「あれ〜ジャージのサイズが合わないんだけど…」
バックから取り出した体操着とジャージ。
何故かジャージだけぶかぶかになっている。
嫌がらせか?…それを確認する手段はない。
刀也ならきっと明日の準備くらい前日にしておけ、とか言って怒るんだろうなぁ…
でも刀也のジャージにしてはだいぶ緩い気がする。
…最悪の場合ジャージはなしで授業を受けてもいいけどそれはさすがに最終手段に取っておきたい。
かといって刀也にこのジャージの真意を問いただす時間は正直言って“ない”。
「…行くかぁ…」
そうして悶々とジャージのことを考えながら授業をぼんやり聞いていたら声がした。
別にやばい音とか私にしか聞こえない〜とかでもない。
実際に先生は彼が来ることを黙認しているしクラスメイトはああまたかといった表情を浮かべている。
「それ、兄さんのジャージだろ…なんで持ってんだよ、てか気付けよ」
「そっかぁ、道理で違和感が無いわけだ!」
納得してしまった。これはお兄ちゃんのだった訳か。
…でもなんで入ってるんだ?お兄ちゃんのジャージだぞ?
「…はぁ、どうせ母さんが急いでたみたいだし兄さんのと入れ間違えたんじゃないの?ーーはい」
私(妹)に向ける表情からみんな(大勢)に向ける表情に変わる。
所謂外面、というわけだ。
刀也は私にジャージを差し出してくる。
大人しく受け取ると満足そうに微笑んで授業中失礼しました、と去っていく。
色めき立つクラスメイトをぼーっと眺めながらまた浮かんでしまった悩みについて悶々と考える私であった。
『そういえばお兄ちゃん、今何を着てるんだろう』と。