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* * *

少し理美火と二人で歩きつつ、道すがら会う人会う人に例の噂について訊いてみたが、特に収穫はなかった。
道具屋までそんなに距離はない為、買い物を済ませたら街をもう少し回ってみようと言いつつ、俺たちは道具屋に到着した。
そういえば初めて旅立った時も世話になったな……。
……っと、今日は人が少ないな…商品も何だか少ないような……。

「おお、これはこれは水森様のお坊ちゃん……!本日はどのようなご用件で?」

恰幅のいい店主に話し掛けると、営業スマイルと驚いたような調子で受け答えされる。
……余談だが、一度このお坊ちゃん呼びでひーとやら龍斗やらに大笑いされたことがある。
殴りはしなかったが、とりあえず龍斗の時は彼の足を踏みつけた。

雨「……少し買い物にな。これ頼む。」

必要なものを入れた篭をカウンターに置くと、"へいまいど"と言ってから勘定し出す店主。

理「時雨、この人にも一応訊いてみないか? 商人なんだし、何か知ってるかも。」

雨「…あ? あぁ、そうだな。」

理美火の言葉に頷くと、店主はもう代金を計算し終えていた。

「はい、全部で568βになります…、どうかなさいました?」

雨「…あー……ちょっと訊きたいんだが……、この辺りで黒っぽい集団が出るなんて噂、聞いたこと無いか? この前街に来た黒い騎士っぽい奴ら以外で。」

「はぁ…黒っぽい集団ねぇ……。」

問えば、店主は考え込んでしまった。
こりゃハズレか……?

「あぁ、そう言えば。」

ハッとしたように顔をあげ、ポンッと左手の拳で右の手のひらを叩いた。
心当たりがあるようだ。

「ゲーブイース…我々商人がそう呼んでる街の東の洞窟に、そんな感じのが出ると聞きましたな。」

…お?
しかもかなり有力情報っぽいな。

理「おじさん、その話詳しく。」

ギラリと目を光らせて、理美火がカウンターに身を乗り出した。
…嬉しいのはわかるがガッツリ食い付き過ぎだと思うんだ……。
店主が驚いて固まってるぞ……。

理「…はっ、す、すす、すいません……」

それに気が付いたのか、彼女はゆっくりとカウンターから退く。

雨「…悪いな、こいつ大体こんな感じだから気にしないで話を続けてくれ。」

「あぁ、いえいえ、元気のいい娘さんですな、はっはっは。」

一応俺も謝ると、店主は一つ空笑いをして何処からかハンカチを取り出し、額を拭った。
理美火の方から、"え、あたしそんな風に思われてんの?"と焦ったような声がしたような気がしたが、この際聞こえなかったことにする。

「……コホン、ではもう少しだけ。
これは商人仲間から聞いた話なんですけどね?
どうやらその洞窟の前に行くと、魔物と一緒に、猫の亜獣人が飛び出してくるらしいんですよ。」

雨+理「……猫の亜獣人?」

店主の言葉に、二人して首をかしげてしまった。

「えぇ……それが黒い髪に黒い獣耳してるもんで、この界隈の商売人は"黒猫"なんて呼んでますねぇ。
まぁ襲っては来ないんですが、それにくっついてる魔物がまぁ狂暴な面構えで。
仕入れ業者の連中は怖くて通れないと言い出す始末でして……。」

困り顔の店主。
…そりゃ困るわな……。
仕入れができなきゃ物は売れない。
通りで店頭に並んでる品物がガラガラなわけだ。

「どうにかしようにも、傭兵なんて雇う訳にもいきませんし…峠に駐屯している騎士様方に頼んでもどうにも……。」

…まぁ、傭兵はかなり金が掛かるからな……。
それに質もピンからキリだと親父から聞いたことがある。
…しかし騎士が動かないってどういうことだ…?
…今考えても仕方無いか。
商人が頼んでも駄目なら、俺達が直談判しに行ったところでどうにもならないだろうし。
これ以上の情報は無さそうだ。

雨「…そうか、情報感謝する。」

料金を払いつつ言い、買った道具を袋に入れた。
…そうだ。
あの駄目親父でも、これくらいなら何か役に立つかもしれない。

雨「…親父……水森総帥には連絡してみたか?」

「あぁ…連絡しては見たのですがね……連絡がつかないんですよ」

…は?
こんなときにあのちゃらんぽらん何やってんだよ。

雨「…そうか……重ね重ねすまない……。」

「あぁ、謝らないでくださいな、お忙しいんでしょう、きっと。」

いくら忙しかろうが……こういうときの社長や総帥だと思うんだがな。

雨「…また来る。理美火、いくぞ?」

そう歩き様店主に言い、何やら考え込む理美火にも声を掛ける。

理「あ、あぁ。ありがとうございました。」

理美火は軽く返答して、一度店主に礼を言い、俺に追いつく。

「またの来店、お待ちしてますねー」

という店主の声を聞きつつ、俺達は道具屋を後にした。




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