崩れることのない城塞へ

薄暗い部屋で心地よいぬくもりと心音を感じる。
見た目や言動に反して彼の体温は高く、いつも暖かい。
この薄暗く閉ざされた部屋、ううん、彼の築き上げた城の中、
それは崩れることも破られることもない城塞のような場所だった。
城塞の主は私を離すことなく、温もりの中に閉じ込め続けている。
「灰くん、もう大丈夫だよ」
心配する彼を安心させるためにそんなことを言うけれど、
「嘘」
その一言で押し黙ってしまった。
さっきよりも抱きしめる力が強くなった。
そして、彼の温もりから逃げることも言葉を紡ぐこともできず、
身を任せて、素直な自分の気持ちに区切りをつける。
私は彼に選ばれなかった、ただそれだけ。
ずっといたから、これからもずっといれると、
そう思ってしまっていたのが、いけなかった
永遠なんてあるわけないとわかっていたのに
時折、私の背中をさするその手の暖かさがじんわりと
傷ついた心の傷を癒すかのように沁みる。
私が落ち着いてきたのを見計らって、背中をさすっていた手は私の頭を優しく撫で始めた。
彼がつけっぱなしにしていたデスクトップはとうに真っ暗になっていた。
彼の体温が私を温める。だからか、少し眠気が襲ってくる。
泣き疲れたと言うのもあるのだろう。私の中で彼が特別になり過ぎてしまっていた。
だから、ただの幼馴染に、もしかしたらそれよりも遠い関係になろうと思う。
微睡の淵、遠い意識の中で初恋に別れを告げた。
私を包み離さない彼は、私の意識が遠くなると同時に
何かを口に出していたように思うけれど、聞き取れなかった。