愛らしいリボンの髪飾りが目に入った。
「刀也くん、これとかどう?」
そのリボンをみた刀也くんは、紫色と薄く淡い緑を手に取り早足で会計に向かっていった。店の外で刀也くんを待っていると、
「すいません、お待たせしました。三枝くんがいて良かったですよ本当に。ありがとうございます。」
「いいって、たまたま目に付いただけだし、納得出来るの買えて良かったじゃん」
そう言って、じゃあ喫茶店行って休憩しようかという話になってふたりでけるべろすに向かった。そこは古風な外観で扉を開ければチラシで感じたような大正浪漫を感じる店内だった。カランコロンとなったドアベルに気がついた店員さんが俺達を案内するために向かってきているようだった。その子の顔を見ると桜華ちゃんで雨宮ちゃんの言う通り今日はシフトに入っているようだった。
「三枝くんだ、いらっしゃいませ。あ、刀也くん今日の日替わりケーキセットにプリンあるからぜひ頼んでね」
どうやら、刀也くんはそこそこ常連らしい。
「お席に御案内します。此方へどうぞ」
同級生から接客モードに切り替わった桜華ちゃんは僕らを席に案内してくれた。
メニューを手渡して彼女は裏に戻っていった。
「いい所だね、ここ。刀也くんは結構来るの?」
「たまに来るくらいですよ」
メニューを眺めてどれにするか悩む。
クリームソーダとショートケーキ。
刀也くんはケーキセットを頼んでいた。
先に届いたクリームソーダとコーラフロート。ぐるりとスプーンを回して、氷を鳴らす。氷と一緒に沈むアイスをひとすくい。
少し秋を感じる肌寒い日だったけれど、
アイスはやっぱり美味しい。
そんな風にアイスをつついていると、
「ショートケーキとプリンです。ごゆっくりどうぞ」と桜華ちゃんが届けてくれる。
紫色の和服と黄緑のとんぼ玉というのか、帯を止める飾り。あの色を見た時に、思い浮かんだのは、立花ちゃんで、その後に、ああ、刀也くんの色かと気がついた。
愛されてるなぁ、刀也くん。なんて思い、刀也くんに声をかける。
「桜華ちゃんと付き合ってどれくらい経つん?」
そう聞くと、凄いむせ方をする。
「な、は?僕と桜華が?ですか?」
「え、付き合ってないん?」
「付き合ってません、僕らは、ただの…幼馴染ですよ」
そういう、彼の表情は見えなくて、
コーラフロートのアイスを食べ進めていて、
カランコロンと気づけば器が空になっていた。
刀也くんの器を下げにきた桜華ちゃんは、
刀也くん、さっき咳き込んでたみたいだけど大丈夫?と心配の声をかけていた。
大丈夫と、言ってそう?なら良かった。と仲良く会話していた。
幼馴染という近しい距離だからこそのもどかしさもあるんだろう。最後に残していたいちごを一口で頬張って、飲み込んで、
「刀也くん、そろそろ出よっか。今日はありがとうね」
「いえ、こちらこそありがとうございました。また機会があったら遊びましょうよ」
お会計を済ませて、桜華ちゃんからおまけの飴を貰う。内緒だからねなんて言う桜華ちゃんはあざといなぁと思いながら、カランコロンとドアベルを鳴らして僕らは帰路に着いた。