夜に攫われてしまう前に
ペンギンサイド
冬島の海域に入り、日に日に気温が下がっているが、北の海出身が多い俺たちは毎日元気に航海を続けていた。だけど、子供であるネコには厳しい寒さのようで海域に入る前から部屋から出るのを嫌がるようになった。
なのに、どれだけ船内を見回ってもネコが見つからなかった。
倉庫で掃除をしていたシャチに聞くと「昼飯をベポにもらってるところを見た」と言うので、シャチとともに操縦室に向かうとベポは「運動させるために外にいたジャンバールに預けたよ」と衝撃的なことを言ってきた。
「いや、雪降りそうなくらい寒いのに?」
「でも、この前イッカクが買ってきたモコモコの服を着せたし」
「ああ、あの長毛猫の可愛いやつかー。それなら大丈夫か」
「ちょっと待て。ジャンバールは今食堂にいたが?」
俺たちは顔を見合わせて、誰が言うでもなくとりあえず甲板に行くことが決まった。
甲板の扉を開くと、ビュウと冷風が頬を叩いた。
ジャンバールはいったい誰にネコを預けたのだろう。船内で見なかった顔を考えるが、みんなどこかで作業をしていた気がする。
甲板に踏み出ると、その疑問はすぐに解決した。
「ええー、なにやってるんですか、キャプテン。めっちゃ楽しそうじゃん」
仰向けに寝ているキャプテンの胸の上にネコはいた。しかもキャプテン分厚いコートに包まれて。
キャプテンは絡みに行ったシャチに、「こいつをどこかに連れていってくれ」と迷惑そうに言った。どかそうと思えばできるはずなのに、素直じゃないな。
言われたシャチも同じこと思ったらしく、ぷふふと生暖かい表情でネコを引っこ抜き、そのままベポの頭に乗せた。
「うわあ、落ちない?」
「ベポが気合い入れてたら落ちないだろ。頑張れ」
「ええー、そりゃ頑張るけど、頑張ってどうにかなるものか?」
「サイズ的には頑張らなくてもバランスが取れそうだけど、寒いんだから抱えさせてやれよ」
っていうか、見つかったんだから早く船内に戻ろう。と騒ぐ二人を落ち着かせていると、キャプテンがベポの上のネコに目をやってから俺たちをぐるりと見回した。
「いつまでそいつを乗せとくつもりだ?」
ぴしりと俺たちは海賊女帝の罠にかけられたように固まった。
キャプテンがそう言うときがくることはもちろんわかっていた。一つ二つめの島を出るときはネコが降ろされているのではと不安になった。だけど、特に何も言われず三つ四つと島を進むにつれ勝手に安心していた。
「でもキャプテン。もっとネコに教えたいことあるんだ」
「そんなもの別も誰かが教えるだろ。海賊の常識を教えてどうするんだ」
「それもそうだけど」
しょぼんと項垂れたベポからネコが落ちそうになって、慌ててシャチが引き取った。
「とにかく、どうするか決めておけよ」
「アイアイ……」
奇しくも次の島はキンデルランド。そこは通称子供の島と呼ばれている。航海中に生まれた子供が捨てていかれるので島民の半分以上が未成年なのだ。戦力は弱いが、様々な海賊の血縁者がいるため報復を恐れて狙われることは少ない安全な島。
いや、偶然なんかじゃなく、キャプテンはわかって言ったのだろ。捨てるならそこだと俺たちに教えるために。