「キスくらいちゃっちゃとしろ!」
…野生のガクが飛び出してきた…?
何だ、急にどうしたんだ…とりあえず現状把握をしようと周りを見回して見ればそこには探していたやつの姿が。
「ガッ、ガク!邪魔しちゃ駄目だよ!」
なぜか分からないがガクは立花を連れている。
他のことはよく分からないがそれだけははっきりと分かる。
「立花、僕の言いたいこと…分かるよな」
「と、刀也っ?…見逃して…くれない?」
生憎目の前に見つけた獲物を逃がす趣味はない。
僕はそれほど慈悲深くないし、何より状況が状況だ。
「兄さん…これは完璧に意識がないね…」
どういうことなんだガク…一番うぶなのって実はお前なんじゃないのか…
「よいしょ…どうぞごゆっくり〜」
社も驚いているが僕だって驚いている。
顔には出ないね、なんてよく言われるけれど今日は本当にこの顔で隠せて誇りに思う。
起きている出来事は最悪だが。
立花がガクをおぶって消えた。
おそらくこの会場である神社から出ていったようだが定かではない。
というのも立花は足が早い。
いつもは面倒くさいから嫌だ、といってそれなりのタイムしか出せないが本気はやばい。
…と、それは置いておくとして。
「追いかけるか、行くぞ社」
社は浴衣だ。無理をさせて怪我をさせたら申し訳ない。
「え?…刀也くん?」
「悪いけどおぶらせてくれ」
立花を捕まえるために、なりふり構っていられない。
あいつが全力で逃げるなら追いかけるまでだ。
…早鐘を打つ心臓をなんとか無視して僕は家に向かって全力で走るのだった。