▽2016/11/30(Wed)
執着のこころ
「先生、僕はあなたが好きなんです。もうずっと待ちぼうけているから僕は時間の感覚がわからなくなりつつあります。先生、拝啓先生、僕が愛した先生。寂しいです。たとえあなたが僕のことを見てくれなくたっていいんです、ただこの図書館に存在してほしいだけなんです。先生、なんで来てくださらないのですか。あなたに語りたいことが沢山あるんです。寂しくて涙すら出てきません。僕がお嫌いですか。ああ、そうだね、こんな人間じゃあダメだね。ごめんね先生。それでも好きなんだ」
ぐしゃぐしゃに濡れた毛布にくるまってごねている司書の背中を優しく叩くのは、決まって森の仕事だった。
森は元軍医である。精神的に不安定な司書の様態を監視するよう館長から命じられるのも、恐らくはきっと必然だったのだろう。
森には、傍らで泣き言を漏らす司書の気持ちがわからない。分かりたくもない。けれど自身のことを(屈折した、されど真っ直ぐな)父と呼び慕うこの人の子を、見捨ててはおけないのだ。