12
−二度目の襲撃−
ロージーの襲撃から大体二日後、朝早くから、俺達は王の間に呼ばれていた。
どうやら、魔王軍を追い払った事が関係しているらしい。
まぁ、そろそろ違う国に行こうかと話をしていたので丁度いいタイミングだ。
イル「この度は我が国を救って頂き、とても感謝している。よってお主等に褒美だ。受けとりなさい。」
王の椅子にどっしりと構えた国王は、俺達が揃うと、そう言った。
というか……俺達は救ったって言うより……、知り合いを追い出しただけだし……。
褒美を貰うような事はしてないように思うんだが…。
そもそも、見返りを求めてやった訳じゃない。
雨「いや…大したことしてないんで……。」
とりあえず断ってみる。
イル「いや、これは儂の気持ちだ。受け取ってくれ。」
いや、だから要らないって……。
と言う前に、国王の右隣に立っていた大臣が、包みを手渡してきた。
…何か妙に重たいんだが……。
恐る恐る包みを開けてみると…、なんと言うことだろう……5000β(ベル)も入っていた。
こんなに貰うわけにはいかないだろ……、学生として。
そもそも出所は?
まさか国民の税金じゃねぇだろうな…。
イル「ガッハッハッハ、安心せい。儂のポケットマネーだ。」
どうやら俺は訝しげな顔をしていたらしい。
それを見抜いたらしい国王は、豪快に笑った後、ニッと笑う。
ポケットマネーって……それならいいかってなるわけ無いだろ。
ただ単に知り合いの暴挙を止めただけなのに、こんなにもらうのは…。
雪「時雨さぁん、貰っておきましょうよ〜。いいじゃないですかぁ、貰えるものは貰っておけば。」
後ろからこそこそと、小雪の声が聴こえてくる。
流石に守銭奴と言われるだけあって、そういう主義のようだった。
…お前…天国のご両親が泣くぞ…?
龍「そうだぜ時雨、貰っとけるもんは貰っとくもんだって。」
龍斗も同調し、そんなことをいい始める。
龍斗に関しては完璧に悪ノリのようだった。
俺は思わず溜め息が漏れたが、結局はそれを受け取った。
勿論、きちんと国王には礼を入れて。
少し沈黙が続いたところで、あいすが口を開く。
氷「…一つお訊きしても宜しいかしら。」
イル「…なにかね?」
氷「…先程の襲撃者も探っている様子だったのですが…魔王の探している、"鍵"とは一体…」
兵「大変です!!」
国王が聞き返し、あいすがそう質問をしようとしたその時、質問を遮るように、兵士が慌てた様子で駆け込んでくる。
…ったく……何だよ次から次へと……。
兵「た、大量のGが…城内に攻め込んできました!」
…は?
今日はエイプリルフールか何かだったか?
ていうかGって何だよ。
夏に出るおぞましいアレしか出てこないんだが。
イル「冗談は言ってよい場面と悪い場面があるぞ。」
真顔で凄む火の国の国王。
まぁ…真面目な話の途中だったしな…。
兵「ほ、本当なんです!!巨大Gが…」
兵士の言葉が、女の悲鳴に掻き消される。
伝令に来た兵士以外の兵が、急いで一階のホールへと駆けていく。
顔を見合わせ、俺達も半信半疑でホールに向かった。
* * *
現状は、ホールに降りなくとも確認できた。
一階のホールは、埋め尽くされてはいないものの、黒光りするそれが、ずるずると動き回っていた。
どうやら俺の発想は残念ながら正しかったらしい。
…間違ってて欲しかったな…。
巨大なせいか、本来のそれよりも動きが格段に遅く、柱や壁を登ったり、階段を上がってくる気配もない。
普通のそれと違う箇所は、巨大なだけではなく、多分目であろう部分が、赤いことだろうか。
諸々の事情でこれ以上の細かい描写は省くが……はっきり言っておく。
正直キモい。
女性陣は大体に引き攣った表情を浮かべ、後ろへと後退りしていた。
…あいすに至っては、俺の後ろに隠れたままでいる。
なるほど、お前は弟をあれに売るつもりか。
雨「…冷音、龍斗、それと真。女子共を頼んだ。ひーと、あれを始末しにいくぞ。」
冷音と真、龍斗に待機命令を出し、ひーとに号令をかける。
しかしひーとが若干引き気味な反応を示した。
炎「えっ…、戦うの…?アレと?」
雨「あぁ。…出来る限り、跡形も残さない方向で。……つか放置するわけにもいかないだろ……」
炎「…あー…分かった。…うへぇ…。」
ひーとは物凄く嫌そうな顔をしたが、何とか考えを汲んでくれたようだ。
俺も嫌だよあれと戦うのは。
モザイク処理したいくらいには嫌だ。
とりあえず、まず俺は、二階の廊下から下のホールへと飛び降りた。
黒光りするあれ(…長いからBGと略すことにする。)は、こちらに気が付いたらしく、腹を空かせた猛獣の様にこちらへ突進してくる。
…何か…トラウマになりそうだな…これ…。
俺がやってよかった。囮役。
始めに向かってきた1体を、とりあえず斬る。
…一つ計算に入れていない事態が起きた。
こいつら…どうなってるのかわからないが分裂しやがる…。
でもまぁ、大丈夫だろ。何せ…。
炎「時雨!いくよ!!」
集まったBGの後ろに回り込んだひーとから、号令が掛かった。
…やるか。
炎「イグニスグローブ!!」
雨「巻き上がれ、一過の旋風!ウィンドシア!」
ひーとが放った複数の火の玉を、俺が風術で巻き上げる。
ウィンドシアは初級術ではあるが、風の渦を作る術型である為、ひーとの焔によって回った風を纏めて巻き上げるには適していた。
BG共は燃え上がる風に巻き込まれ、塵になって消えていく。
俺が囮になり、こいつらを一ヶ所に集めたのは、纏めて燃やし尽くす為だ。
昔、彼の姉とやったことがあり、ひーとはそれを見ていた為、彼にも出来たというわけだ。
いわゆるプチ火災旋風とも言えるが、きちんと味方や建物には被害が出ないように調節してあるので安心してほしい。
煙に紛れて、何か黒い靄も昇って言った気がしたが……きっと気のせいだと思いたい。
そして、全てのBGが塵と化し、ホールに静寂が訪れる。
幸いにも怪我人はなく、被害も少なかった。そこはよかった点だろう。
…けど…もう二度と出会いたくないな。
BG。
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