零崎病識の人間捜索
(混合/戯言)
・零崎病識の人間捜索
ぜろざきやましきのにんげんそうさく
「おい、嬢ちゃん。いや、坊ちゃんか。もうすぐ日が暮れるぞ、ほらお家に帰んな」
「はあい」
「いい返事だ。気をつけるんだぞ」
人のいい笑みを浮かべた年配の警官に、少年は胸の内で独りごちる。
(――帰れたら、よかったんだけれど)
警官に手を振って、公園を出た少年は、パーカーのフードを深く被り、目的地もなく歩き始める。少年にとって帰るに足る場所は、残念ながらこの世界にはない。家族のいる場所こそ、少年にとっての居場所であり、帰る場所だった。
――否、その家族を捜して、この杜王町まで来たのだ。家族がいれば、そこが少年にとっての帰る場所になる。ならば、この町のどこかに、帰る日がくるかもしれない。
目的ははっきりとしていたが、手掛かりが何もない。そろそろあの暑苦しい兄の重い愛が恋しくなってきた。
あの赤い請負人なら、この状況も楽しめたのかもしれないが、少年にとって家族と会えない日の続くこの世界は、地獄も同じである。
――零崎病識は、この世界の住人ではない。
よく似た、けれども確実に違う世界からやってきた存在だ。この世界からすれば、異物でしかない。
はじめは悪い冗談だと思った。携帯が通じないのも、街中の西暦表示が狂っているのも。
だが、カラオケのデンモクが鈍器じみた紙束でしかない冊子だったことや、手に入れた「最新」であるらしい通信機器の技術の拙さに、ここが自分のいた世界とは異なる世界であることを知った。
この世界に、≪殺し名≫はない。≪呪い名≫もない。政界に≪玖渚機関≫は存在せず、財政界に名を馳せるのは≪四神一鏡≫ではなくSPW財団だ。
この世界に、己のことを知る者はおらず、己の知る者もいない。戸籍すらも、存在しない。この世界と病識を結び付けるものはなく、それはとても寂しいものだった。
「寂しすぎて、死んじゃいそう」
だから、一刻も早く会いたいのだ。この町にいるという殺人鬼に。
****
・アンジェロに襲われたよ!
(尚さくっと反撃した模様)
殺意をナイフで受け流し、男のその肌に刃を走らせる。突き刺す。切る。抉る。
「――嗚呼、これで」
病識はうっそりと微笑んだ。鼻腔を満たすのは、慣れ親しんだ血の匂い。
「漸く、息が出来る」
――零崎病識は殺人鬼である。
そこにいたから殺す。
天気がいいから殺す。
殺したくなって殺す。
息をするように殺す。
人を殺すことに理由などなく、殺すことが殺す理由に足る。殺すために殺す。病識の知る殺人鬼とは、そういう生き物だった。
――この世界の『殺人鬼』も、同じだと思っていたのだ。
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家賊だと思った?ざんねん!手フェチさんでした!
実際に出会ったら、かぞくじゃないことにショック受けて絶望するなりプッツンするなりしちゃいそう。吉良さんにげて。
このあとは。血だまりの中、倒れていたところを巡回中の東方巡査に拾われ。事情聴取を受ける。
血は全てアンジェロのもの。
人を殺すことに忌避感や罪悪感はなく、むしろ息をすることと同じなので、何が悪いのかわからない。人を殺すために人を殺す。それ以上でも、それ以下でもない。ただそのためだけ。手段が目的に直結している。そんな殺人鬼さん。
病んでる。家賊に依存している。他の人間はどうでもいいなあ。優しくしてくれる人はわりと好き。
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「このまちにきたのは、人をさがすためで」
「兄か姉か、弟か妹かも分からないんですけれど、僕にとっては、生き別れの兄弟みたいな人なんです」
「はやくあいたいなあ」
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