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* * *
ラザ「よもやここまで強いとはな……。」
ラザフォードが、表情を険しくした。
まぁ、当たり前か。
大打撃、だもんな。
狐「あんさん、威厳無いんとちゃう?味方逃げてもうたで?」
狐は半笑いだ。
確かに、威厳は無さげだな。
それとも、逃げた方が楽だったのか。
炎「子供だからって、甘く見ない方がいいよ!!」
そう言いながら、ひーとが
飛焔蓮拳の構えをとる。
ラザ「……いいだろう、私が相手をしてやる。さぁ、まとめて掛かってこい。」
ラザフォードは少し愉快そうに言うと、大きな斧を空中から取り出した。
炎「じゃあお言葉に甘えてっ!!」
ひーとが
飛焔蓮拳を仕掛けにいった。
ひーとは、パーティーで一二を争う素早さだ。
掴まえるのは至難の技……の筈だった。
ひーとのトンファーが赤い焔を纏って、ゴウッと唸った。
しかし……。
ラザ「ほう、焔術士か……、甘いっ!!」
炎「っ!?」
ひーとは、ラザフォードの持つ大斧で、10m程撥ね飛ばされてしまった。
ドンッと鈍い音をたてて地面に叩きつけられ、ひーとは動かない。
「「「!!!」」」
狐「っ!!ワレェ!!」
全員が驚愕する中、狐が怒りの声をあげ、小雪がひーとに駆け寄り回復術の詠唱に集中した。
狐は、今にも殴りかかりそうだったが、あいすがそれを制した。
氷「狐ちゃん。ひーとの二の舞になるわ。」
静かな声だった。
あいすはどうやら、相手の方が力が上と判断したようだ。
ラザ「ははは、すまんな。力の加減がまだ慣れんのだ。」
嘲笑うラザフォード。
その右手甲には黒紫色の輝石がはまっており、黒なのか、紫なのか判らないような光を出していた。
多分、さっき見た黒騎士の鎧にも付いていた奴だな……。
それが彼の言う力≠フ源らしく、その手に持った大斧には、その光が移って禍々しく輝いていた。
…あの光り方、どっかで見たことあるな。
……そうだ、学園で理事長の持ってたあの宝玉。
あれがちょうどあんな感じの光り方をしていたような気がする。
……おかしいな、理事長の時はあの黒いの見てもそうでもなかったのに、頭痛が、酷くなってきたような気がする。
……ひどい耳鳴りがする。
ラザ「……率いてきた兵が逃げるとは誤算だった。だがこの力と魔王様の加護がある私には、この身一つあれば十分なのだよ。しかしまあ、この程度で倒れる者など、虫けらも同然よ。所詮は弱き者、強大な力の前には無力なのだから。」
耳鳴りの遠くで、此方を、ひーとを馬鹿にしたような態度を崩さないまま、大斧を振りかざす奴の声が聞こえる。
ひーとはまだ起き上がらない。
それを確認し、相手の言葉を聞いて、俺の中で何かが切れたような気がした。
……しかし虫けら?虫けらだって?
強大な力だか何だか知らないが、こっちの身内を吹っ飛ばしておいて優越に浸るとはいい度胸じゃねぇか。
確かに実力違いの相手に挑んだひーとも少しは悪いかもしれないが、あちらは殆ど無断で街を占拠しているようなものだし、その上こちらを馬鹿にするなど言語道断。
騎士はそういう者じゃない……いや、奴らは騎士ではないのかもしれない。
……最早誇りもない、ただの逆賊と変わりないのだろう。
ラザ「さあ、次にかかってくるのは誰だ?
無論、一撃で捻り潰してやろう。その焔術士のようにな!」
ラザフォードはそう言って五月蠅く笑う。
そこに耐え切れなくなったらしい狐が飛び掛かるが躱され、跳ね飛ばされて着地する。
あいすの回復術が狐に掛かり、狐がもう一度飛びかかる。
援護するように桃花の地術から放たれた三つの岩石が飛び、さらに真の放ったお札も飛んでいくが、この二撃は本来大斧では不可能な速さと力によって真二つに防がれ、飛びかかった狐には斧を持っていない方の拳が繰り出される。
すんでのところで躱して身をひるがえし、狐は体制を整えた。
狐「くっそ!!馬鹿みたいな力しとる!!」
悔しげにグッと睨む狐をよそに、ラザフォードはこちらを見た。
ラザ「ふん、掛かってこないのか?水森 時雨よ。…それとも…この強さを前にして怖気づいたか?」
雨「……」
こいつの今の言動、この傲慢さは、吐き気がするほど嫌いなタイプだ。
……潰してやりたい。
そう思うのが早いか遅いかで、俺は刀を持ったまま、一歩、また一歩と奴に近づいていく。
真「し、時雨?」
真が心配そうにこちらを見つめてくる。
だが、この時の俺に、それを気にするだけの余裕はなかった。
雨「……あんた……生きて帰れると思うなよ……」
……怒り狂っていたため、俺はこの時自分がどうなっているのか分からなかった。
これは、回復を受け、やっとの事で立ち上がったひーとから後に聞いたことだが、身体の背後に、風のフォルトと思わしき光が密集し、瞳の色は紅く染まっていたらしい。
…紅くなるのは昔からだ。
…何故かは知らないが。
…そして、気が付いたときには、ラザフォードは地面に膝をつき、俺は奴に剣先を突き付けていた。
その間の記憶はほとんどないが、奴を捻り潰したいほど頭に来ていたのは覚えている。
……そして、一発目に聴こえてきたのがこの会話。
"……引け……ラザフォード……"
低く曇った声。
聞いたことのある声だったが、思い出そうとすると、気分が悪くなった。
"で、ですが……"
こちらは、先程まで戦っていた男の声。
どうやらこの二人が会話しているらしかった。
"……いいから引け……"
不機嫌そうにラザフォードとは別の男が言った。
"ぎ、御意に……。"
そして、二人の会話は終わった。
ラ「……ふん、魔王様が引けと仰った。……命拾いをしたな。」
ラザフォードはそう言って踵を返した。
そうか、あれが魔王だったのか……。
……そう思った直後、視界がぐらりと歪んだ。
……っ……頭痛てぇ……。
その頭痛と共に、映像がいくつか流れた。
黒く暗い部屋。
蝋燭の焔。
黒紫色に輝く輝石。
黒い、聖職者のような服の男。
紫色の玉座。
白く長い髪に、紫色の化粧をした男。
しかし、その映像たちに見覚えはなかった。
そして、またも聴こえてきた男の声。
"我々の声を盗み聞きとは…どうやら我が因子を持つ者らしい……いつかお前の中のそれを我が物にしてやろう……。……楽しみにしていろ……"
不穏なことを言い、男の高笑いが遠ざかっていく。
それが聞こえなくなってから、頭痛も収まった。
氷「……時雨……?……大丈夫?」
気が付くと、あいすが珍しく心配そうに、俺を覗き込んでいた。
雨「……あぁ。」
何故だかは分からなかったが、あいすの目を見たくなかった。
その結果、俺は目をそらす。
そんな反応を見て、あいすは不安そうな表情をした。
……悪いことしたな……。
けど、きっとこの話はしたところでわかってはもらえないし解決しないだろう。
炎「時雨!!かっこよかったよ!!」
横からひーとが突進してきた。
びっくりしたわ……いきなり現れんな、ひーと。
つか、もう大丈夫なのか?
炎「うん!!小雪のお陰でね!!」
"えへへ。"と無邪気に笑うひーと。
……ったく……。
……まぁ、大丈夫ならいいか。
ラザフォードが居なくなると、倒れていた黒騎士たちも気が付けば回収されていたようで、高台は静けさを取り戻した。
……さて……色々と気になることも多いが……一度家に帰るかな……。
ここじゃあ、考え事も捗らないしな。
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