12
-屋上-
屋上は、転落防止用のフェンスが張っており、大体サッカー部が練習できたりするぐらいの広さがある。
理事長が暴れるにはちょうどいい広さだな。
さっきの轟音はどうやら理事長(正確には理事長の持っている珠)が出した光線によるものらしい。
下に敷いてあるコンクリートの部分が捲れて盛り上っている。
理事「遅い……、随分遅かったな、ザコ共!!」
そういいながら理事長は珠から強風を起こした。
雨「悪風を退けろ、ヴェンターシルト!!」
俺は咄嗟に風属性の攻撃を打ち消す術を使い、半ば睨みながら言った。
雨「遅いっていうなら場所ぐらい詳しく提示しておけ。」
理事「くっ……こざかしい真似を……。葬ってくれる!」
そう言うと理事長は、こちらに向かって飛んできた。
……ふと思ったが、うちの理事長はここまで口が悪かっただろうか……?
真「臥床脚(がしょうきゃく)!!」
そう考えているうちに、真が飛び上がった後に蹴り落とす技を放った。
それは丁度良く理事長の頭にクリーンヒットする。
しかし特に痛がる様子はない。
ん?なんか上から落ちてきてるな……。
狐「真!!上見ろ上!!」
狐の声で真はやっと気づいたが、時はすでに遅く、それは、近くにいた仲間(ひーと・ビスカス)そして理事長を巻き込み落下、ゴウンゴウンと音をたてた。
それと言うのは長さ一メートル程の鉄パイプ。
普通の人は落ちてきたら絶対に命は助からない。
しかし当たりどころが良かったのか、全員少し傷を負うだけに留まった。
というか、何故何もないはずの所からパイプが降ってくるんだ……。
炎「うぅ……真ってば酷いよぉ……。」
ひーとがよろけながら立ち上がった。
さほどダメージはなさそうで安心したが……。
流石に降ってくるのは予想できないよな……。
氷「はあっ!!」
そのまま突進してきた理事長に向かって、あいすが遠心力による強力な薙ぎ払いを繰り出す。
雪「聖家・必殺奥義受けてみよ!!残光閃!!」
さらに続けて小雪が光を放つ矢を放ち、それは理事長に刺さる、だが……。
理事「ぐっ……ははは、その程度の攻撃、今の私には効かぬわ……。」
二人の攻撃はあまり効果がない…。
先程の真の技も、降ってきた鉄パイプも、さほど効いてはいないようだった。
何か物理攻撃が効かないような装甲でも張ってあるんだろうか?
氷「あら、頑丈なのね。」
あいすが俺の横まで下がって、にっこりと言った。
……目が笑っていない。
どうやら防がれてしまったことで、少々イラついているようだった。
そうこう言っている間に桃花が薙刀で相手を打ち下ろす技を放つが、さほどダメージが入らない。
何か壁のようなものに跳ね飛ばされて受け身を取り、彼女はすぐ近くに着地した。
桃「今のは……。」
桃花が眉を寄せる。
……もしかして物理は弾かれるのか?
…もしそうならこれはどうだろうか。
雨「瞬雷よ、爆ぜろ、スパークボール!」
圧縮された雷のフォルトの弾を放つ。
雷の弾は理事長が被弾した瞬間に弾け、雷撃となって開いた。
理事長の体がのけぞった。
やっぱり、術なら入るのか。
そうなるとあの感じは反物理結界らしい。
炎「魔術は効くんだね?ならボクも!!!
一撃どっかーんだよ!!!プラッツェンフレア!!!!!」
俺の動向を見ていたらしいひーとが、下がってきて術を放った。
術は、理事長の腹の辺りを狙って爆発を起こす。
(相変わらずひどい詠唱だ。)
しかし……理事長は魔術なんて全くからっきしの、普通の人間だったはずだ。
なのにどうして結界術を使える……?
なんかそういう道具でも使ってるのか?
冷「氷晶よ、芽吹け。グラキエスクロス!」
冷音が初級の氷術を放つ。
理事長の周囲を中心として、霜の柱のようなものが十字型に展開され、砕けて宙を舞う。
やはり魔術は結界を通るようで、霜の欠片が理事長の肌を白く凍てつかせた。
けれど、人相手というのもあって加減をしているのか、威力はそこそこだ。
理事「くっ!!この!!!!!!!」
凍傷を負ってふらついた理事長は、忌々しげに体勢を立て直すと、左手に浮かんでいた球体を天に掲げた。
球体が点滅を始め、さらに高く浮かび上がる。
するとそこを中心に、暗雲が渦を巻き始めた。
……可視状態にはなっていないので確認はできないが、球体を中心にフォルトが集まっているような感じがする。
……もしかして魔術が急に使えるようになったのは、あの球体の影響か?
……それにしてもあの点滅の仕方とあの黒い雲、昨日ひーとの家のバルコニーで見たような……。
雪「ちょ、ちょっと!!あれ昨日の奴じゃない!?」
小雪が点滅を続ける球体を指さして叫ぶ。
あれが俺以外にも見えているというなら、今回は俺の見間違えや勘違いじゃなさそうだ。
そうなるとこの学園をほぼ更地同然にしたあの閃光がもろにこちら側へ来ることになる。
そうなれば俺達の生存は危うい。
どうする……どうすれば……。
炎「えぇ!?あんなの撃たれたら死んじゃうよ!!!」
ひーとが狼狽える。
俺はここで、今までに学園で習ってきたことを反芻する。
確か、今理事長が使っていると思われる反物理結界は、魔術で中心となっている術者を攻撃し続ければ多分壊せる。
そして恐らく、魔術の素養も経験も皆無な理事長は、道具を使ったとしても、攻撃を受けながらそこまで長い時間、あのレベルの結界を保てない筈だ。
だからこそあそこまでの大技を使って短期決戦に持ち込んでいる可能性がある。
理事長のスタミナ切れで結界が切れるまで、粘り勝ちに持っていくという手もあるが、残念ながらあの充填の仕方だと、俺達にそこまでの時間はない。
待ってたら閃光で焼き尽くされるのがオチだ。
もしあの球体が魔術を放てるようにしている装置≠セとしたなら、あれを何とか理事長から引き外すか壊せれば、おそらく無力化できるだろう。
ただ、問題はどうやってあの高さをクリアするか……。
雨「何とかあの球だけでも叩き落とせれば……」
狐「でもあの高さはさすがに跳躍力が足りひんやろ…しかも物理攻撃効かへんし…」
真「待って、あの高さなら頑張れば僕届くかも……」
俺が呟き、狐はぎりりと奥歯を強くかみしめながら、点滅し続ける球体を見上げる。
……は?
待ってくれ真、今なんて言った?
真「いや、だから、あれくらいだったら脚力で何とかできるかなって」
……そうだった、俺としたことが忘れていた。
真は人間の中でも月光の民≠チていう特殊な種族で、魔力を持ってるだけじゃなくて脚力も強いんだった。
……それなら……。
雨「真、理事長の背後から気配を消して飛んで、あの球体だけ壊すことはできるか?」
真「うーん、あの球体がどれだけ固いかがわからないから完全には壊せないかもしれないけど、蹴り飛ばす程度ならできると思うよ。でも結界が邪魔だな……。」
雨「わかってる、結界は恐らく反物理結界だろうから……冷音。」
冷「……わかった、魔術で壊すんだね。」
流石に冷音は理解が早い。
頷いてすぐに詠唱に入ってくれた。
もしかしたら結界についても察していたかもしれないな……。
雪「あの!!思ったんですけど!!」
小雪が手を上げる。
何だ、どうした。
雪「あの球体の感じ!私のお義母さんたちが変容した時と似た感じがするからその、理事長もなんかの力、たとえばあの球体の力で操られてる可能性はないですかね!」
……そうか、それは考えてなかったな……。
だとすればあの球体を破壊したら、理事長から事情が訊けるかもしれない。
変容……といえば変容してるしな、主に服とか性格とか。
狐「小雪んとこで何があったかは後々訊くとして、だとしたら
一遍殴ったったら目ェ覚ますんやない?というより、真が球蹴り飛ばしたとして、取り押さえる役が必要やろ。暴れ出したら大変やん。」
狐の言うことも一理あるかもしれない。
球を引きはがして、それですぐに取り返されでもしたら、苦労が水の泡だ。
狐「せやろ?やからその役はオレが貰うわ。」
拳を自分の手のひらに軽く当てる狐。
……任せて大丈夫か?
狐「このメンツの中で出来そうなんオレか真か時雨しかおらんやん。真は役が決まっとるし、時雨はどうせ、真があの球を壊せなかった時のフォローとかするつもりなんやろ?
ならこれは手隙のオレの役目や。」
そう言って理事長を見てまっすぐに立つ狐。
しかし真が失敗した時のことを想定してる辺りまでお見通しとは、流石に御見逸れしたと言ったところか。
雨「……わかった、なら任せるが、くれぐれも無理はするなよ。」
狐「無理無茶はそっちの専売特許やろが。」
狐が笑う。
…ま、それもそうか。
俺も理事長に向き直る。
今のところ冷音を中心として、桃花やあいすも魔術で応戦して結界を削っているが、結界には罅が入ったくらいのレベルであり、破るには至っていない。
……一応そのおかげで充填時間は伸びているみたいだが…思ったより硬いな。
だったらこうしよう。
雨「真と狐はかかるタイミングを計れ。それ以外は今覚えてる中でもなるべく弾数の多い魔術で結界が壊れるまで攻撃し続けろ。結界が壊れたら、真は球体を蹴り飛ばせ。壊せなかったら俺の方に転がしてくれればいい。狐はとりあえず殴って理事長を取り押さえてくれ。」
俺がそう号令をかけると、全員から返事が返って来るのが聞こえた。
……反撃開始だ。
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