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−戻って来れば…。−

俺達は、音の聞こえた高台を目指し、街の中央に位置している、広場の辺りまで戻ってきた。
……冷音の家の裏手で、何やら黒騎士の集団が、何かでかい機械らしき物を二つ、狭い道端に置いて、冷音の家に向かって何か叫んでいる。

炎「何やってんのかな。」

ひーとが声のボリュームを落としながら訊いてきた。

雨「……さぁ、何だろうな。」

しかし俺に訊かれても困る。あいつらの考えが読めたら、それはそれでまた別の作戦に転用しているところだが、正直俺にはそういう能力はないので無理だ。
なのでとりあえず、ギリギリまで近付いて、様子を見てみることにした。

兵1「この家にサージュが数人いることは解っている!!速やかに一番力の強いサージュを引き渡せ!!差もなくばお前たちの住む場所がなくなるぞ!!」

メガホンを持った黒騎士が叫んだ。
どうやら俺達の方から見て手前に置いてある機械は、何らかの方法で家を消し飛ばす物らしい。
……文字が書いてあるな……火炎放射機……!?
あいつら……此処等一帯を焼き払うつもりか?
つか、サージュ引き渡せって、なんつー言い分なんだよ。

狐「……なぁ、ノメしに行ってエエかなぁ?」

……気持ちは分かるが落ち着け狐。
しかしまあ、メガホンで呼びかけているその声はとてつもなく耳障りだ。
ただ今飛び出していったとしても、その装置を何とかできるかどうかって言うのは微妙な所だ。

兵2「小隊長!!サージュ探知装置に反応が!!」

奥に置いてある機械を操作していた黒騎士が、メガホン持った黒騎士に言った。
声が高かったから、どうやら女性の様だ。

兵1「なにっ!!どこからだ!!」

その様子から、手元の端末で場所を見ているらしかった。
……待てよ……、サージュを探知できる機械……?まさか、気付かれたか……?

兵2「上からです!!」

上?そう疑問に思った次の瞬間、探知装置と、その両サイドにいた騎士の足元から、氷柱が現れ、倒してしまう。
どうやら俺達ではなかったようだ。

兵1「なっ……、何処だ!!姿を現せ化け物っ!!」

小隊長とやらが叫んだ。
しかし……化け物……ねぇ。
あんたらの方がよっぽど化け物だと思うんだが。
そこへ、涼しげな声と共に一人の見覚えのある少年が、塀の上に降りてきた。

冷「……ここだよ。」

その声は冷たく、静かに怒っているような様子だった。
彼……冷音は、臨戦態勢に入っている様で、宙に5cm程浮いた術式の上に立っている。

兵3「なっ……こおりのサージュ…ガハッ!!」

小隊長に一番位置が近い騎士が言い終わる前に、冷音の鎖鎌が煌めき、ギンッ!!と言う鈍い音がして倒れた。
残された兵三人+小隊長は、武器こそ抜いてはいるものの、逃げ腰でガタガタ震えている。

兵1「貴様っ!!この化け物が……!!」

ガタガタ震えながらも悪態をつく小隊長。
……つか、化け物化け物うっせぇな…。
というよりも、さっきも言ったがそういうあんたらはどうなるんだよ、魔物なんだったらあんた等のがよっぽど……ちょっと待てよ?
魔物だと思ってたけど、まさかあれ人間か?

狐「……もう我慢ならん……、助太刀するで!!」

狐がキレた。
そりゃあんだけ悪態つかれりゃ、誰だって頭に血が上る。
俺も結構危なかったしな……。
というか狐の奴、人間だって気付いてればいいんだが……。
物陰から逸早く飛び出して行った狐に続き、ひーと、あいす、心做しか目付きが悪くなっている真、桃花、俺の順で物陰から出て、冷音と騎士共の間に立ち塞がる。
冷音がそんな俺達を見て目を丸くした。

狐「そこのワレェ!!化け物化け物って何騒いどんよ!!オレらは人やで!!」

兵1「ガキは黙れ!!」

……この小隊長とか言うやつ、人の言ってることに聞く耳を全く持たない。
いや、聞く耳を持つという常識が欠如してんのか。
はぁ……馬鹿な大人が増えたもんだな。

氷「あら、そのガキとか言うのは、誰を指して言っているのかしら。」

黒い笑みを浮かべながら"ふふふっ"とあいすは笑った。
だが、今のこちらを馬鹿にしたような「ガキ発言」は俺もイラッとした。
さっきからじわじわ地味に頭痛がしているせいもありそうだが…もうそろそろ堪忍袋の緒が切れそうだ。

兵1「が、ガキをガキと言って何が悪いんだ……!!!」

雨「……はぁ……とりあえず一遍黙ってくんねぇか。」

小隊長が何か耳障りな事を言い終える前に、結局俺の堪忍袋の緒は切れた。
刀をしたから上に振り上げて、空溜刃を食らわせる。小隊長が後ろに倒れた。

それが合図だったのかはよくわからないが、他三人の騎士は奇声を上げ、こちらに死に物狂いで襲い掛かってきた。
なるほど、他の奴等は魔物か。

真「飛衝閃ヒショウセン。」

一人を迎え撃ったのは真。
手に持った五枚の札が黄色い光を帯び横に三日月型を描いて飛んでいく。

狐「やるなぁ真、負けてられへん!!天拳振倒テンケンシントウ!!!」

そう言いながら勢いよく迎え撃ったのは狐。
朱色の光を帯びた強烈なアッパーを真とは別の敵に浴びせる。

さて残りは一人。
今度は後方で待機していた桃花の地術が敵を貫く。

桃「貫くは地の憤り……。グレイヴ!!」

瞬時にして地面が盛り上がり、その鋭利な部分が黒騎士を貫いた。

狐「ふぅ、終わり終わりっ!!」

狐が腕で汗を拭いながら言った。
つかすごくいい笑顔されても困るんだが。
……しかし頭が痛てぇ……。
ビスカス助けたときからずっとだ……。

氷「時雨?大丈夫?」

氷に気付かれた。
なるべく隠してたつもりだったんだがな……。

雨「あ?あぁ……。」

氷「……気の無い返事をしないで。」

……そんなに気の無い返事だったろうか……。

狐「さて、次は小雪んとこやな。」

狐が伸びをした。
爆発音も気になるし、そろそろ行くか……。

雨「そういう訳だが、一緒に来るか?」

冷「…うん、そうだね…行くよ。」

振り向いて冷音に問うと、彼もどうやら爆発音について気になっているらしく、コクリと頷いた。
一応、さっき空溜刃で吹っ飛ばした小隊長っぽい人も確認したが、とりあえず気絶で済ませられたようでよかった。
鎧に黒紫っぽい石が付いていて、どこか既視感を覚えたが、詳しく見ている暇もないのでその場を後にした。
……例の火炎放射器については、焔のフォルトを多く含む輝石(おそらくエネルギー源だろう)がくっついていたので抜き取っておいた。
これでとりあえず、しばらくは使えないだろう。





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