09

「助けてお兄ちゃん、ガクが死んだ!」
「死んじゃってるんなら俺は生き返らせたりとか出来ないな」
「ガク〜〜〜!!!」

凄まじいスピードで駆け抜けた立花はすぐさま家に直帰し、ガクを兄に預け、でびちゃんとのんびりとお話をした。
そうして立花は思い出した。ガクが意識を失ってしまったことに。
そこから兄の部屋に戻って先程の会話が展開されたのである。

「で?本当は何があったの?」
「それがねぇ………」

突如轟音を以て開かれたドア。
部屋の主である灰が眉を顰めるのさえ気にしない様子で刀也は強引に部屋に入室した。
近くにあった椅子に桜華を降ろすと向きなおる。

「と、刀也…」
「分かってるよな」

刀也が立花に向けるにしては珍しい、冷酷な視線だった。
有無を言わさず、相手にYESを押し付けるように高圧的な、それでいてどこか相手を煽るような印象さえ受ける。
しかし口元だけが歪に笑っているのだ。
全く恐ろしい限りである。

「たまたま見つけたから様子を見に行ったんだよ…」
「本当にそれだけか」

圧迫政治である。口喧嘩が得意な刀也にとって一方的に相手を殴る手段は口撃しかない。
しかしそれはただの拳より遥かに鋭く相手の心を突き刺す言葉のナイフに変わる訳だ。

「バイトの同期とお祭りに行くことになってたのを忘れてて…」
「やっぱりな」

おもむろに刀也が懐を弄り始めると立花は警戒して体を強張らせる。
対象的な二人の行動はある意味鏡合わせの対極で。

「誕生日に買ってやっただろ」
「…!でもあれは!」
「いいから使え」

これ以上怒る気はない、というように手をひらひらさせて刀也は下へと降りていった。

「刀也…勝手に私の部屋を漁ったの…?」
「立花、タイミング…」

一部始終を見せられた灰はため息をこぼしながらも袖口でニヤける口元を抑えた。
その笑みには彼にしては慈しむ表情が見て取れる。

「…はぇ?一体何があったンスか…?」

このあと社ガクは本日二日目の気絶をすることになるなんて…彼はまだ知らない。