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−3日後−
俺達が刑務所から戻ってきて三日が経った。
だが俺の頭からはあの書類の事が離れない。
あの書類があそこにあったと言うことは、少なくとも魔王軍のどこかの部隊でサージュが造られていると言うことになる。
俺達がまだ幼い頃に起きた、ルミナス王国とどこぞの国との開国戦争や、「人類史史上最も愚かな戦争」なんて呼ばれてる覇帝戦争も、それはそれは腐敗していたらしいが……今の時代に戦争が起きたりでもしたら、あの技術はどう足掻いても何処かで使用されるだろう。
お陰で戦火は更に勢いを増し、犠牲者が増えるのではなかろうか。
覇帝戦争なんかは、俺が生まれていない1500年位前の話だし、授業や自分で調べたこと以外の知識はないが…、まぁ数千万人単位の死者数を叩き出したような兵器が大量に存在したらしいし、フォルトの消費量だって馬鹿にならなくて、枯渇寸前になった事を理由に休戦したようなものだったから、そう考えたら技術が進歩してる今の方がまだ……いや、そもそも、人に輝石を埋め込んでを兵器にするなんて言うのがまずありえないんだが…。
…って、何でただの中三である俺がこんな事で頭を悩ませなきゃならないんだ……。
いっそのこと読まなきゃよかったかもしれない…。
いや、でも読まなきゃ冷音の事情はずっとわからないままだったろうし…。
…とりあえず、この話はまた今度考えることにしよう…。
流石に頭が痛すぎる。
あぁ、因みに、魔王軍はまだこのゴールドグレードを占拠している。
その割にはこれといった事件も無く、レクライアは秋休み中である上、職員棟以外の建物が全て全壊しているため、部活も無い。
普段ならば3週間程度の秋休みが、二ヶ月くらいには延びそうなほどのぶっ壊れ具合だった上、昨日あたりに、「長期臨時休校につき自主学習」とかいうメールがエクタムに届いていたくらいだから、もしかしなくても冬まで休みだろう。
……しかし三日間こうも何もないと、魔王軍が駐在していることも、三日前に牢屋へぶちこまれたことも、全て嘘のように思えてしまう。
……ま、平和が一番なんだが。
……一つおかしな事と言えば、家から出てはいけないと言われていることか。
これはうちだけの事情なんだが……。
三日前、件の刑務所から帰ってきた夜に、突然電話が鳴ったから誰かと思えば、聴こえてきたのは親父の能天気な声だった事を覚えている。
因みに親父とお袋は二人揃ってどっかにバカンスらしい。
……バカンスと言っても、大体は通商会議のついでだとか、そんな感じではあるんだが……。
今回も例に漏れずそんな様子で、電話での外出禁止令もその流れでの事だった。
人に出るなといっておいて自分達は旅行とかマジで何なんだ、アホなのかとも思うが、いつもの事だからもはやあまり気にも障らない。
もういちいち苛ついてたらきりがないからな…。
…それと。
刑務所から自宅へ帰ってきた辺りのタイミングで、レクライアで同室の友人から、血相を変えた様子の電話が入ったのは一番驚いたかもしれない。
…まぁ理由としては、あいすが俺を助けに刑務所へ乗り込む前、そのルームメイトに「時雨から連絡が帰ってこない、電話しても圏外になる」という旨のメールを送信していたらしく、結果として彼もその日まる一日やきもきして過ごしたという感じだった。
勿論俺のエクタムには、彼からの電話やメールの通知がかなり入っていたのだが、牢を抜け出して刑務所に乗り込み、そこから帰るまでの間に一度もエクタムを見なかったので、俺が通知に気がつくことはなかった。
…この点に関しては少し申し訳なくは思っている。
基本サイレントにしてるからな…。
まぁそれは置いておいて、彼は何やら仕事が忙しいとかでこっちには来られないが、あまり無茶をするなよ、と俺に釘を刺して電話を切った。
一応無茶はしてないけどな…今のところ。
…いや…理事長と戦うことになったあれは、一応無茶に入るんだろうか…?
…話が逸れたが、ともかく俺は今、先程言ったような理由により、外出禁止令真っ只中である。
……元々其処までアウトドアな性格でもないので、別に家にいること自体は苦じゃないんだが……暇潰し用に視聴しているテレビや、日課のように読んでいる新聞の内容と言えば、毎日魔王の話題ばかり。
特に新聞は、魔王一面トップから始まり、魔王で終わる。
つまり全てのページが魔王で埋め尽くされている。
全く…魔王の大売り出しか?五年前は二ヶ月に一回のペースだったはずだ。
毎日毎日毎日…魔王魔王魔王魔王……正直見飽きた。
正直言って、魔王そのもの自体をあんまり好いていない俺的には、とてつもなく苛つくものである。
どうしてここまで魔王が嫌いになったのかとか、そういうのは実は覚えていないんだが……まぁ、嫌いなことに変わりはない。
そもそも新聞社もいい加減しつけぇんだよ、他のネタを探せよ!!…と思わんでもない。
それ以外ネタが無いのかとも思ったが、そんな時にネタを探すのもまた新聞記者の仕事だろう。
その結果ゴシップまみれになったら、それはそれで嫌かもしれないが…。
ドンドン!!
暖炉に新聞を焼べたい衝動に駆られていると、不意に、玄関の扉を乱暴に叩く音がした。
氷「はーい。」
目の前で本を読んでいたあいすが慌てて扉を開けると、ひーとが半ば転がるようにして飛び込んできた。
炎「た、助けてっ!!」
俺は慌てた様子なひーとの第一声に疑問を持った。
……助けて?どういう事だ……?
雨「……何かあったのか?」
炎「魔王軍の、人に、追い掛けられたんだ……。ゲホッ……ゴホッ……。」
ひーとは全力疾走してきた様で息を切らし、咳を込んでいた。
……あいつら……またガキを拐ってまわってんのか……?
どのみちこんなんじゃ、ひーとから情報は得られそうにないな。
落ち着くまで待つか。
氷「大丈夫?飲めるかしら。」
あいすはキッチンから水を持ってくるとひーとに手渡した。
ひーとは受けとるなりそれを一気飲みし、息を整えた。
雨「落ち着いたか?」
炎「……う、うん……。」
彼はまだ、多少息を切らしながらも頷いた。
氷「ところで……何故魔王軍に追いかけられていたの?」
あいすはいかにも優しげな口調で訊いた。
炎「うん。ボクにもよくわかんないんだ。いきなり家に来て、ボクを掴まえようとしたもんだからさー……。」
ひーと……お前には緊張感と言うものはないのか?
いくら安心したとはいえ気を抜くなよ……。
俺は無意識のうちにひーとへ疑いの視線を向けていたらしい。
炎「あーっ!!その目は信じて無いなぁ?」
氷「しっ。静かにして。……外が騒がしいわ。」
…確かに、鎧が歩いてる音がする。
とりあえず、玄関側のカーテンを少しだけ開き、そこから外を覗いてみた。
すると、黒い鎧を着た奴らがズラリと並んでいた。
まさに勢揃いって感じで。
炎「ほらぁー。言ったじゃん。」
一緒に覗いていたひーとが声を潜めて言った。
こりゃ一刻も早くここを出た方が良さそうだな。
氷「時雨、裏には黒騎士が居なかったわ。裏から出ましょう?」
いつの間に確認してきたのか、あいすが裏口辺りから戻ってきて言った。
俺たちはとりあえず、あいすの提案に賛成した。
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