10
−教会前にて……−
高台への階段を駆け上がると、黒い大砲が三台ほど置かれているのが見えた。
その側には、ちらほら例の黒騎士も見える。
……地面に伏せている……?
……いや、……これは……。
狐「こいつら、矢が刺さっとるで!?」
狐が驚きの声をあげた。
……俺の見間違いじゃ、無かったようだ……。
黒騎士達に、何本かの矢が刺さり、俯せになる形で地面に倒れていた。
兵「おい!!お前タチ、何をしているッ!!」
こちらへ向かってくる魔物らしき黒騎士。
気付かれてしまったからには仕方ない。
各々が空中から武器を出そうとしたその時。
ヒュン!!
突如として敵後方から放たれた弓矢が、黒騎士の背中に突き刺さった。
その場にドサリと倒れ込む黒騎士。
他に黒騎士は……いないな。
どうやら最後の一人だったらしい。
雪「時雨さぁーん!!」
教会の鐘がある部分から、小雪が大きく手を振った。
命中率に関しては、流石は元弓道部。
そうこう考えてるうちに、小雪が降りてくる。
雪「どーして……ここに……?」
彼女は、大層息を切らしながら聞いてきた。
炎「あのね、黒騎士さんから逃げながら、真の家の方に行ったら、この高台の方から、ドオーンって大きい音がして、ビックリして急いで来たんだよ!!」
それに答えたひーとは、ものすごい勢いで捲し立てた。
雪「あー、多分そのドーンって音は、あの黒い大砲だと思うよ。家に向けて発砲しやがったから、デルタで跳ね返してやったんよ。」
……デルタ、もしかしてデルタ結界の事だろうか。
俺の記憶が正しければ、三角の形をしていて、紙に描かれた術式で呼び出せるやつだ。正式な魔術名はデルタスクード。
なるほど、確かに教会の周囲にはうっすらと薄黄色い光の幕のようなものが見える。
そういえば小雪は回復系統と、結界系統の術が得意だったな。
ちなみにデルタ結界……通称デルタは、その名の通り結界系統の術だ。
ランクは大体中級レベル。
強度は砲弾をしのげるレベルではあるが、守護範囲の問題からこのようなランクが付いていたと記憶している。
結界の範囲的には、今のように教会一軒を守れる程度か。
「お前達、ここで何をしている。」
ふと、声が聞こえてきた。
振り返ると、見た事のあるやけに鎧のゴツい男が、結構な数の黒騎士を後ろに連れて立っていた。
氷「……誰かしら、あれは?」
あいすが警戒した様子でこちらに問う。
…なぜ俺に聞く……。
…まぁ牢に連れて行かれる前に会ってる手前、知ってるといえば知ってるんだが…何だったか……。
ああ、そうだ、確か……
雨「……、……ラザフォード……だったか?」
ラザ「ほう……、お前は確か、水森財閥現総帥子息の、水森 時雨だったな。」
ニヤリと笑みを浮かべるラザフォード。
つか、何でこいつがそんな事知ってんだ……。
氷「何故貴方がそんな事を知っているのかしら?」
あいすも同じことを疑問に思っていたようで、訝しげに聞いた。
ラザ「この街を制圧する際、この町の住人について洗い浚い調べさせて貰った。」
ぺラりと紙を一枚取り出したラザフォード。
……けっ……、ご丁寧かつ仕事熱心なこった……。
ラザ「どうやら、こそこそ動き回っている能力者(サージュ)共と言うのは、お前達の事のようだな。」
雨「……へぇ。こそこそ……ね。」
こそこそはしてねぇ気がするけどな。
いや……、逃げ回ってたんだったらこそこそとは言うか……?
炎「で、……ラザフォード……、だっけ?ボクたちに何の用なわけ?」
ひーとは、そう言いながら相手に指を差した。
ラザ「……ふん、お前達には到底関係の無いことだが、まあいいだろう。魔王様がそいつをご所望でな。是非こちら側へ迎えたい、と。」
ラザフォードは、顎で俺の事を示した。
……って……は?
……何故俺?
そもそも前に断った筈なんだが?
ラザ「お前の風を操る力は珍しいと陛下が言っていた。その上、我が精鋭を倒してきたのならば、剣の腕も立つだろう。不利益になる理由がない。」
雨「お断りだっつったろが。」
雪「そーよ。時雨さんがあんた等ん所行くわけ無いでしょ!?」
俺が睨み付けると、小雪が便乗して続いた。
ラザ「そうか。ならば此方にも手がある。」
ラザフォードがそう言うと、後ろの黒騎士がザッと音をたてて前に進み出た。
……ちっ、一気に襲ってきやがった。
一人一人相手にするのは流石に面倒臭い。
とりあえず、襲い掛かってきた黒騎士達を、出した刀ですれ違い様に斬り付け、計五人程をまとめて倒した。
……って、こいつら弱っ……。
雪「時雨さん強ーい!!今の見えなかったぁ〜!!」
騒いでないで戦え小雪…!!
氷「地の底より湧き出でし水よ、彼の者の上空より降り注げ。スプラッシュ!!」
後方から聞こえてきたのは、あいすの詠唱。
黒騎士の上から、大量の水が降り注いでくる。
それに続いたのは狐。珍しく術の詠唱をした。
狐「空をたゆたう星光よ、その光で彼の者達を殲滅せよ!!スターライト!!」
降り注いだのはオレンジ色の光。
その光線は、地面を軽く焦がす程には威力があるようで、光線をもろに受けた黒騎士達がバタバタと倒れていった。
スターライトは星属性魔術の初級術だったはずだ。
レクライア学園の周りの魔物ですら、もう数発は耐えるぞ…。
そうなるとこいつらは、あの魔物達よりも弱いということになる。
そうこう軽く驚いているうちに、周りの黒騎士の大半がやられ、残った黒騎士達も、武器を捨てて散々になって逃げていった。
残されたのはラザフォードのみ。
狐が逃げた黒騎士達を追おうと動いたが、止めた。
ラザフォードが何処か自信のある笑みを浮かべながら前へ進み出たからだ。
黒いマントをはためかせ、いやに口角を上げると、奴は大斧を構えた。
- 28 -
*前次#
ページ:
[表紙へ]
[Ancient sage topへ]
[別館topへ]