三者三様ソーダアイス
二日前の大雨が嘘みたいに、快晴だ。あのじめじめした時期も終わり、ただただ、日差しが暑い。痛い。何度日焼け止めを塗ればいいのか、部活がオフな私は一人でゆっくりと自転車を押していた。どうしてこんなにも暑いのに自転車に乗って、生ぬるい風を浴びないのか、そんな質問を投げてくる人は何人かいるだろう。それこそ、いつもギリギリとはいえなんとか滑り込んでいた私が今日という今日に遅刻をした理由である。
「し、死ぬ……死ぬ……」
あの台風に近しい大雨の影響で、道端には釘やら何やらがゴロゴロと落ちていたらしく、今朝家を出てわずか五分で空気の抜ける間抜けな音が響いて、まさか、と顔を青ざめさせた。学校に着いて確かめれば、釘が二、三本も刺さってしまい、前輪がパンクしてしまったのだ。先生に頭を下げて空気入れを貸してもらったものの、なんとか持ったのは校門を出るまでだった。
下手に乗ると、ペダルは重いしガタガタ揺れる、と逆に体力を消費することになる。しかし、暑さに弱すぎる私は外に五分出るだけでも命の危険にさらされてしまうので、額に張り付く髪を気遣う余裕もなく、だらだらと歩みを進めた。
自転車屋に出したら、すぐに返ってくるかなあ。まだ一週間も始まったばかりなので、流石に乗れないとなれば苦しいどころではない。財布はすっからかんだけれど、後でお母さんに払ってもらおう、と一人で自転車屋に向かった。
⊗⊗⊗
ガコン、と私を数秒焦らして、取り出し口にアイスが落ちる。自転車屋はもう目と鼻の先なのだけれど、どうも我慢ならなくて、モナカアイスを選んだ。そういえば、左右田くんとはテスト期間以来話していない。出来の話もせず、テストもテスト返却も席をデフォルト状態に戻さなければならなかったから、自然と彼とは席が離れることになったし。
「あ〜美味い」
自転車屋の透明なドアを眺めながら、もう目的地は目の前だと高を括り、大きな一口でアイスを頬張る。そして、入学時はあれほど後ろに固定しろと言われていたスクールバッグは当然のように籠に詰み、その中から常温となってしまった麦茶を喉に流し込んだ。ぬるい。
食べ終わったアイスのゴミは適当にスクールバッグに詰めて、スタンドを解除すると、重いそれを目の前の自転車屋まで押して行った。
「すみませーん」
「はーい」
数センチ開いた扉。また自転車を停めると、カラカラと軽い音を立てながらドアを開ける。すると、私が中学に上がる前と変わりない店員のおばちゃんが、軽い調子の返事をしては奥から出てきて、私を迎えてくれた。
「こんにちは」
「あら苗字さんのとこの。随分綺麗になって」
「よしてください。あの、朝に自転車パンクさせちゃって。今日中か明日の朝までに直せます?」
「まあ、もしかしてこの間の暴風雨の影響かしら? 今日中だなんて、一時間もあれば完璧よ」
「マジですか、助かります」
自転車事情に明るくない私は、そんなに早く直るんだ、なんて感心の息を漏らした。おばちゃんが気を遣って少し奥の土間のようなところに案内してくれて、麦茶まで出してくれたので、お礼を言っては喉に流し込む。おばちゃんが自転車屋の前輪から釘を抜いているのを眺めていると、おばちゃんがこちらに声をかけてくれた。
「そういえば名前ちゃんってうちの息子とは知り合いだったかしら? 名前ちゃんと同い歳なんだけどね」
「えっ、うちの中学? ……って、そりゃそうか。あんまり大きい中学じゃないんで、名前くらいは聞いたことあるんじゃないですかね」
といっても、本当に関わりのない人は名前すら聞いたことがない、なんてこともあるけれど、クラスの誰かしらと接点はもっているだろう、と麦茶の氷を鳴らしながらおばちゃんの言葉に耳を傾けると、ついそのまま麦茶を噴き出しそうになったのだ。
「和一っていうんだけど」
かずいち。思い当たる人が、一人だけいた。私の知っているかずいちくん、は左右田和一くんで、もしかすると他にもかずいちくんがいるのかもしれないけれど、それでも私の頭にはぐるぐると黒髪、眼鏡、地味めの彼の姿が思い浮かんだ。けれど、違うかずいちの可能性もあるし、おばちゃんが学年を勘違いしている可能性だってある。落ち着いて、麦茶の入ったコップをお盆に載せると、やがて私の背後の戸がガラガラと音を立てて開いた。
「なあオレのスパナ――あ?」
「……えっ」
どこか聞き馴染みのある、声変わり途中の声。私のすぐ背後が開いて、風がふわっと駆け抜けた。そしてどこかオイルの匂いが鼻について、それに引かれるように、振り返ると、丁度私の脳内で思い描いていた「かずいち」がいた。それから、二人は目を合わせたまま固まって、左右田くんに関しては、戸を開いて、膝を何故かわずかに曲げた中途半端な体勢で固まっており、そんな私たちを動かしたのは、おばちゃんのひと言だった。
「なんだ、和一。やっぱり二人とも知り合いだったんだね」
コップの周りにつくられた水滴が、今度はお盆に小さな水溜まりをつくる。私と左右田くんは、顔を見合せては苦笑いを零すだけだった。左右田くんは、口角すらも上がりきっていない状態だったが。
⊗⊗⊗
自転車を直すまでもう少し時間がかかるから、と新しい麦茶と軽いお菓子を持たされた左右田くんに着いていくように言われたので、左右田くんに続いて奥の部屋へと行くと、どうやら作業部屋のようになっているのか、工具やら部品やらが辺りに転がっていた。おばちゃんもなかなか強引だね、と笑う。私と左右田くんは二人きりで話すほど仲が良いわけではないし、二人ともその考えは同じだっただろう。左右田くんが吃っているのを見て、私から「じゃあお言葉に甘えて」と半ば強引に左右田くんの背中を押した。その後すぐに散乱した部屋を見て、こんなところでくつろげというのか、と思いつつ、左右田くんに指された丸椅子に腰かけた。
「……左右田くんのお家だったんだね」
「あー……そう。つーか左右田自転車って書いてるの見なかったのか?」
「嘘、気づかなかった。それ見てたら一発だったんだけどなあ」
左右田くんにもお茶を注ごうとすると、オレは良い、と言って地面に置いてあったコーラのペットボトルを開けた。もう既にぬるくなっていそうで、弱々しい炭酸ジュース特有の音がこの場所に響いた。コーラが好きなのだろうか。水分補給には微妙だと思う、とつい顔を顰める。この作業場のような空間は、エアコンや扇風機は回っているのに、左右田くんは汗をかいていた。不思議と見ている私にも熱気が伝わってくるくらいだ。それに、学校で見る制服姿ではなく、作業着のようなものを着た彼が新鮮だった。
「まさか出会うと思わなかった」
「こっちのセリフだよ。まあ、今日朝からクラスでパンクした〜つってたから修理には行くと思ってたけどな」
「あーっ、見てたならそのとき声かけてよ」
「見てたとかじゃなくてあんだけ言ってたら目に入るに決まってんだろ」
うげげ。そう言われると恥ずかしい。たかが自転車のパンクごときで、まず一回目が遅刻したときの言い訳。二回目はホームルームが終わった後に女友達に。三回目は英語の仲良しの先生に言って、四回目は帰りのホームルームの最中だ。たかが自転車のパンクといえど、自転車がなければ遅刻をするような生活を送っている私には緊急事態であったのだ。ふ、と小馬鹿にするような笑いを浮かべた左右田くんに、もういいから、と手をしっし、と払う。それから軽く咳払いをして、私から仕切り直すこととした。
「テストの話していい?」
「お、そういえば聞いてなかった」
「聞いて驚け。なんと平均点を上回りクラス十番になったのだ!」
一週間越しの結果発表。先生の気分で元に戻すらしい席は、未だに出席番号順のままなので、左右田くんに気軽に報告することもできず、引っ張って引っ張って、しかし運良く出会えた今日、ついに報告することができたのだ。丸椅子から勢いよく立ち上がって、ふふん、やりました、と鼻を鳴らしては腰に手を当てると、左右田くんは「おっ」と緩く微笑んだ。
「やったじゃねぇか。オレのおかげってとこだな」
「ほんとにそう! 左右田くんが頑張って教えてくれたからだよ、ありがとう」
「お、おう……素直に感謝されると照れんな」
ぽりぽりと頬を掻く左右田くんのその人差し指が、触れた場所に黒い染みを落とした。おばちゃんに貰った油芋をパーティー開けしては三枚一気に摘むと、口内でクリスピーな音を鳴らした。そのまま視線を右から左に、一八○度動かすと、小さな部品や工具、何やら機械を分解したような跡に、それから小型の――
「何これ?」
「あー、エンジンだよ。バイクとかのエンジンが好きでよ……よく改良したり直したりしてんだ。ま、趣味だけどな」
どこか気まずそうに、私からもそのエンジンからも視線を外す左右田くん。その言葉で、すべてが腑に落ちたような気がした。左右田くんが理系科目が得意なのも、技術の実技であれだけ活躍していたのも、それから、ほぼ活動していない部活動に所属していながらも放課後になると誰よりも先に教室を後にする様。納得と同時に、感嘆の息が漏れる。
「はぁ〜」
「……なんだよ、趣味悪いとか言うのか?」
「いや、ううん。中学生なのにエンジンの改良とか修理とかすごいなあって思ったんだよ」
「そりゃドーモ」
「思ってないでしょ。もう、感心してるんだよ」
エンジンのみならず、周りに置かれてある機械を見る限り、好きなのはエンジンだけではなさそうだ。左右田くんは余程機械が好きなのか、レンズ越しに鋭い目を細めた。輪郭が歪んでいる。
「機械の修理できるの?」
「まあ基本的にはって感じだな」
「すごーい! うちの精米機の調子がまあまあ悪いらしくてさ、また直してもらえたりする?」
「それくらいなら直せると思うけど……まあ実際見てみないとわからねーな」
私の口から出た精米機というワードが意外だったのか、「精米機……」とリピートしてはくくっと笑う左右田くん。すごいすごい! こんなに身近に修理屋さんがいただなんて、毎回電話かけて日にち指定して来てもらっていたのが馬鹿みたいだ。しかもエンジンの改良だのをしているということは、車なんかの修理もできるということで間違いないだろう。すごい! と左右田くんに大袈裟な拍手で称えていると、彼はわずかに見える耳を赤く染めた。
ここで、彼が以前以上に私に対して吃らず、話しやすそうにしていることに気がついたので、あ、と声を漏らした。
「てか、だいぶ私に砕けてきたね」
「あー、オメーはなんか大丈夫そうっつーか……普通に話しかけてくれて良い奴じゃん」
「へえ?」
「は?」
「いや?」
ふぅん、左右田くんが私に気を許している。やはり左右田くんの素はこちらで、だとすれば何故学校ではあんなにもオドオドしているのかが疑問であった。単に人見知りか、あがり症か。どちらにせよこっちのキャラの方が好かれると思うんだけどなあ。ともあれニヤニヤと笑いが抑えきれないでいると、左右田くんは溜息をついた。
「……この部屋だって学校のヤツ入れんのは初めてだしよ」
「えっ! もっと仲良い友達とかに先に見せなくて良かったの? そうなら全然案内してくれなくて良かったのに、私が強引に背中押したせいだよね、ごめん!」
「別に嫌とは言ってねぇだろ」
きゅん。ツンデレくんだ。へえ? とまた抑えられないニヤニヤを零しながら膝の上に頬杖をついて、左右田くんが何やらボルトを外していく様子を見ていると、今度は左右田くんが手をしっし、と払った。
「……そういえばよォ」
「ん?」
その後は左右田くんの邪魔をするのもだし、とまだ全然経っていない時間を確認するようにかわいらしい振り子時計が左右に揺れるのを目で追っていた。ジャラジャラと金属がぶつかり合う音がする。左右田くんが小袋から、私にとっては同じに見えるボルトを缶に移し替えては厳選しているところ、らしかった。その音の中に声が聞こえて、確かに拾えたので左右田くんの手元から彼の顔に視線を移すと、左右田くんは私をじっと見ていた。
「ピアス。どうしたんだよ」
「ピアス?」
新しいのをおろしたわけでもないし、もしかしたら壊れているのかも、と右手を耳朶に添えると、いつもはあるはずのひんやりとした感触がなく、ただただ皮膚の柔い感触だけが伝わった。
「あ、今日水泳あったじゃん。あのとき外したまんまだ」
「あー、なるほど」
期末試験が終わると水泳の授業が始まり、本日は二回目の授業だった。前回は耳朶に収まるファーストピアスで臨んだから見逃してもらえたものの、今回は少し垂れたものだったので、遅刻の注意とともに「ピアスは外しておくように」と注意を受けたわけだ。なんなら体育教師としては、控えめなものでも指導対象になるらしいので、小さいものですらも外さなければいけないことになった。
すると、左右田くんがじっと私を――私の耳を見ていた。目が合うことはなくて、あくまでも視線は私の耳だった。
「……何、気になる? 左右田くんも意外とピアス開けたいのかな?」
「いやオレは! ……まあ、気になるっちゃ気になるけど」
男の子のピアス、悪くない。左右田くんは特に大人しめの部類だから、ギャップ萌えを狙うには十分なのではないか。左右田くんは、ボルトを選別していた手を止めたまま、言葉を続けた。左右田くんから話してくれることが、こんなにも嬉しい。
「痛ぇか?」
「ううん、耳朶は全っ然痛くない。軟骨とか開けてる子は痛そうだけどさ」
「ほぉ」
「……今から開ける?」
「いやいやいや、それは心の準備が必要っつーか……」
「あはは、じゃあまたその気になったら開けてあげるね。左右田くんに似合いそうなピアスも探しとこ〜」
「オメーなぁ……」
はぁ、と仕方なさそうに溜息をついては、ふ、と微笑んだ。左右田くんに似合いそうなピアス、かあ。意外とトゲトゲしたようなものなんかも似合ったりするかもしれない。シンプルにリングのやつでもいいなあ。軟骨とか、意外と舌ピなんかだったら萌える。ギャップ萌えだ、ギャップ萌え。油芋のカスは遠慮されたので、お行儀は良くないが、袋から直接ざーっと口に流し入れた。
⊗⊗⊗
左右田くんの作業を止めてしまったことを申し訳なく思いつつ、私の話し相手になってもらっていると、私たちがこの部屋に来るときに開けたドアが潔く開いた。おばちゃんが、私の自転車の修理が無事に終わったことを告げた。
「じゃあね名前ちゃん。修理代二千円ね」
「ありがとうございます。あの、あとで持ってきてもいいですか?」
「全然いつでも大丈夫よ」
二千円。思ったより安いなあ、とは思ったものの、今手持ちの財布に入っている全財産は千二百円。惜しい、とおばちゃんに頭を下げると、人当たりの良い笑顔を返してくれた。左右田くんも、私を見送ってくれるのか、しかし土間のところでどこか気まずそうにしていた。お母さんに私と話しているところを見られたくないのだろうか。まあ、左右田くんと私って割と正反対に位置していそうだもんね。
おばちゃんから空気がパンパンに入った自転車が返ってきたので、ハンドルの部分を押して出ようとすると、一時間ほど前にモナカアイスを買った自販機が目に入った。つい、「あっ!」と声を出す。
「ん?」
「アイス奢るの忘れそうだった。何がいい? ダッツ?」
「うお、マジか。……あー、普通にソーダかな」
「ダジャレだね。おっけ、ちょっとそこの自販機で買ってくる」
夏場なのもあり、十七のラインナップにはソーダアイスが並んでいた。確かあのプレミアムのやつ以外は二百円以内で買えたはずだし、と、自転車のスタンドで今一度固定しては財布を持って小走りで自販機に向かった。シャーベットとバーのものがあって、ソーダだけで十七分の二を独占するな、と思いつつもアイスバーの方を押した。この一瞬でも日差しに溶けそうになって、また駆け足で半分開けていた扉の中に飛び込むと、エアコンの風が直撃する。
「はい、お待たせ」
「お、おう……サンキューな」
「モーマンタイ」
左右田くんはこの短距離で息を切らす私に引き気味なのか、それともやはり気まずいのかで視線を泳がせて、結局焦点を定めずに私からアイスを受け取った。水滴が、地面に小さな染みを作った。溶ける前に、と言うと、左右田くんは紙をぺりぺりと剥がしては控えめに舌を覗かせて、ぺろりと舐めた。
「なーに女の子パシらせてんのよ」
「いやそうじゃなくて……」
「おばちゃん。和一くん、私に勉強教えてくれたんで、この間のテストでいい点取れたんですよ。そのお礼ってことで約束してたんです」
おばちゃんが目を細めて怪しむように左右田くんをじっと見たので、アイスの冷たさで話しづらいであろう左右田くんに恥をかかせる前に、私から訂正をさせていただくことにした。すると、私の言葉を聞いたおばちゃんは、「あらまあ」と細めていた目をぱちくりさせて、私と左右田くんを交互に見た。左右田くんは、やはり気まずそうに、少しだけ耳のてっぺんを紅潮させて目を逸らした。なんだよ、と言いたげに。
「名前ちゃん、やっぱり今日の修理代はおばさんが立て替えとくわ」
「えっ、そんな。悪いです」
「いいのよ。二度手間だし、こんな息子と仲良くしてくれてるみたいだし」
にこにこ、またしても人当たりの良い笑顔を向けるおばちゃんと、それから、気にすんな、と言いたげに頷く左右田くんに胸のあたりがきゅうっとして、深く頭を下げた。
「こんな時間までありがとうございました。お世話になってすみません」
「こちらこそありがとう。和一のこと、これからもよろしくね」
「おいあんま余計なこと言うなって」
「任せてください!」
「オメーもな!」
左右田くんのツッコミが店内に響き渡る。それにおばちゃんと顔を見合わせて笑うと、左右田くんは「あ〜」と少し低い唸り声のようなものを発した。不機嫌なのかな? と覗き込むと、照れてるのよ、と返ってきた。まだまだ日は長いけれど、ほんの少し。ほんの少しだけ、空がオレンジ色へと変化している。カラスはまだ帰らない。もっとここで涼んで、日が落ちた頃に帰りたいという厚かましい欲望はあったけれど、流石に迷惑をかけるわけには、とガラス戸を開けた。
「じゃあね左右田くん。左右田くんもありがとう。また学校で」
「お、おう。……じゃあな」
つい先程までの威勢はどうしたのか、照れくさそうに返事をした左右田くんにぶんぶんと手を振ると、彼は控えめに右手を上げた。ガラス戸越しにおばちゃんに頭を下げて、間もなくペダルを踏み込んだ。
そういえば、左右田くんの家は自転車屋なのに、どうして通学に自転車を使わないのだろう。私の小学校の学区に入る頃には、ますます疑問が深まっていた。