乙女ですもの、恋文の一つは貰いたい。
…ラブレターが欲しいのだ。
それか優しく愛を囁いてくれる相手。
刀也もりりもお兄ちゃんでさえも私には無理だと言うが。
…これでも顔は悪くないと思うのだ。
刀也がモテモテなら私だってモテていいはずだ。
「刀也くん、好きです!」
「僕そういうの無理なので」
見飽きた実兄への告白シーン。
帰ろうとした途端にこれだよ。
仮にもなんか配慮したりしてくれないのかね。
「立花」
「ん、今行く」
刀也はさっき告白してきた女の子を知らないらしい。
本当に罪作りな野郎だよ、こいつは。
女の子を庇うつもりは無い。
どちらかと言えば私は刀也の味方だし。
けれど必死に告白したのに見向きもされないのは覗き見た私が言うのもアレだけど寂しいと思う。
「好きな人ってさ、いる?」
いつも冗談で交わすありきたりな話題…“好きな人”について。
私にとって一番近くて一番遠くにいる双子の兄の、刀也の答えがふいに知りたくなった。
「いない、知ってることを今更聞くな」
そっか、とは言えなかった。
私にははっきり見えていたから。
刀也に振られたあの女の子がどんな表情であそこに立っていたか。
それを知ってしまったから、納得なんて出来なかった。
刀也のどうしたんだ、とも言いたげな視線をスルーして。
いつものように気軽にからかえるような雰囲気ではなかった…少なくとも私は。
「ん」
差し出された右手。
意味がわからなくて立ち止まる私を無理矢理刀也は引っ張った。
「道の真ん中で突っ立たれても困るんだよ」
「…ごめんね」
今はまだ、私の歩幅に合わせて歩いてくれる刀也に安心しながら。
いつか本当に好きな相手が出来たら、私達のこの距離感は変わるのかな。
「刀也、好きな人が出来たら教えてね」
「…気が向いたら」
家まであと少しの見慣れた帰り道。
何度も歩いた近所、それなのに。
今日は少しだけ景色がゆっくりに感じられた。