夜景をを貴女のために

ハヤトさんから珍しくメッセージが来ていて見てみると、クリスマスらしいことが出来なかったから一緒に食事に付き合ってくれませんか?との事だった。お仕事だったんですか?と聞けば、全国のサンタさんの為ですから…なんて返ってきた。流石加賀美インダストリアルである。みんなの夢を守るお仕事お疲れ様ですと返信すると感謝と私と一緒に食事するの嫌ですか?なんて返ってくる。冬休みで時間には少し余裕があるけれど、そういう訳ではなくて、ハヤトさんが選ぶお店はきっと私には、敷居が高い。結局、悩んだ末に送った文章は、私が行っても浮かないところなら行きますだった。ハヤトさんは、可愛らしいうさぎが喜んでいるスタンプと明日の27日の18時頃にお迎えに行きますね!と明日の予定を残して仕事に戻ったようだった。ママに明日の夜ハヤトさんとご飯行ってくると言うと、分かった。楽しんできな〜といつもの調子だった。
いつも通りのなんてことない日常を過ごして、
いつもより綺麗に身支度を整えて居ると、ピンポーンと軽快なインターホンの音が聞こえる。慌てて玄関に向かうとママと会話しているハヤトさんがいて、待たせてごめんなさいと言うと、私がはや来ただけですよと笑って言ってのけた。
ママに行っといでと、背中を押されてハヤトさんの車に乗る。後部座席に座ろうと思っていたら、ハヤトさんが、助手席の扉を開けて、私のことをエスコートするものだから、そのまま助手席に座ってしまった。私が助手席に座って良いんですか?と聞くと、不思議な顔をして、なんでダメなんです?隣で私の話し相手になって下さいよなんて返ってきた。なんだか面白くて、ふふっと笑みを零すと、ハヤトさんは何か面白いことでもありました?なんて。なんでもないですと答えると、話したいことが沢山あったのか目的地に着くまで会話をしていた。
気づけば、どうやら目的地に着いたようで、ハヤトさんについて行くと、そこはドレスショップで、ハヤトさんの方を見ると、折角なので私が選んだドレスを着て行きましょう?なんて言って私の手を引いてお店に入っていく。店員さんに名前を告げると、彼女をお願いしますとニコニコ顔で私の背中をぽんと押した。私はあれよあれよと連れられるまま、店員さんにされるがままだった。
どんなドレスを着せられるのか不安だったけれど、渡されたものはシンプルで可愛らしいAラインのワンピースだった。ふわりと回ってみると、スカートがふんわりと膨らんだ。軽く化粧を施され、髪の毛もハーフアップで纏められ、ふんわり巻かれた。鏡に映る自分は驚くほどに変わっていた。お姫様になったような気分だった。
店員さんは満足そうに私をハヤトさんの元に連れていく。こんなに着飾ったのは初めてでどんな反応をすればいいのか分からない。私の姿を見たハヤトさんは、やっぱり似合いますね。可愛らしいですよ。いや、綺麗と言うべきですね。なんて私を褒めたあと、ありがとうございましたと店員さんに言って、私の手を優しく引いて車に乗せてくれた。
さて、ディナーに行きましょうかとわくわくと楽しそうなハヤトさん。ドレスコードが必要なら事前に言ってくださいよと拗ねると、それはただの私の我儘ですよ。素直に欲しいものを言ってくれない桜華ちゃんへの私からの我儘な贈り物です。今夜はずっとその姿でいてもらいますからね?
ハヤトさんがこうしたんだから、逃げも隠れも出来ないよ…弱々しくそういう私に満足したようで、楽しそうに鼻歌を歌っている。なんだか、シンデレラにでもなったみたいだなと思いながら、ガラス越しに夜の街を見ていた。なんだか、私連れ攫われたみたいですね、なんて言ってみると、桜華ちゃんはお姫様ですからあながち間違ってませんけど、私は悪者なのですか?なんて。ハヤトさんは、王子様みたいですよね。社長だから王様のほうがいいのかもしれないけど…と言うと、私が王子ならこれは駆け落ちになるんですかねなんて。ハヤトさんさぁ、そういうこと女の人の前で言っちゃだめだよ?と言うと桜華ちゃんにしか言いませんってなんて言う。もー、いい年した大人が子供をからかわないでね!と言えば、笑って誤魔化していた。さて、着きましたよ。そのまま座っててくださいねと言われるがままになっていると、助手席の扉を開けて私の手をとってエスコートしてくれるようだった。履きなれないヒールだから、気遣ってくれているのか、はたまた、エスコートをするのは当たり前なのか。ハヤトさん程の人になるとどうなのか分からない。ハヤトさん、ハヤトさん、ディナー何を食べるんですか?と聞くとお楽しみです。としか答えてくれなかった。美味しいものであるのは、間違いないのだけど、慣れない場所でどうも落ち着かない。大丈夫ですよ、この先は私と貴女だけですから。個室ということだろうか。引かれるまま、着いていく。エレベーターで最上階へ。私の心は、もうどうにでもなれと腹は括った。ついたそこは、落ち着いた雰囲気のシックなお店だった。店員さんに席を案内されると、そこは一応個室で、外へ視線をなげかけるとガラス張りで、夜の街を一望出来るようだった。私が窓に近寄って外の景色を眺めていると、気に入って頂けましたか?とハヤトさんが私に尋ねる。こんなに素敵なところ、本当に私と来て良いんですか?質問に質問で返してしまった。ハヤトさんは、少しムッとした顔で、桜華と来たかったんですよ。さ、食事をしましょうよ。遅いクリスマスディナーを。