あの幼子は笑っていたか
ローside
ベポが子供を拾ってきた。とペンギンから聞いてベポの部屋に向かってみれば、小汚い毛布に包まれた赤子がぽつんと床に置かれていた。
てっきり迷子の子供でも連れてきたかと思えば、予想よりはるかに小さく瞠目した。
すやすや眠る赤子は、どう見たってまだ歩きもできない年齢。まさしく「拾ってきた」という表現が正しかったことがわかる。
痛む頭を押さえていると、後ろの扉が大きな音を立てて開いた。
「あ、キャプテン! ここにいたんだ、探してたんだよ」
「……俺もお前に聞きたいことがたくさんある」
興奮したベポは俺の台詞を聞き流して「赤ちゃんが返事をしてくれないんだ!」と俺に掴みかかってきた。
「ベポ」
「もしかして耳が聞こえないのかな」
「おい」
「聞こえなかったら急に連れてこられてびっくりしちゃうよね」
「話を聞け」
「でも、俺とペンギンの声に反応した気はするんだけど……。ねえキャプテン、どう思う!?」
わーわー騒ぐだけ騒いで悲しそうにこちらに意見を求めるベポに、長い溜息をついた。
「どう思うと聞かれても、今寝てるんだから俺に判断はできねえだろ」
「……それもそうだね」
「状況を教えろ」
「えーっと、島の外れの廃墟街にいたから連れてきたんだけど、話しかけても反応がなくて、でも俺とペンギンが話していたらなんとなく目で追っていたんだ。だから耳が聞こえないとは思えないんだけど……。ああ、そうだ一応『にゃー』って喋ったよ!」
「戻してこい」
「ええ!? そんなことできないよ!」
我慢の限界がきて頭を抱えた。
迷子の子供ならどれほどよかったことか。
たしか俺はこの間、新世界に入るのはまだ先だと言った。だが、だからといって喋れない子供を船に乗せるような暢気な航海をするつもりはないんだ。
「ちゃんと世話するから」と言うベポに、「海賊は遊びじゃないんだ」と諭してもう一度戻してこいと赤子を指差した。
「でも、あんなとこに戻したら死んじゃうよ……」
子供がいた廃墟街を俺は知らない。俺はその手前の町にいたからだ。それでも独特の空気が漂う嫌な島だと感じた。一言で表現するなら雰囲気の悪い島。排他的で、島の人間と外の人間で明確に分けられているし、見た目に関しても同一であることが望まれている。
島の人間とは違う外見で、服を着て、言動を取る俺たちは随分と嫌がられた。
問題の赤子は外見こそ島の人間と同じだが、島の人間は赤子が着ているような猫を模した服は着ていない。
排他的な風潮の中、廃墟街に捨てられた奇抜な服を着た子供。
ベポの言うとおり、その行く先は目に見えている。
ぐっと言葉に詰まったのに気づいたベポは、ここぞとばかりに「ひとりぼっちは可哀想だろ!」と畳み掛けてくる。
その言葉を聞くと、「ちゃんと世話しろよ」と返すことしかできなかった。