「刀也くんいるッスか〜?」
「いないよ、刀也は今日部活」
「高校生っぽいッスね」
「いや、私達高校生だし当たり前だよ」
どこかチャラ男っぽい印象のある彼は社ガク、隣の家に住む大学生。
幼い頃からずっと面倒を見てもらってるから実際もう一人の兄みたいなところがある。
「今のうちに刀也が残してくれたプリン食べよーっと」
「あーあ、刀也くんの名前が書いてあるプリン…食べちゃっていいんスか?」
「んー、まあ大丈夫でしょ」
実際うちのお兄ちゃんよりガクの方が年上に見えるから不思議だ。
お兄さん力とかやっぱりそういう問題なのかもしれない。
「そんなに俺のこと見てどうしたんスか…」
「ガクがお兄ちゃんだったらーって考えてた」
「そっか」
プリンを食べようとした私の視界には真向かいに座るガクの顔がはっきり見える。
いつもより嬉しそうにしているのだってはっきり分かってしまう。
それはまるでうちのでびちゃんが契約者さんのことを話すときみたいな…
大型犬がしっぽを振っているのが今にも見えそうだ。
「ガクに免じてプリンは食べないでおくよ」
「良かった、これは…俺のおかげッスかね」
照れたように笑うガクの顔は誰が笑う顔よりも眩しくて、煌めいている。
うちの家ではみんなこんなに大きな感情表現をしてくれないから困る。
お兄ちゃん然り、刀也然り、りりだってそうだし。
だから私にはガクの曇らないその笑顔が少しだけ妬ましくなった。
私だってこんなふうに笑えたらって、思ったけどーやめた。
「立花ちゃん?」
ガクに見つめられると何だか嫌だ。
自分の弱いところを見透かされてるようなそんな気がして。
こんなことを考えて、逃げてしまう私はもっと嫌だ。
「ガク、勝手に人の妹を口説かないでよ」
珍しく、お兄ちゃんと顔を合わせた。
相変わらず外に出ていないお兄ちゃんはやっぱりそこらの女の子に比べても細いし白い。
なのに今のお兄ちゃんからはいつもの優しい印象なんてどこにもない…怖い。
「口説いてるなんてそんなつもりないッスよ、俺は刀也くんに用事があって…」
事実を確認するようにお兄ちゃんは私に目を向ける。
情を挟まずにあくまで客観的な視点で物事を見るのはお兄ちゃんのいいところだ。
「私が家に上げたの、刀也は部活で帰ってくるの遅いから…」
「そっか、俺はこれからガクと話すことあるから先に部屋戻ってて」
「わ、わかった…私が上げたのに…ごめんね、ガク」
「立花ちゃんが謝ることじゃないッスよ」
優しく笑うガクの顔が妙に残って、部屋に戻っても悶々と考える羽目になった。
今度ガクには何か奢ってあげよう。
そう決意して私は宿題を放って寝た。
普段は使わない頭をたくさん使ったからかたくさん寝た。