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-"黒猫"の噂-
翼が火鳴邸の庭に突撃…もとい、落下してから大体二日が経った。
ひーとも姉が側にいるからなのか、持ち前の立ち直りの早さのお陰なのかはわからないが、少しずつ元気を取り戻しつつある。
街にも特に変化は無く、俺達は少々久々に平和な日々を満喫していた。
…とは言っても、未だに宿泊しているのは火鳴邸で、家には皆、この邸が自宅である火鳴姉弟以外はろくに帰っていない。
家が目の前にある冷音ですらこっちで寝泊まりしている。
これには色々と事情があるんだが、割愛させてもらおう。
さて、現在の時刻は大体昼を過ぎた辺り、昼食を取って、各々自由に過ごしている。
炎「ねぇねぇ、そういえば近所のお兄さんから聞いたんだけどね」
暇だったのか、ひーとは珍しく俺の目の前の席に座っている。
彼はカップに入った紅茶をスプーンで掻き回しつつ、思い出したように口を開いた。
炎「この街の東にある洞窟にさ、黒っぽい集団がいるんだって。」
雨「…黒っぽい?」
…黒って言うと…ちょっと前まで街にいた黒騎士共を思い出すが……まさか…魔王軍か…?
炎「うん。 何かね、最近見るようになったらしいよ。」
音「なぁにそれ…怖い。」
ひーとの隣に座っている音波が眉を
顰めた。
あぁ…そういえば音波は会ったこと無かったな…あの黒騎士共に。
確か前にひーとが、彼女はゴールドグレードに住んでないと言っていたから、遭遇することもなかっただろうし。
炎「あはは、大丈夫だよ、街に来るような事はないって。」
音波を安心させるように言うひーと。
…前例からして、断言はできないがな……。
というか、だ。
ひーとの言う近所のお兄さんって誰だよ?
考えてみても心当たりはない。
…ここで思案していても仕方ないか。
炎「時雨? 何処行くの?」
立ち上がった俺を見て、ひーとが首をかしげる。
雨「……買い出し。」
とりあえず何があってもいいように備えだけはしておかなくては。
…まぁ、情報収集も兼ねてるけどな。
ひーとが街の奴に聞いたって言うんだから、最低でも一人位は事情を知ってる奴がいるはずだ。
まずは話を聞いて、それを材料にもう少し状況を見定める。
炎「そっか、行ってらっしゃい。」
音「行ってらっしゃいー。」
ひーとと音波は、二人して手を振って見送りしてくれた。
…ほんっと仲良いな、あいつら。
そういや付き合ってるんだったか。
なら納得か。
エントランスを抜けて、外への扉を開くと、理美火が扉の横にある柱に凭れ掛かっていた。
理「よ、よっす……。どこいくんだ?」
彼女は特に何というわけでもなく(若干どもったが)挨拶をすると、にこやかにそう問うた。
そのにこやかな理美火の後ろにある植え込みには、ピンク色の髪とか、青い帽子とか、銀髪とかが見えるが…多分気にしたらいけないんだろうな。
雨「…買い出しだよ。あと情報収集も少々。」
扉を閉めつつそう答えると、理美火は真剣そうな声色で疑問符を浮かべた。
理「…情報収集? 何かあったのか?」
雨「…何か東にある洞窟に、黒っぽい集団が潜伏してるらしいんだと。」
理「黒っぽい…? あ、ちょ、ちょっと待ってくれよ……!」
そう言うだけ言って歩き出そうとすると、理美火に呼び止められた。
雨「何だ?」
理「あたしも…一緒に行っていいか?」
短く返答をしてみれば、彼女はついてくる気らしかった。
…どうせ道具屋に行くくらいなもんだし、大丈夫か。
雨「…勝手にしろよ。」
理「それは了承ってことでいいん…だよな? じゃあ有り難くついてかせてもらう。」
言いながら歩き出す俺に、小走りしながら追い付く理美火。
…しかし……いつもならついてこないであろう理美火が志願したってのはどう言うことなんだろうか。
理美火の後ろに見えたあの三人が関係していそうだが……まぁいい。
今は情報収集に専念しよう。
それが先決だ。
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