9



* * *
雨「という訳なんだ。」

そう締め括った俺の前には各々席に座った仲間たちがいる。
火鳴邸に帰ってきた俺達は、直ぐ様皆を集め、今後の身の振り方について会議をすることにしたのだ。
今はちょうど、今回の情報収集で得た情報と、邸の前で会った聖來の動向を、今話し終えたところだ。

翼「ふむ……つまり今、東の洞窟には魔王軍っぽい軍がいて、それに仕入れ業者さんが怯えて道具屋がすっからかん。そして聖來がその東の洞窟にいる魔王軍っぽい人達と一緒に居るとかいう可能性があると……?」

雨「……あぁ。」

翼が簡潔に話をまとめ、俺はそれに頷いた。
彼はふぅ……と溜め息を吐くと、額を抑えて首を横に振る。

翼「…前途多難ですねぇ……魔王の情報集めるなら山脈を越えて王都か楼閣都市へ行ったほうがいいかと思ってたんですが……。まさか手前の洞窟に怪しいのがいるとは。」

王都……ラグスティールか。
確かに彼処なら観光客やら何やらが居るだろうし、噂から有力情報やらまで色々揃ってはいそうだな。
でも確か、馬車は今王都まで通っては居なかったような。
…まぁ……危なそうなのがいたら通りたくても通れないか。
楼閣都市はITというかネットワーク回線が発達してるから、世界中から情報集まるだろうし、そっちに行くのも良さそうだ。

桃「港から船はどう?」

雨「立場が立場ならそれもありだが……俺達の中に18歳以上の奴がいるかどうかを考えてみろ。」

桃花が船で迂回するルートを提案する。
だが俺はそれを否定した。
このルミナス王国では、18歳未満の未成年が成人年齢者無しで何処かへ渡航する事は、法で禁止されている。
そして俺達の中には、18歳以上の人はいない。

桃「…そうだったわ……」

桃花はそれを失念していたらしく、頭を抱えた。

龍「なーにそんな難しい顔してんだよオマエら。」

唸る俺達を見て、龍斗が笑った。
真面目に考えてるところを笑われるとムカつくんだが。

龍「まーまー、怒んなよ。 んで? オレ達がいこうとしてる先に、変なやつらがいるって話だっけか?」

…大方あってはいるが……何か突拍子も無い案な気がしてならない。

龍「なら話は簡単じゃねェか。強行突破すりゃいい。」

翼「龍斗さん…僕達はそれが嫌だからこうやって相談してるんですよ……。」

案の定、かなり危ない橋を渡るような提案をした龍斗に、翼が諭すような調子で言う。

氷「あら、私は強行突破でもいいと思うけれど。」

あいすが隣で首をかしげた。
…出たよあいすの戦闘大好きが……。

狐「オレも平気やで!」

理「あたしも異存はねーな。」

続いて狐、理美火もそう声をあげる。
何でうちの女子共はこうもアグレッシブなんだ……。

冷「…戦うの?」

雨「…いや、まだそうと決まった訳じゃない。」

冷「…でも、そうする気満々だよ?」

冷音が不安そうにしている。
あまり戦いたくないんだろうな…多分。
一度冷音の頭を撫でて、俺は発言した。

雨「おい、強行突破は最終手段だろうが。というか出会でくわさなきゃ、戦う必要なんてねぇだろ。」

氷「でもこれ以上放っておいたら道具屋さんから品物がなくなってしまうわ。」

龍「そうだぜ、道具屋から物がなくなったら、ヤバイことになるんじゃねぇ?」

…そこを突かれると痛いな…。道具屋から物がなくなった場合、まず食料や薬等の調達が出来なくなる。
この場合、取り寄せが利けば何とかなるが、物資を運んでくる運搬車が襲われたなら、それも不可能となる。
この街の連中がいくら金持ちとはいえ、物流を絶たれたらどうしようもないだろう。
引っ越しをするにしろ、食べ物が無い状態で動けば……死人が出る。
というか……魔王軍がこの街を執拗に狙う理由は何だ?
…わからない、ただ金持ちが多いだけの街のはずなんだが……。

翼「それでも、一介の中等部生である僕達が行ったところで勝てる見込みは無いでしょう?」

龍「それでもほっとけねぇだろうがよ、困ってんだろ? 道具屋のおっさんも聖來も。」

龍斗は席から立ち上がり入り口まで行って、唐突に立ち止まって言った。

龍「つかよぉ、聖來はオレ達の仲間だろ? ホントなら迷う余地なんてねぇんじゃねぇのか?」

…彼はその状態のまま首をかしげる。
打ち出される決定打というか、鶴の一声というか……この場合は龍の一声か。
…確かに、このまま身内を放っておくことは、俺達の道理に反する。
今回は……どうやら俺達の敗けらしい。

翼「…はぁ……全く、本当にあなたって人は……。仕方ありませんね……お付き合いしますよ。」

溜め息を吐きそう呟くと、翼が席を立った。
わらわらと他の連中も立ち上がる。
…結局会議の甲斐もなく、強行突破することになったようだ。
まぁ……今の俺達にはそれがあってるんだろうが……。
端でひーとにくっついてる音波の手がちょっと震えてるとか、それについて冷音が心配そうにしてるとか、こいつら気付いていないんじゃなかろうか。
…俺が言わないのも悪いか……。
あとできちんと気を回しておこう。

* * *

仲間達が東の洞窟へ行こうと準備を始める。
しかし、東の洞窟攻略の最中、少々面倒なことになろうとは……、この時の俺達は知りようがなかった。






- 56 -

*前次#



ページ:



[表紙へ]
[Ancient sage topへ]
[別館topへ]