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─面倒なやつ……いや、馬鹿か。─

国王の気遣いで伝えられていたのか、闘技場の鍵は兵士が開けてくれた。
控え室には冷房があり、とても涼しかったのだが……。

   * * *

雪「何でアンタがここにいる訳!?」

小雪が吠えた。
何故なら吠えた先にいる先客こそ、小雪がいつも口喧嘩をしており、出来れば俺も会いたくなかった人物……

?「知らねェよ!!逃げ込んだらここだったんだよ!!」

レクライア学園、中~高等部の不良の代表格、荒風 龍斗。

どうやら何かから逃げているうちに、警備の頑丈そうなここに不法侵入を決め込み、先客として陣取っていたらしい。

雪「何で逃げてんの!?てか何から逃げてんのよ!!」

小雪は掴み掛からん勢いで詰め寄って龍斗に指を差し、金切り声を上げる。
少し頭に響くからやめて欲しいが、そこはごもっともな疑問だ。
しかもその割に、やけに寛いでやがったし……。
どう寛いでいたのかというと、先程まで龍斗は、何に使われているのかわからないマットの上に寝そべって、その辺に立て掛けてある、おそらく控えの拳闘士用の漫画雑誌を読んでいた。
……な?寛いでるだろ?

龍「親に雇われた傭兵だよ!!それがどうした!!」

雪「何開き直ってんのよ!!意味わかんない!!……時雨さん!ユキ、こいつと一緒に休むの嫌ですからね!!」

龍斗が何やら開き直ったように言った後、小雪は彼を睨み付け、びしりと人差し指で彼を差し、勢いよく言い放った。
そ、そんな全力で嫌がんなくてもいいだろうがよ……と、呆気にとられた龍斗がぼそりと零したが、小雪には聞こえていなかった様子だ。
だがまあ、今はまだ♂スもしていないのに、ここまで言われるのは少しかわいそうだ。

雨「……そうは言うが仕方ないだろうが……。ここで待てって言われたんだから。」

だからそう制してみたが、小雪は全く聞く耳を持たない。
俺も出来ればこんな奴と休息を共にしたくねぇよ。面倒臭せぇ。
……正直、相手するの疲れるし。
……ボケ無双だから。

龍「ところでよぉ、オマエ等は何でイラファートにいるんだ?」

……これは……こいつの性格上、旅してるって言ったらついてくるフラグじゃ……?

炎「世界を回って、いろんな所旅してるんだよ!」

うわぁ……ひーと……AKYも程々にしてくれ…。
いや本気で。
こいつまでついてきたらうるさくて仕方ねぇだろうが……。

龍「マジでか!?仕方ねェなあ〜、オレもついてってやるゼ!!」

雨「は?意味わからん。つかついてくんな。危ないし。」

つかこいつといたら更に危険が高まる気がする。
絶対どっか危ないところに首を突っ込んでこっちが巻き添えを喰らう。

龍「まぁそう言うなよ。今なら安いぜ?」

お前は傭兵か何かか?

龍「なっ、いいだろ?なっ?」

雨「……はぁ……。」

……しつこいな……。
こんな馬鹿でも連れて行けば少しは役に立つだろうか?
いや、でもここの王様から聞いた情報の通りなら、これからきっとさらに危ない旅に……。

雪「ちょっと時雨さん!こんなバカに負けないでくださいよ!!」

小雪が喚いている。
とりあえず保留にして、考える時間をくれ……。
……そうだ。
結局イルデブランド陛下から聞いた情報をまとめてなかった。
彼が言うには、ここ最近の魔王軍の活動は目に余るものらしい。
各地で魔王の傘下≠名乗る魔物達が跋扈しており、その中にはかなりの実力者が一人か二人は付いていて、その魔王の傘下の魔物達は、どうにもその実力者に従う傾向にあるらしい。
いわゆるゴールドグレードに来た、ラザフォードの率いていた奴等と似たようなものだろう。
そんな実力者の中でも、「七帝刄」と名乗る者達は頭の一つ抜けた人物が多いらしい。
……今のところ遭遇はしていないが……「七」ということは七人いると仮定するのが正しいだろう。
そういえばラザフォードや、流氷島で遭遇したシュペリは、「七帝刄」とは名乗っていなかったように思う。
となるとその「七帝刄」とやらは…あいつ等以上の実力者という事になるな……。
……なんとも頭の痛い話だ。
そして、彼ら魔王軍には、不可思議なところが一つ。
彼らはどこから現れているのかすら判らず、唐突にそこへ現れるらしい。
……どこかから召喚されているんだろうか……?
まあ、そうなるとどこに行ってもおそらく魔王軍が出る可能性がある。
だから、出来れば基本的にはこれ以上友人を巻き込みたくないんだが……。
もちろん、この目の前でニヤニヤしてる龍斗も友人の一人だ。
……馬鹿とかうるさい、という言葉が一番こいつを表すのに短くていい言葉だが、それ以外にいいところも結構ある。
面倒見もいいから、よく後輩の不良とかで、「舎弟にしてくれ」という申し出があったりもする。
……本人は断ってるみたいだが。

龍「いやーしかし時雨オマエマジで部活のメンツ揃えやがったな!!そして相変わらず……」

……そんなことを考える俺の横を通り過ぎて、女子の方へ向かう龍斗。
それにしてもさっきから女子を見る龍斗の目線が可笑しい。
……どこを見てるんだ?

氷「ところで龍斗?仲間になるのはいいけれど、貴方、さっきから何処を見ているのかしら?というかじろじろ見ないでもらえる?」

あいすはどうやら龍斗が仲間になることについては賛成らしい……が、先程から疑問に思っていた龍斗の目線は、あいすにとって不愉快な場所に向いていた様だ。

龍「相変わらず豊満なバストだなぁと思ってよ……」

彼は年頃男子特有の思考回路に達していたらしい。
……とりあえずうちの姉に対するセクハラ紛いの発言はやめていただきたいところだ。
つかお前豊満とかいう単語知ってたんだな。

雪「龍 斗 … …?」

視界の端でピンクのツインテールが動いた。
軽蔑と怒気の混ざった声で、小雪がゆらりと怖い雰囲気を醸し出す。
……あれはやばい。

その冷たい声色に、はっと我に返ったのか、龍斗は小雪を見て後ずさる。

雪「どぉやら……キツーイお仕置きが必要みたいねぇ?」

龍「お、お、おおおおい、な、何だよそんなこええ顔して、普通に、いつも通りだろ!?」

狐「いつも言ってもわからんから、こうなったんやろ……」

狐が端の方で呆れて呟く。
まったくもってその通りである。

雪「覚 悟 し な さ い よ ?」

小雪が黒い笑みで龍斗に迫る。

龍「お、おい、ちょ、ま、待てって、落ち着けって!」

龍斗は完全にパニックに陥っており、あたふたとして顔色も青い。
まあ、怖いんだろうな。

氷「あら、逃げられるとでも?」

あいすも加勢するらしく、満面の笑みで龍斗の右にあった退路を塞ぐ。
左は簡易ベッドの背板、背後は壁、前は小雪、右はあいす。
まさに袋の鼠とはこれだろうな。

ひーと、冷音、音波はもちろんのこと、桃花も、狐も、真ですらフォローに入らない。
もちろん俺も助けに入る気は更々ない。

因みに音波と桃花に至っては、龍斗に冷たい目線を投げ掛けている。

女性陣二人の目がキラリと光り、次の瞬間には龍斗を二人の強烈なビンタが襲った。

雪「このセクハラ野郎」

ふんっ、と鼻を鳴らしながら顔を右に逸らして、部屋の奥へと移動する。
あいすはすっきりした様子で俺の隣へ歩いてきた。
龍斗はといえば、ビンタを2発も喰らった影響で、うずくまって顔を抑えて、「いってェ……」と呻いている。

騎士「失礼しま……えっと、どうかなさいましたか」

扉の横で蹲っている龍斗に扉を開いた騎士が、面食らった様子で龍斗を見てこちらに問う。

雨「いや、何でもないんで気にしないでください」

アホな龍斗のことなど構っている暇はない。

騎士「そ、そうですか、……お部屋の準備ができましたので、ご案内させていただきたく参上いたしました」

ああ、それはご丁寧にどうも。

炎「今日はふかふかのベッドで寝れるね!!」

騎士「ああ、ヒート様は少しこちらへ。」

炎「??」

どうやらひーとはどこか別のところへ連れて行かれるらしい
……どこ行くんだ?




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