きさまはわしにしねというのか
(トリップ/原作知識有)

天才科学者兼メカニックな祖父がタイムマシンを完成させるも、それを悪用しようとした組織に殺される。主人公は祖父の遺言通り研究データ諸々を処分ののち、タイムマシンに数分後発動する自爆装置をセット、単身過去に跳ぶ。
……ところがどっこい、このタイムマシン。過去は過去でも、パラレルワールドの過去に跳ぶものだった。

それに気付かないまま数年を過ごし。ようやくここがジョジョ世界だと主人公が気づいた頃には、三部原作が始まろうとしていた。


***


この世界がジョジョの奇妙な冒険の舞台、それも第三部に近い時代だと知った時には既に、俺はSPW財団超常現象部門で働く一財団員となっていた。
……属してんじゃねーよ、財団名を聞いた時点で気付けよ、という話だが、本気で気付かなかったのだ。なんてこったい。

財団は、漫画内の超能力への考察をするようなお気軽感覚で研究していればお金がもらえる、俺にとってはいい職場だった。だがしかし、これからはそうもいかないだろう。漫画では、DIOの居場所やDIOの刺客に関する調査で、財団員がどうにも犠牲になっている様子であった。
……これは辞め時というやつだろうか。


ところがどっこい(二回目)、そうは問屋がおろさないらしい。

財団には、思ったよりジョースター信奉者がいたというか、財団内で彼ら一族の存在が神格化されてたというか、
命懸けになれちゃう人たちが一定数いた。その人達が突っ走って、超常現象部門総意&総出でジョースター一行を全力サポートしますよと既に先方に伝えてしまったというのだ。
違うよ!? 総意じゃないよ!? 俺、いいって一言も言ってないよ!?
俺は財団を辞めるぞージョジョーー! と言いだすにも、超常現象部門所属で『スタンド』に一番詳しいとされている俺が簡単に辞めさせてもらえるはずもなく……いや本当、権力使って圧力かけるって……大人ってずるい。
スタンドに詳しいことに関しても、俺はただ漫画知識をそれらしくデータとって証明しただけなのに、未知の力(スタンド)への世紀の発見になっちゃうしさ。カンニングペーパーを見たんだよ! 俺は大した人間じゃないの! そのカンニングペーパーの存在が証明できないがために過大評価貰ってしまって、今逃げられなくなっているわけですが。ぐすん。

何故こう、やらかしてしまったのかと、過去の自分を恨み責めたい気持ちが湧くけれど。
こっちに跳んで直ぐの頃は、生活基盤も何もなくて、身分証明もできないから、堅気(マトモ)なところでお金を借りられるはずもなくて。……当時未成年だったしね。
ようやく財団に就職できた頃には、借金がものすごく膨らんでしまっていて。ヒラの財団員の月給では利子返済すらままならなくて、借金返済に喘いでは、返済の終わりのなさに戦々恐々して。
そうして、まとまったお金欲しさに、分かりやすい成果を出そうと必死になっちゃったわけだ。……仕方ないね。




財団or不動産王が借金肩代わりルートもアリかな、とも思いましたが、飼い殺しルートです本当にありがとうございました。いや、展開を思うほど、可哀想すぎる、これは可哀想すぎる! となって、考えなかったことに。
(一応この世界では)天涯孤独の未成年少年が組織に紐付きにされてるとか、利用されるだけされる搾取される側になりそうで、組織側のやってることが完全に悪の所業(『悪』とはてめー自身のためだけに 弱者を利用し ふみつけるやつのことだ!!)ワロリンヌ。
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