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-流石に同情するしかないな……-

騎士に案内され、城の来賓が泊まると思われる部屋に辿り着いた。

赤と黄色、白で彩られた部屋は、その色合いに似合わず、冷房がガンガンに掛かっており、物凄く涼しい。
豪華な金色の飾りがあちらこちらに飾ってあり、はっきり言ってしまうと派手だ。

雪「じゃあ皆!龍斗のことはこれから、セクハラバカって呼ぶこと!」

先程までへばっていた小雪が、何だか凄く元気に言った。

この"セクハラバカ"はさっきセクハラ男発言から派生して、あいすが「どうせならバカも追加したらいいのに」と発言したところから生み出されたあだ名である。

男的にはかなり不名誉極まりないあだ名だ。
知り合いに、「三又男」と呼ばれた奴がいるが、正直かわいそうだった。
無論、そいつのは冤罪だったが。
今回の場合、実際龍斗はセクハラ紛いの行為をしてしまっているので、彼に弁解の余地などない。
しかし、やはりビンタだけじゃ済まなかったか……。

龍「だから何べんそのあだ名は嫌だって言ったらわかってくれんだよ!?」

雪「何回言われてもわかんないわね!アンタの頭のようにー」

龍「でもセクハラはねぇだろ!!」

雪「アンタがやった行動をそのまま顕しただけのことじゃない!じゃあ何?変態馬鹿のほうがいい?」

龍「だからその馬鹿の前に枕詞付けんのをやめろっつってんだよ!!」

騒がしく言い合いをする二人。
…いつも思うが、あいつ馬鹿は否定しねぇんだな……。
まさか自覚が……?

ちなみに、さっき別室に連れて行かれたひーとは、貴族っぽい格好をさせられ、若干息苦しそうにしている。
帰ってきて早々、窓際の方であいすと音波にちやほやされていた。
ひーとが衣装を持ってきたメイドに聞いた話では、確かに貴族服だが正装というわけではなく、ただの普段着らしい。
イルデブランド氏の妻、つまり王妃からのプレゼントらしいが……そうなるとただ王妃があの服をひーとに着せたかっただけということになる。
…さっき知り合いっぽい感じの空気は醸し出していたが……いったいどういう関係なんだ……?

雪「大体なんであんたついてきてんのよ!!ついて来ていいなんて時雨さん一言も言ってないでしょ!?」

龍「だって時雨、"…はぁ…"って言ったぜ?なぁ。」

…いきなり振るな。
それとこの件について、俺は彼に同行を許した覚えはない。

先程のため息の意味は、絵文字で表せば(-_-#)か(-.-;)であり、どちらにしろ怒りか呆れであることに変わりはない。
何故そこでポジティブに考えるんだ龍斗…。

雨「…同行を許した覚えはないな。」

とりあえずはっきり言っておいた。

龍「さっきのあれは了承の意味じゃ無かったのかよ!?頼むよマジで!」

雨「どうしてそこまでついてくることにこだわるんだよ。今まで通り、一人で逃げりゃいいだろ。」

龍「一人旅も楽でいいけどよ…、一人で逃げるのもそろそろ限界なんだよ…、暇だし退屈だし暇だし。オマエらとなら頑張れる気がする!だから頼むっ!このとーりっ!」

とにかく暇なんだな、わかった。
…しかしここまで必死になられると、どうもきっぱりと断る踏ん切りがつかない。
…俺自身、断る理由もない。
女子の敵は増えるけど。

未だに"なぁ〜…"と拝みつつける龍斗に、ひとつ溜め息をつき、こう告げた。

雨「…はぁ…どれだけ必死になるんだお前は。そこまでしつこく言うなら、勝手について来ればいい。」

龍「よっしゃー!!」

雪「ちょっ…し、時雨さん!?」

そんなに嬉しかったのか、全力で飛び上がる龍斗。
そばにいた小雪が物凄くあたふたしながらこっちを見ている。
だが、このまま何も言っておかないままでは無法地帯になる気がする。
…一応、釘も刺しておくか……。

雨「但し、馬鹿な行動と思春期的な行為は慎め。それが条件だ。」

あたふたする小雪が、ピタリと止まった。
こうでもしないと女性陣から非難の嵐だ。
つか、やったらマジでぶん殴る。

何やら「オレそこまで信用ねェのかよ」と凹む龍斗とは対照的に、小雪が勝ち誇った笑みを浮かべたが、…まぁ気にしないことにしよう。


[荒風 龍斗がパーティーに加えられるようになりました。]


-ついに来やがったか…-

ひーとがあいすと音波、途中から加わった桃花から解放されて数分後。

俺はすることもなく、廊下の柱に寄り掛かっている。

何故部屋を出たかという理由を問われれば、面倒だったからと答える。

…いや、実際には、少し考え事をしたかったからと言うべきか。
ここに来てからの既視感と、あの仮面の奴との戦闘中に出てきた景色について。
やっぱり、どう考えても身に覚えがない。
考えても答えは見えてこない。
何か……何か歯車が足りない。

ん?
…目の前を数人の兵士が走っていった。
何やら慌てた様子だ。

…何かあったのか…?
そんな事を考えていれば、大きな爆発音らしき音が聞こえてきた。

雨「!?」

爆発音(?)は更に二度、三度と続く。
一体何だってんだ…。
まさか敵襲?

炎「時雨っ!!」

かなり慌てた様子で、ひーとが部屋から飛び出してくる。

雨「一体どうした?」

落ち着いた声が出たが、内心落ち着いていない。
こう言うときに、素直に表情が出ないのは、いいことなのか、悪いことなのか…。

炎「城下町で巨人が三体暴れてるんだよ!!」

どうやらあれは物が壊れる、もしくは建物が倒壊する音だったらしい。
というか巨人?
巨人っておとぎ話でしか聞いたことないんだが……。
いや、幻界にはいたか……?

炎「ねぇっ!!どうすればいいと思う!?」

早くも瞳に涙を浮かべているひーと。
ともかく落ち着け。
お前なんでそんなパニクってるんだよ。

炎「わかんない…、わかんないけど、この街が壊されていくのが嫌なんだ!!」

……なるほど、まあ、俺も街が壊される様を黙ってみてるのは嫌だな。
けどここまでになると……何か別の要因がありそうな気もする。
…いや、この場合こうなってても冷静な俺の方がおかしいか。

雨「…ならどうすればって、街に行くしかねぇだろうが。…他の奴等は部屋の中か?」

炎「うん!!」

とりあえず、部屋に全員いるらしい。

ともかく全員と合流し、急いで町へと向わなくては。




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