ずるいひと

「今、悩んでる貴女にこんなこと申すのは、些か卑怯だと思うのですが、刀也くんではなく私を選んで頂けませんか」
目の前には、こんな小娘に目もかけずお淑やかで、美しい女性と一緒にいるのが似合いそうな容姿端麗で、加賀美インダストリアル代表取締役、なんて言う大層な肩書きを持っている親戚のお兄さん。
「ハヤトさん、最近お仕事ばっかりだった?」
なんて笑いかければ、私の手を大きな両手ですっぽりと収めて、包み込む。
それから私の目を見て、もう一度言葉を紡ぐ
「桜華、冗談ではありません。この、加賀美、本当にあなたの事を好いているのです。嘘だと言うなら、この鼓動はなんと言えばいいんですか」
ハヤトさんの手に包まれた私の手を、
胸元に持って行って心臓の位置に当ててくる。暖かい手と、呼応するそれは、間違いなく忙しなく動いていた。
「ハヤトさん、私じゃハヤトさんと釣り合わないよ」
「桜華は、誰にでもそう言って自分を卑下するじゃありませんか。刀也くんでも、そうでしょう。それなら、私を選んでも一緒でしょう?私が望んでるんです。答えはいつまでも待ちます。さぁ、帰りましょうか」
そう言葉を私に落として、私の手を包んだまま帰路を辿る。私の悩みの種が増えたのと、そんなことを言われるだなんて思ったこともなかった私の心音は忙しなく鳴り響くのだった。