光の色をした右目にキス
「どこが平和な島だ」
文句を言いながら展開したROOMの中のマストを切ると、折れた上部が海に落ちて盛大に水柱が立った。
船の上にいた俺のクルー以外は唖然としたあと、一斉に悲鳴を上げた。逃げ惑う海賊、立ち尽くして泣くガキ。阿鼻叫喚の状況と化した船上に、堪らず顔をしかめて耳に指を突っ込んだ。
「うるせえ」と言っても、近くにいたガキの絶叫にかき消される。
「まさか海賊が襲ってくなんて思わないじゃないっすか!」
「キャプテン、早くネコを助けてやってくださいよ!」
クルーはクルーで、やいやい俺のそばで喚いているからゲンナリした。
俺は相手を威嚇するために適当に船を切り刻みながら、ベポの名前を呼んでさっさとあいつを見つけろと指示をした。その直後、「ベポ!」と叫ぶ幼い声がどこからか聞こえた。
ベポが甲板の端を指差す。
「ネコあそこ! キャプテン、切っちゃダメだよ!」
「誰に言ってやがる」
ベポの方に木片を投げて、そのまま「シャンブルズ」と左手を動かした。
その瞬間、木片は人間にかわり、すとんとベポの腕の中に収まった。
「ネコ〜〜! おかえり!」
「にゃ゛」
「せっかく助けたのに絞め殺すなよ」
「頑張る!」
不安すぎる返事だが、さすがのベポもそんなことはしないだろう。
「あ、シャチ! 賭けはおれの勝ちだよ! ネコが俺の名前を呼んだから!」
「じゃあベポが一週間掃除免除か〜」
呑気な会話を後ろに聞きながら、俺は本腰をいれて海賊を蹴散らしていく。
船を壊し、海賊は逃げられないように足を切断する。それを見て泣き叫ぶ子供は無視した。今は構っていられない。
ベポは散らばる海賊の足を拾い集め、シャチは捕まった子供を船から下ろしている。
あらかた甲板が綺麗になったころ、ペンギンがボロ布をまとったガキを連れて俺のそばまでやってきた。
「キャプテン、ここの船長は奥にいるらしいです」
それを聞いて、俺は船の屋根を切って、その中にいた髭面の男を宙に浮かべた。
「あいつか?」
ボロ布の、奴隷の子供が頷いた。
ペンギンに目を向けると、俺が言葉を発する前に宙に浮く男の顔を観察して「六千八百万ベリーです」と男の賞金額を伝えてきた。
「小物だが、まあいいか」
ガタガタと震える男から慣れた動作で心臓を抜き取ると、泡を吹いて気を失った。
男には用はない。奪われたものは取り返した。
「帰るぞ」
「あいあいキャプテン!」
俺が一声かけると、クルーたちは手に持っていたのたうち回る足を適当に投げ捨てて集まってきた。
そしてベポの服の中に仕舞われた子供の頭を撫で回していく。子供もされるがままで、それを自然体で受け入れている。
随分と馴染んだものだな。最初はおっかなびっくりといった様子だったのに。
わいわいと騒ぎながら船を降りるやつを見ていると、ベポが自慢げに「ネコが最初に喋った言葉はおれの名前だよ!」と胸を張った。
そういえば、しょうもない賭けをやっていたなと思い出し、俺はにやりと笑って子供を指差した。
「そいつが初めて喋ったのは『ロー』だ」
俺はたしかにROOMを広げる前、風に乗って、助けを求めるように俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「そんなあ〜」と悲しげに肩を落とすベポと、何がなんだかわかっていない子供の顔がおかしくて、俺は声を笑った。