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-レクライア学園・教員棟-
教員棟に入ったのはいいものの、何なんだこの纏わり付くような霧は…。
視界も悪くて敵がどこから出てくるかすらハッキリしない…。
そしてじとっとしていて気持ち悪い。
炎「ねぇ時雨ー……、この霧なんとか、風で吹き飛ばせない〜?」
ひーとがダルそうな声を出した。
何とかしたいのは山々だが……。
雨「無理だな……、室内だし。」
俺が空を見て言うと、ひーとは頬を膨らまし、
炎「どこでも吹かせられるから風術士なんじゃないの〜?」
……と、皮肉っぽく言った。
……無茶言うなし……。
つか、はっきり言って面倒だったんだ。
何か面倒な事に巻き込まれそうだったし。
で、今回も俺の予想が的中して面倒事に巻き込まれてるし。
……俺的には、レクライアが無くなっても別に困らないんだが。
困るのはあの理事長本人だし。
だが他の一般生徒が困るのは少し可哀想な気がするから、こうして今ここにいる訳でー…。
……なんて、言い訳がましいな。
風術が使えないわけではないが、正直ここでそのレベルの風を吹かせると、天井とかが崩落して来かねないというのが、本当の所だ。
言っても、そこまでレクライアがなくなって困らないわけでもないしな。
第一、現在休みで帰省中の連中が戻ってきたときにこの惨状を見たら、多分真っ青になること間違いなしだろうし。
氷「……いい加減嫌になるわね、この霧。」
雪「……もしかしたらお肌がしっとりするかも?」
若干頬を引きつらせながら言うあいすに、小雪がニヤニヤしながら言った。
桃+狐「!!!」
あいすは気にも留めなかったが、他の女子が反応を示した。
……ん?
真が何やら物言いたげに狐を見ている……。
狐「ん?なんや真、こっち見てぇ。」
真「いや、何でもないよ、うん。」
真はどうやら、地雷を踏まぬように気を付けて発言しているようだ。
氷「……もう我慢できないわ……。空中に漂う水素よ、余分なものは消え去れ!!ヴァプールクーペ!!」
あいすが耐えかねて水術を使った(詠唱が雑だったのは気にしない方が身のためか……)。
詠唱からして、恐らく何か水分を消し去る水術なのだろう。
お陰で白い煙のような霧が消え、視界が開ける。
霧が消えた途端、後ろから殺気を感じた。
振り向き様に、感覚で敵の攻撃を受け止めると、直ぐ様攻撃を弾き飛ばし、敵の腹部を斬り付けた。
雨「ちっ……危ねぇな……。」
俺が小さく舌打ちをし、後方に飛びずさると、ひーとは詠唱を始めた。
炎「おっきくてあっつい火の玉、いっけぇー!!イグニスティラール!!」
やっぱ詠唱酷ぇ……。ってそんな事言ってる場合じゃない。
相手に焔(ほのお)を纏った玉が当たる。
炎「よーっし!!命中っ!!」
ひーとがハデにガッツポーズをする。
しっかしこいつ…。
桃「……ひーと……、ゲーム感覚でやってない?」
どうやら桃花も、同じことを思っていたらしい。
炎「えっ、やだなぁ、ゲーム感覚でなんて、やってないよー。」
ひーとがなぜか照れたように様に言った。
……褒めてないんだがな。
狐「えらいグロテスクな魔物やなー……ずるっずるやん……」
真「はあっ!!何でこんな魔物が屋内に……」
狐がうぇえと気色悪そうに声を漏らし、真が迫ってくるそいつらを躊躇なく蹴り飛ばして呟く。
確かにグロテスクな外見だ。
……よくあるサバイバルホラーにでも出て来そうな外見の。
有体に言うゾンビそのものだ。
しかしああいう物によくある、パンデミックとかバイオテロとか言ったものは一切起こっていない。
ということは魔物の類なんだろう。
……というかそうじゃないと困る、魔物でもあんまり見たくないが。
雪「わぁん!こんなやつ外にはいなかったじゃない!!何よこのホラーゲームみたいな体験!!何なのこの魔物!!」
氷「冷音、見たことあるかしら?この魔物たち。」
冷「……えっと、確かデットボディとかいう焔属性と光属性が弱点の魔物……インパクトのある外見だったから覚えてる。生息地は墓地近郊、昔エヴィニエスって帝国があった時は北の方の…今は海がある地域にいたらしいけど……」
弓を射りながら逃げ回る小雪。
それを横目に見つつあいすが冷音に問うと、彼は図鑑でも朗読しているかのようにすらすらとその弱点と過去の生息場所まで述べた。
デッドボディ……直訳すれば死体だが……古代魔導語か……?
色々思案していると、俺の背後から更にそいつが現れたらしい。
炎「イグニスティラール!!」
詠唱無しで飛んできた大きな火の玉が、俺の横を掠めて飛んでいった…。
炎「いよーし!!またまた命中〜!!」
……ぜってぇゲーム感覚だろこいつ……。また派手にガッツポーズを……。
雪「痛い……!」
ひーとに気を取られているうちに小雪が別の奴から攻撃を受けた。
雨「大丈夫か?」
慌ててそいつを斬りつけて退かせ、無事を確認する。
どうやらこいつが最後らしいが…。
雪「……大丈夫です……。」
そう言って小雪は埃を払い、ゆらりと立ち上がって。
雪「デッドボディですって……?只の死体じゃない……こんなやつら、ゾンビラーで十分よ!!
邪を撃ち祓え!!スビェートアロー!!」
弓を構え、術を唱えてそいつを射抜いた。
……どうやら毒の心配はなさそうだ。
よーっしとかガッツポーズしてるし…。
しかしゾンビラーって……。
……気にしない方がいいんだろうな……きっと……。
辺りにはもう、例のデッドボディの姿は見当たらない。
どうやら小雪が討ち取った奴が最後だったらしい。
雨「……倒すもんは倒せたし……とりあえず、先に進むか……。」
誰に言ったわけでもなく呟くと、あいすが賛同した。
氷「そうね、またあれみたいなのが出るかもしれないし、気を引き締めていきましょう。」
* * *
そんなわけで、俺達は暗い廊下をヒタヒタと歩いている。
それにしても、何故こんなに暗いんだ……。
今はまだ午前中だった気がするんだが…。
校内の蛍光灯が割れているから仕方ないといえば仕方ないのか?
しかしこれじゃあ、敵がどこから来るかすら分からん……。
光さえあれば……。
……ん?光?
雨「小雪、光、空中に出せるか?」
雪「出来たらとっくにやってますよぉ……。」
……だろうな……。
炎「ん?明かりがほしいの?ボク出せるよ?」
ひーとはそう言うと、3つほど鬼火のようなものを出した。
……浮いてる……、つかよく燃え移らないな……。
炎「うん!!これはね、空間術に、焔術を混ぜて、空間にとどめてるから、燃え移ったりしないんだよ♪名付けて……、火焔ホールド!!」
か、火焔ホールド……。なんか何かのアニメにありそうな名詞だな……。
「お姉ちゃんに習ったんだぁ〜」などと本人はほわほわしているが……あいつの名づけにしてはチープな気がした。
炎「そこはー……気にしない気にしない。」
笑顔で言われた。
……そういうんなら気にしない……けども……。
そういうってことは多分、名づけはひーとなんだろうな。
雪「ところで時雨さん。理事長ってぇ、どこにいるんですかねぇ?」
小雪、そのぶりっこを止めてくれ……。
イラッとするから……。
雨「……さぁ?理事長室じゃないか?」
俺はその気持ちを心の奥に押し留め、なるべく冷静に返す努力をした。
狐「なぁなぁ、理事長室って、ここやないか?」
狐が、目の前にある木で出来た馬鹿みたいにでかい扉を指差した。
上にはまた立派な文字で"理事長室"と書かれている。
雨「そうみたいだな……。入ってみるか……。」
一番先頭にいた俺は、扉をノックし、失礼しまーすと全員で言いながら扉を開けた。
そこには誰もいなかったが、掃除だけは行き届いていた。
氷「あら?誰もいないわね……。」
あいすが呟いた。
ここに居ないとなると……どこにいるんだ……?
……そう首をひねっていると、上から轟音が響いた。床が揺れる。
炎「何!?今の音!!」
驚いたひーとがすっとんきょうな声を上げる。
……この上は……屋上か。
雨「…行ってみるか。」
狐「ようやっとご対面やなー?ぶん殴ったるわ!」
いきり立つように言う狐を先頭に、俺達は理事長室を後にした。
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