甘いクッキーは、ほろ苦い気持ち

ピンポーンとひとりしかいないこの家に響く。どうやら刀也くんが着いたようでドアを開ける。
「どうも、これ、桜華から」
「お、サンキューな!とりあえず、昼飯作ったけどどうする?」
「あ、じゃあいただきます」
「はいよー先にリビング行ってて」
「了解です」
受け取った手紙とかを確認していると、
桜華が作ったであろうクッキーがあって、
彼女の可愛らしい文字で
『お兄ちゃんにお裾分け作りすぎたから沢山食べて』
なんて書いてある。タッパーいっぱいに入ったバタークッキーを見て桜華が心配になったが言わないということは触れられたくないとも分かっているから近々帰った時にでもそれとなく詮索しようと思う。
リビングに行くと冷蔵庫から麦茶を出して飲んでる刀也くんがいて、俺の持ってるバタークッキーを見て顔を顰めた。
「それ、桜華ですよね。そんな量作るなんて何悩んでんだあいつ」
それは妹の心配でだった。
「刀也くんも何も知らない感じっすか?」
「あいつが僕に言ってくれると思いますか」
「絶対言わないっすね〜」
なんて笑顔で言って、桜華の焼いたクッキーをテーブルに置く。
彼はタッパーの蓋を開けて、普通にバタークッキーを食べ始めた。
「ほんっと、刀也くんって桜華の作るお菓子好きっすよねぇ」
「みんな好きでしょう?」
何を言っているんだみたいな顔で不思議そうにしてるから、桜華はつくづく愛されてると思う。
「昼飯これからなんすから、食べすぎるなよ〜?」
「あぁ、気をつけます」
本当なんだか嘘なんだか。
少し冷えたパスタを温め直して、皿に盛る。
パスタのように絡み合った人間関係。
面倒くさいなぁ、なんて思いながら自分もその渦中に居るのだから笑える。
妹もその幼馴染も。みんなが笑える未来が続けばいいのにと我ながら甘いことを考えて、皿をテーブルに置く。
「さて、いただきますか!」
「美味しそうですね、じゃ」
「「いただきます」」
フォークに巻かれたパスタは、口へ、やがて胃に消えていった。