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* * *
向かってきたギガントロス二体は、二手に別れて相手取ることになった。
まず、右側のギガントロスに近かった、狐、真が、そいつに向かっていく。
狐「
飛殴拳!はぁっ!!」
間合いを詰めた狐は、まずアッパーをギガントロスの顎にヒットさせ、空中に浮いた相手の体を、組んだ両手で地面に叩き落とす技を決めた。…かなり素早い。
技の最後の叩き落とす部分は追い撃ちのようだ。
しかし、相手は崩れた態勢を立て直し、手に持っていた巨大な棍棒を降り下ろした。
それは明らかに狐を狙っていた。
狐「うおっとぉ!」
それを避けて着地し、狐はニヤリと笑う。
前屈みになった体勢をゆったりと起こすギガントロス。
刹那、背後に黒い影。
真「鈍い。」
真は低くそう呟きながら、相手の頭に素早く回し蹴りを叩き込んだ。
残像が黒い光を放つ三日月のように残る。
狐「真に鈍い言われたらおしまいやろ〜。」
隣に着地した真に、狐がヘラヘラとした口調で言う。
真「動きが鈍いって意味で言ったんだけど。」
未だ混乱状態を起こしているギガントロスを見て構えながら、真はそう返した。
彼の目はいつもとは比べ物にならないほどに鋭く、まるで、獲物を狙う鷹のような、そんな印象を受けた。
ふと、上からの光が遮られた。
視線を前に戻すと、ロージーから命令を受けたもう一体のギガントロスが、俺に向かって棍棒を振り上げているところだった。
…やばっ!
龍「時雨危ねぇっ!!」
っと…!!
いきなり来んじゃねぇよ……。
…いや、ボーッと戦ってるの見てた俺がいけないのか。
しかし真の言った通り、動きが遅い。
お陰でギリギリ躱すことができた、助かった。
だが食らったら一溜まりもなさそうだ…なんとか動きを止める方法を考えよう。
…とりあえず頭を狙ってみるか……と言っても俺に真ほどの脚力はない。
そうなると必然的に攻撃手段は限られてくる。
…おっと…!
考えているうちにギガントロスがまたも棍棒を振り下ろしてきた。
強く叩きつけ過ぎたのか、持ち上げるのに苦労している。
…そうだ、あの棍棒を利用すれば。
俺はそう考えて、相手の棍棒に飛び移ると、相手が武器を振り上げた勢いを利用して跳躍し、その足でギガントロスの頭上まで跳び、その頭に刀を力一杯降り下ろした。
そして相手の腹部を、落ち様水平に凪ぎ払う。
そこまでのダメージは与えられなかったようだ。
…ちっ。頑丈な…。
…そう簡単には倒れてくれないな…。
というよりも今の一撃で倒れたら苦労はしないか。
龍「時雨オマエ何ボーッとしてんだよ!!あと急に何も言わず、棍棒に乗っかってくのやめろよな!!」
着地した瞬間、龍斗に怒鳴られた。
あの棍棒に乗って飛んだあれは、意外と驚いたらしい。
龍斗なら普通に流すと思ってたんだが…意外だな。
雨「…悪い。」
とりあえず謝った。
まさか、戦闘中に味方の観察してましたとは言えねぇよな…。
ぼーっとしてるように見えたのは正しい見解だし。
棍棒に関しては冷静に考えた結果だったんだが……次からはちゃんと伝えよう。
冷「集束せし暗黒は如何なる障壁をも貫く…。フレッシュノワール。」
後ろから、冷音の詠唱が聞こえた。
鋭く、矢のように尖った闇のフォルトが、相手を突く。
間を入れず、ひーとが攻撃を仕掛けに行った。
炎「
紅蓮響襲!!」
焔を纏って急降下するひーと。
ギガントロスが一瞬仰け反った。
あいつの跳躍力も中々だよな…俺ももう少し頑張らないと。
雪「
光輪閃!!」
そこにすかさず小雪が、空に向かって矢を射った。
その矢から何やら魔方陣のようなものが展開され、白い光の矢が雨のように降り注ぐ。
桃「…!思い付いたわ!!」
今まで考え込んでいた桃花が、何かを思い付いたようで、薙刀を右手で持ち、刃の部分を隠すように構えた。
そして高く跳躍し、狐達が相手をしていたギガントロスに、刃を突き立てていく。
まるで舞うような動きだ。
見惚れているうちに、右側のギガントロスは倒れていた。
……すげえな。
さて残るは俺たち側にいる一体。
ロージーが乗ったギガントロスは動こうともしないから、攻撃をしてこないつもりだろう。
ロージーに関しても、一度"やってしまえ"と号令を掛けてから、ギガントロスの肩に乗ったまま、何もしてこない。
高みの見物ってとこか…?
岡「HAHAHA!!もっと暴れるがいいデース!!」
高笑いと共に、狂気に満ちた台詞が聞こえてきた。
…ムカつく。
ああいう他の奴に汚れ仕事や面倒事を任せっきりにしてのうのうと笑ってるやつは本当にムカつく。
炎「うわぁっ!?」
っと…ひーとが攻撃受けて撥ね飛ばされてきた。
とりあえず受け止めたが…。
炎「ありがと!時雨!」
ぱっとした笑みで、ひーとが言う。
どうやら酷い怪我はないようだ。
雨「…ああ。」
短く頷き、もう一体のギガントロスに視線を戻す。
巨大な棍棒をぐるぐると振り回し、こちらへ突進してくるが、動きが遅いため掠りもしない。
というか振り回すな。
側にいたひーとは、いつの間にやら後方に引っ込み、接近戦闘をしているのは俺と龍斗だけという状態だ。
…ひーと…後で覚えてろ。
とはいえひーとはこの前の流氷島といい、黒騎士襲来といい、結構な確率で吹っ飛ばされていた。
少し心配になるな……まあ、とりあえず元気そうだからいいけど。
音「唸れ轟音っ!サウンドスレー!!」
声は後方から。
つか音波…お前元気だな……。
音の波が刃のような形になり、相手にぶち当たる。
混乱効果があったようで、ギガントロスが目を回した。
…ん?目を回す……?
今何かを閃いた気がする。
形状はあやふやだが、とりあえずやってみるか。
脚力で飛べないなら、フォルトを上乗せして加算すればいい。
そう考えて俺は、足元に風術で上昇気流を起こすと、背中を見せた相手の頭目掛けて、少し勢いをつけて垂直に跳んだ。
その間に、二・三回体を回転させ、相手にダメージを与えておく。
抜けたところで、相手の頭から刀を降り下ろした。
…案外飛べるもんだな…。
その一撃が決め手となったのか、ギガントロスは大きな音を立ててうつ伏せに倒れた。
思い付きにしては、意外と成功した様に思う。
背の高い敵には其れなりに通用しそうだ。
思い出しやすいように、
閃空襲とでも名付けておこうか。
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