こころまい
なんていうさあ。
「おう」
僕らを祝福してくれる人なんてきっとどこにもいないんだろうなって。
「……おう」
表面上では受け入れたって、底ではそうもいかないんだろうねって。
「そうだな」
なんでこうなっちゃったんだろうねって。
「……そうだな。どうしてだろうなぁ」

なんで好きになっちゃったんだろう。
「……本当にな。どうしてだか」
おかしいね。
「全くだ」
ごめんね。
「謝んじゃねえって何遍も言ったろうがよ。オレが好きでしてんだ」
僕がこんなんだからこうなったんじゃないかなって。

「……ばーか。おまえの気持ちがセンセーに向いてる時から、オレはおまえを」

駆け落ち録
うーむむむむ。
「有無?」
いあ、ただの唸りです。
「ほーん」
……ねえねえちゅーやくん。
「おう」
ずっと本の中にいてもきりがないねえ。
「おいおい今更かぁ?此処が一番安全っつったのはおまえだろうがよ」
そうなんだけどさあ……こう……海とか見たいじゃん。
「見れるだろ」
そうじゃなくてさあ。
「それともなんだ?出る気になったのか?」
それは……うーん……。
「?」
君が悪者になるのは嫌だ……。
「……あー……」
やだ
「オレのことは気にすんなって」
悪いのは僕なのに。やだな。
「気にすんな」
それも嫌だ。僕ばっか守られてる。
「守ってるつもりはねーけどな」

……今本持ってるのって誰かわかる?
「センセー」
即答……。
「分かるもんは分かるから仕方ねーだろ」
よりによって芥川先生……。
「あの人も存外しぶといなァ」
先生か……。
「戻るか?オレは構わねえぜ」
それは断固としていやだ。
「イヤイヤばっかじゃねーかおまえ」

逃げたい……遠くへ……。
「駆け落ちとか柄じゃねーよ」
駆け落ちしようぜちゅーやくん……。
「出来るもんならやってみろよ」
うっ……ううううう…………。
「無理だろ?」
本が……仕事が……文学書……。
「クソ真面目かよ」
そうだよ!!!!

駆け落ち録
僕らが結ばれたって誰にも祝福されないだろうね。
「そうだな」
それでもしあわせをつかみ取ろうとするのは、愚かなんだろうか。
「……他人と比べんじゃねえよ。お前が幸せなら、それでいいってんだ」
そうなのかな。
「そうだよ。いい加減ダレカノタメはやめろ」
……そうだね。そうだよね。
自分のために生きていいんだよね。
「ああ」
それを気づかせてくれたのが君なわけだけど。
「不平か?」
まさかぁ。最高だよ。
「はっ、言ってろ」
いくらだって伝わるまで言うさ。
「口だけは達者だよなあ、相変わらず」
それはお互い様だろうよ。
「……ああ、違いねぇ」

駆け落ち録
ずっとここにいたいけど。
「ああ」
かくれんぼに終わりは来る。
「……ああ」
おしまいが来てしまう。
「へっ、ばーか。何遍も言わせんじゃねえ。……おしまい、の時まで一緒にいるよ。離れる気なんてない。そばにいるよ。綿毛に寄り添う春の香りのように、穏やかに揺蕩いながら」

サヨナラなんて、言わないよ。

駆け落ち録
ずっとここにいたいよ。
「そいつぁ無理な話だろうさ」
そうかなぁ。
「そうだよ。……太宰のしぶとさなめんじゃねぇぞ」
執念深いのは知っているけどさあ。
「そのうち居場所は割れちまう。そうしたら」
サヨナラ?
「……」
そんなのやだよ。
「…………あぁ」
君は?
「……俺は、──俺も嫌だ」
…………そうかぁ。
「……ああ。嫌に決まってんだろ」
ずっといられたらいいのに。
「……はー、……わたしはおまえのことを思っているよ。いとおしい、なごやかに澄んだ空気の中に、昼も夜も=v
ここ昼夜ないけどね。ちゅーやくんだけに。ふふ。
「お前は春に射し込んだ秋のようなこざかしさがあるよな」

「人がせっかくうたってやってんだから、黙って聞いてろよ」
茶化すの楽しい。
「マジに尊敬されてんのか分からなくなるなオイ」
リスペクトしてますよ嫌だなぁ。

駆け落ち録



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