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「絶っったいに許さない!!!」
「どうした黛」
「私じゃない黛が私の弁当食べたの!」
「学食で買えばいいだろ?」
「今日は唐揚げだったのに…」

見るからに怒っている立花は登校を一人でこなし席についている。
これは今までの彼女を知る者にとっては衝撃の事実だった。
壊滅的に朝に弱く放っておけば車道に出て引かれかねないと必ず兄である刀也と共に登校していたあの立花が一人で学校に来たのだ。

「今日は槍が降るのか…」
「天気予報は今日一日晴れだったよヒム、槍なんて降ったら死ぬよ…馬鹿じゃないの?」

所々に棘のある言い回し、他人を見下す冷えた眼差し、他者を全く気にしない態度。
どれを取っても兄である刀也にそっくりで、周りは「あーやはり兄妹だもんなぁ」と納得するのだった。

しかし彼女が変わってしまったのはまさしく午後からだった。
適当にパンを食べていたようだったがその表情には深くシワが刻まれており、その表情の苛立ちを一層見せている。
…人を殺したことがありそうな目つきだった。

「…ちょっと用があるんだけど」

放課後に事態は動き出した。
立花は刀也のいる教室に直接突撃し、本人を呼び出したのだ。

「何」
「謝罪は?」
「…は?」

訳がわからない…といった表情を浮かべる刀也とは対象的に立花の顔は決意と怒りに満ちている。

「とにかく落ち着け立花」
「無理」
「お前絶対勘違いしてるって」
「証拠あんの?」

いつもは立花を説得する側である刀也が半ば強引に押し切られているのである。
これは由々しき事態だった。
しかし刀也もやられているばかりではない。
ここで彼は一つの考察を得る。

「弁当、持ってきたか?」
「…食べられてた」

黛刀也は万能である。
ただ一つ、妹の奇想天外な行動を予測すること以外は。

「…早く帰るぞ、ご飯くらい僕が奢る」
「じゃあラーメン食べたい」

皆が口を揃えて言う。黛双子は恐ろしい、と。