13
−真か偽か−
イル「一度ならず二度までも助けられてしまったな…。」
…今回のは…考える前に体が勝手に動いていた…とでも言うべきか。
半分程は、ひーとがやってくれたようなもんなんだけどな…。
イル「もう一度、お礼をせねばなるまいな。」
国王はそういうと、また大臣に促し、俺は包みを受け取った。
まさかと思いまた開封してみると…。
やはり、5000βが入っていた。
流石に、二度も同じやり取りをするわけにはいかない。
"これで防具などを揃えるといい"等と言われたので、潔く「ありがとうございます」と頭を下げ、とりあえず俺達は王の間を下りた。
* * *
龍「なぁ、次、どこ行くんだ?」
後ろから龍斗が訊いてくる。
…実を言うと…決めてない。
氷「また決めてないのね…。」
溜め息をつくあいす。
…決めずに出てきたのは悪いと思ってるさ…。
でもホント適当に逃げるだけのつもりだったから、目的地とか何にもなかったんだよな……。
雪「あれ?誰か立ってますよぉ?」
小雪が前方を指差して言った。
その方向を見ると、確かに、藍色の髪をした青年が、そこに佇んでいた。
…藍色の髪…?
まさか…。
青年がこちらに気が付いた。
もたれ掛かった壁から、燕尾服のような服を纏った体を離し、右半分、仮面で隠れた顔で、動物のキツネのように目を細めて笑う。
「やぁ、また会ったねぇ。」
その容姿と声で確信がついた。
こいつは魔王軍の、道化師。
シュペリ・ヴィーネだ。
* * *
全員が武器を出す構えを取る。
しかし、龍斗、音波は、こいつのことを知らない為、困惑している。
龍「おっ?こいつ悪い奴なのか?」
雨「…ああ、ここに来る前、流氷島で遭遇した奴だ。」
シュ「待った待った!!今日は戦いに来たんじゃないんだってば!」
シュペリは焦ったような動作をする。
…信用できないが、丸腰の相手に武器を出すこともできない。
雨「…何の用だよ。」
構えを解かずに問う。
すると彼は、首の辺りに触れながらこう答えた。
シュ「今日はね、悲しいお知らせがあって来たんだ。」
それから何か探すように、俺達を一通り見回し、ひーとで目が止まる。
シュ「そこの赤い髪の子。」
炎「え、ボク?」
指名されたひーとは、頭上に疑問符を浮かべている。
シュ「そうそう。君のご両親ね、…死んだよ。」
シュペリは告げた。
始めの辺りはにこやかに、最後の辺りは真顔で。
炎「…え?」
状況が飲み込めないひーと。
顔色が急激に青ざめていく。
シュ「…だから、死んだんだよ。魔王サマ直々にいたぶられて。…馬鹿だよねぇ。逆らっても意味なんて無いのに。」
シュペリはもう一度言った。
その上最後の方はほぼ笑っていた。
炎「…嘘だ…。」
青ざめたまま、呟くようにひーと。
シュ「嘘だと思うなら一回帰ってみたらいいんじゃない?」
笑いを含ませながら言い、最後にはケラケラと笑った。
シュ「じゃ、それだけだから。」
一通り笑った後、無表情に戻って言い、シュペリは消えた。
消える瞬間に、コツン、と何かが地面に落ちた。
あいすが拾いにいく。
音「…ひーちゃん…。」
心配そうに音波。
龍「あ、アイツ敵なんだろ?なら気にする事ァねぇって。」
続いて龍斗も励ますように口を開くが、ひーとは考え込むように俯いたままだ。
…しかしあいつは、どうして告げに来たんだ?
…ひーとを絶望させたかった?
なら何のために?
…わからない…。
ん、あいすが戻ってきた。
氷「時雨、これ…。」
手の中にあるのは、赤い輝石を金で加工した、結構高価そうな首飾り。
石の種類はおそらく、
響紅石に分類されるルビーだろうか。
普通に考えれば持ち主は落とし主のあいつ。
だがこれは女物だ。
…一体誰の…。
音「ひーちゃん…。」
炎「ん?…あはは、ごめんねー。何か暗くなっちゃった。」
音波の二度目の呼び掛けに、ひーとはやっと顔をあげた。
笑ってはいるが、いつもの…心からの笑顔ではない。
炎「ほら、立ち止まってないで、次、何処に行こうか。」
歩き始めるひーと。
長い付き合いでなくても、どんなに気丈に振る舞っていようが、ひーとは表情を隠せていない。
今も複雑な顔をしており、悩んでいるのが見てとれる。
こんな状態で旅をしたところで、逃げられるはずもない。
ひーと自身が楽しいはずもない。
なら…
雨「…ゴールドグレードだ。」
ゴールドグレードに戻ることにした。
炎「え、時雨?」
驚いた表情をするひーと。
雨「…ここは戻る方が先決だろ?」
家に戻って、"両親が死んだ"とかいう事実が分かるわけでもないし、急いで自覚させるつもりもないが、立ち直るまで…落ち着くまでは、慣れた場所で休ませるのが一番だろう。
炎「でも時雨、」
雨「別に見つからなきゃいいだけの話だ。お前が気を使う必要はねぇよ。」
ひーとの言葉を遮るように言う。
…俺はあいつの兄弟じゃねぇから、気持ちを一緒に背負うことは出来ない。
けど、せめて…出来るだけ、ひーとに無理の無いようにはしてやらないとな。
そして俺達は、早くもスタート地点に戻るのだった。
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