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* * *
子供達を牢屋の出口まで見送り、今は少しほっとしている。
出口付近は妨害電波のようなものは無いようで、外と連絡が繋がった。
狐とまだ一緒にいるであろう真に連絡し、二人には子供達の護衛を頼んだ。
……まぁ、俺達がついていけばよかったような気がするんだが、そう言いそうなあいすがなにも言わず手を振っている訳だから、多分他にやりたいことがあるんだろう。
氷「さて、殴りにいきましょうか。」
案の定、あいすからは突拍子もない発言が飛び出した。
……いったい誰を殴りに行く気だよ。
氷「こんなことをした人に決まっているわ。罰は受けるべきだと思うの。」
まぁ確かに罰を受けるべきだとは思うが……。
あいす……、それは女子としてどうなんだ……。
いくら男嫌いで相手が完全に悪かったとしても、していいことには限度があるからな?
桃花がここにいたなら、確実に止めてるだろうし。
氷「あら、何を言っているの?こんなことをした人の肩を持つ気かしら。」
雨「……そうは言ってねぇよ。つかこんなことしたやつの肩なんて誰が持つか。やめろ、不愉快だ。」
氷「あら、ごめんなさい。でもね、一発殴って差し上げなきゃ気が済まないの。大体、治安部隊の管轄である刑務所をあの黒い人たちに引き渡した挙句、私の弟を投獄するなんて、言語道断だわ。」
俺の投獄に関してはノーコメントとさせていただきたいところだが……確かに俺も刑務所をああいう輩に引き渡したその事実については問い質したいな。
殴るというその選択肢については……はぁ……、まぁ、そっちの方が手っ取り早いから、いいか。
冷音もおろおろしながらそれを聞いているが、止めてくる様子はなさそうだ。
氷「それじゃ、司令官室に乗り込みましょ。」
あいすは笑顔で言い、そのテンションのまま刑務所本部へと乗り込んでいく。
仕方がない、と半ば呆れ気味に、俺と冷音も続いた。
* * *
刑務所本部は広く、更に魔王軍の鎧を着た暑苦しい連中が大量にいた。
あいすはそれを気にも止めず、時に掛かってくる黒騎士をぶっ飛ばしながら道を突っ切っていく。
しかしまぁ、中身が魔物なやつだけなのが幸いしたな。
いくら司令官を殴りに来たからといっても、なるべくなら人は斬りたくない。
というか俺の場合は、赤々とした血を見たくないだけなのかもしれないが。
生来(と言っても幼少の記憶はあやふやなのでいつからかはわからないが)、俺は血液という物が苦手だ。
今はそんなに、それこそパニックとかにはならないくらいまで落ち着いたが、初等部の頃は友人が転んで血を出したくらいでも思考が停止していた。
周囲曰く、顔色もかなり悪くなるらしい。
まさに血の気が引く、とでもいうべきだろうか。
まあ、誰だって無理な物を見れば大体そうなるだろう。
だけどそうなった原因については、正直覚えていない。
思い出そうとすると、決まって酷い頭痛がするんだ。
それを、あいすにそれとなく話してみると、「無理に思い出さなくていい」と言われてしまった。
……何かあったんだろうか。どうしても思い出せない。
兵5「ここは関係者以外立ち入リ禁止だ!!早々に立ち去れィ!!」
そんな感じに、俺だけ少々もやもやしながら歩いていると、前方に一人……いや、一匹の黒騎士が立ち塞がった。
黒い鎧から魚のような尻尾が出ている。
……あれは……隠しているつもりなのか……?
氷「あら、見つかってしまったわね。」
あいすが楽しそうに言うが、そんな場合ではない。
そもそもの話、道中でもう何人も黒騎士っぽい奴等を何匹も薙ぎ倒しているんだから、見つかるも何もない気もする。
というか、見つかってるからこそ薙ぎ倒しているとも言えるしな。
兵5「この先は司令官室……。如何なる者でも通すわけにはいカーん!!」
甲高い濁声で、立ちふさがった魚類系っぽい黒騎士が言う。
まるで酒焼けした喉でヘリウムガスでも吸ったかのような、特徴のありすぎる声だ。
雑音と言ってもいい。
酷い言い方をするなら、「汚い声」という表現がぴったり当てはまる。
雨「……へぇ……、この奥が司令官室なのか。」
ともかく、奴が言った情報に関してはかなり有益だろう。
俺は少し感心したように頷き、その魚類に近づいていく。
兵5「いかにモ!!この先が我等がラザフォード兵長が居らレる司令官しt……ってキサマ!!何故知っていル!!!?」
奴は鉄仮面の奥の目を驚きのあまり見開いているような様子だ。
いや……自分で言ったんだろうが、というツッコミはしない方がいいだろうか。
というより、極力会話したくないだけなんだが。
兵5「まぁイい。通さなければ良いのだからn!?」
俺はそいつが武器を振り上げて、その台詞をいい終える前に、空溜刃を放って黙らせた。
ガランガランと、奴は仰向けに倒れる。
雨「情報漏洩お疲れさん。」
まぁ、乖離しかけているそいつにはもう聴こえていないだろうが、とりあえずそう呟いておいた。
冷「……。」
冷音がその黒騎士に若干憐れみの視線を向けている。
流石に扱いが悪すぎただろうか?
まあ、襲い来る魔物を相手に加減をする必要はないだろう。
友好的に話しかけて来るやつでもいればまた別かもしれんが……。
…いや、魔物に友好的な奴なんているんだろうか?
もんすたーずとか言う枠があるんだから、いる可能性もあるのだろうか?
会ったことはないからわからんが。
……しかし、司令室だっていうのに、何故こんなに弱い魔物を配置してるんだろう。
まあいいか、ともかく先へ進もう。
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