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−氷を統べる精霊−

仮面をした男……シュペリとの戦闘後、流氷島を探索し始めて、俺達は三度目の氷山にぶつかった。
いや、氷山っていうのは問題と言う意味の比喩で、目の前には普通のこおりの壁が立ちふさがっている。

炎「また行き止まり!?」

ひーとが音を上げた。
三度目まで持っただけまだいい方か。
しかしそう言われても、地図に道が載っていない上に、方位磁石も利かない。
迷うのは当たり前だ。

冷「ここはもしかして……」

俺達のちょうど後ろにいた冷音が、こおりの壁を見てつぶやいた。
何か知っているようだ。

氷「何か知っているの?」

冷「……うん……多分、この先が精霊の間……。」

なんでそんなことがわかるんだ……?

冷「……えっと……その……友達……っていうか……」

炎「冷音精霊様とお友達なの!?すごいね!!」

冷音の言葉を聞いて目を丸くするひーと。
しかししどろもどろだった気がするのは気のせいではなさそうだ。
……なんかあるんだろうな……。

冷「……もしかしたら、元の場所に帰してくれるかも……開けてもらえるように頼んでみるから、ちょっと、退いて?」

彼は一歩前に歩み出て言った。
……帰る交渉をしてくれるのは嬉しいが……何をする気だ?

そう疑問符を浮かべていると、冷音は目の前に聳え立つこおりの壁に手をかざした。
そして数秒したのち、瞬時にしてこおりの壁に浮かび上がる、紋章のようなもの。
そこから蒼い光が溢れる。
そして、目を開く頃には、目の前にあったこおりの壁は消え、一本の狭い道が現れていた。

……なるほど、不審者対策用のカモフラージュってところか……。

冷「……開けてもらえたよ、入っていいって。」

冷音が振り向いた。
どうやら許可をもらえたらしい。
しかし冷音はどうやって精霊と知り合ったんだ……?

炎「時雨ー!早く行こうよ〜!」

…おっと…置いて行かれちまう…。
さっさと先に進もう、考えるのはまた今度だ。

   * * *

?「よく来たね。」

氷山の間を通り抜けると、こおりの壁に囲まれた部屋に辿り着いた。

奥には透き通った玉座があり、その上には、俺より少し若いように見える少年が、一人座っていた。
薄氷色の髪は毛先のみ白い。
瞳の色は、ディープブルーと言ったところか。
こいつが精霊……?

?「僕はフリーズ・ソフトライム。ここを守るこおりの精霊さ。以後お見知りおきを。」

玉座から立ち上がり、こちらへ歩いてくるそいつ。
ずいぶんフレンドリーなんだな、精霊って。
というかソフトライムだと……?
何かこの国と関係があるのか……?
いや、ソフトライム王家の方が肖った可能性もあるのか……?

フ「初々しい反応ありがとう。名乗るなんてのは普通だよ。」

そう言って、こおりの精霊…フリーズ(敬省略)は満面の笑みを浮かべた。
……ちょっと待て。
こいつがここの精霊ということは、だ。
もしかすると、冷音を介して俺達を呼んだのは…。

フ「僕だよ。」

そう、こいつの可能性が……って……。

雨「あんた……人の心読めるんだな……。」

フ「一応蒼の天使の族長でもあるからねー。」

にやにやとするフリーズ。
蒼の天使……確か別名は心の天使だったか。
それなら……方法は別として、冷音を呼べた事にも納得できる。
あいつは蒼の天使の血族で、人の心や精神の状態を読むのに長けているから。
でも確か、今の親は義父だから違うとか何とか、冷音の兄が言っていた。
……そういえば……、フリーズと冷音は少し……いや物凄く似ている。
……まさか……な。

氷「……そう……貴方精霊なのね……。まさか会えるとは思っていなかったけれど……。
……少し気になることがあるのだけれど、質問してよろしいかしら……?」

唐突に、あいすが首を傾げた。
するとフリーズは、微笑みながら聞き返す。

フ「答えられることでよければ、どうぞ?」

氷「……先程、顔の半分が仮面で隠れた男の人が、時雨と冥界の鍵を狙って仕掛けてきたの。時雨が狙われるのは前の経験からして納得いくのだけど……冥界の鍵についてはよくわからなくて……。いったい冥界の鍵とは何?なぜ魔王はそれを探しているの?
それを聞かせていただきたいのだけれど。」

あいすは鋭く、そして真っ直ぐにフリーズを見つめる。
この二つは俺も気になっていたことだった。

一通り聞き終えると、彼は苦い顔をした。
どうやら質問の中に、話せないことがあったらしい。
これは良い答えは貰えそうにないか……?

フ「……魔王軍がそれらを探し回ってるのは、多分それが必要だからだろうね。冥界の鍵については……ノーコメント。」

思った通り、在り来たりな返答が返ってきた。
しかも片方はノーコメントとかいう言葉を濁す処じゃない回答だ…。
……こちらからすればなんだよそれとしか言いようがない。

フ「僕以外の"十三精霊"なら、何か知ってるかも。そうだなぁ……、時空の精霊とか、光の精霊とかね。」

十三精霊……?
それぞれの属性を司る主要精霊にか?
……俺達が会えるような人物なのだろうか……それは……。

フ「あはは、今こうして会ってるじゃない。」

……確かにその一人であるこおりの精霊には、この通り会えてしまったが……。

フ「会える機会があったら、聞いてみなよ。
……それにしても、いきなり呼び出してごめんね。
どうしても波長が合って僕の領域の近くにいたのが冷音しかいなかったから……。
ありがとう、あの男の人を追い払ってくれて。」

……完全に遊ばれたけどな……。
正直……あの男との戦闘に関しては、力不足と技量不足を感じざるを得なかった。
あの男とは……レベルが開きすぎている。
今回は退いてくれただけに過ぎないし……。
……俺自身、もっと力を付けないと……。

フ「そういえば領域内にいたけど、何処に行くつもりだったの?ソフトライム?」

雨「……俺達の今の目的地はイラファートだ……。」

少し目をそらしつつ答えると、フリーズは目を丸くした。

フ「イラファート!?
イラファートって南だよ!?何で北に!?」

雨「……みなまで聞くな。」

後ろにいるひーとが、若干申し訳なさそうな表情をしたため、この精霊の問いには答えなかった。

フ「ふーん……、何か理由があるんだね。……じゃあ送ってあげる、目的地の側まで。」

……は?

雨「ちょっと待

一歩踏み出し、彼の言葉を聞き直そうとした瞬間に、足元に巨大な術式が展開し、真っ白な光が視界に目一杯広がった。

次に視界へ入ってきたのは、赤っぽい地面、そして、少し遅れて肌に感じる暑苦しい空気。
そう、俺達はなんの心の準備もできないまま、この赤い地面に落とされるという結果に至ったのだった。

目的地まで飛ばしてくれたことには感謝しているが……寒い場所から暑い場所へいきなり飛ばしやがった……。
つかあの精霊……人の話聞けよ……。

着地直前、こおりの精霊は、
"くれぐれも北に間違えて進まないように"
と子供っぽく言い残し、去っていった。
……精霊じゃなかったら、一発叩いているところだ。

……気付けば、南の方向に、"火を守護せし国"と歌われて名高いイラファートが見えていた。

……間違えて北に行くより先に、寒暖の差で風邪引きそうだ。
さっさとイラファートに行って、宿でも取ろう……。






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