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* * *
洞窟も中腹の辺り。
道中は平和そのもので、小雪と龍斗は未だに不毛な痴話喧嘩をしている。
…そういえば、こういうとき真っ先に何か言う筈の翼がさっきから静かだな。
勢いで突入したことに未だ頭を抱えている…と言うわけでもなさそうだが。
炎「翼…? 静かだけど…そろそろツッコミ入れなくていいの?」
側にいたひーとが話し掛ける。
しかしその聞き方はどうなんだよ。
翼「…いやぁ、ちょっと考え事がありまして。」
翼は後ろの方を歩きながら思案顔で答える。
ツッコミを入れる余裕もないらしい。
龍「おー? なんだよ?
何か考えるようなとこあったか?」
龍斗が怪訝そうに振り向いた。
翼「…いえ。
ちょっと妙だな、と。」
龍「妙? 何がだよ。」
足を止めて、翼に向き直る龍斗。
それにつられて全員が足を止める。
翼「…入り口でも思いましたけど、静かすぎるんですよ。
普通、ここがどこぞの軍の重要基地だとするなら、入り口を守る魔物がいたり、そこかしこに魔物とかがいるはずじゃないですか。
そもそも商人さんの話は、魔物と黒猫の亜獣人が飛び出してきて迷惑してる、みたいな話じゃありませんでしたか?」
翼は、洞窟の入り口にも、洞窟内部にも、何もいないのがおかしいと言いたいようだ。
確かに…龍斗たちの騒がしさでほぼ中和されてはいたが、不気味なほど洞窟内部は静かだ。
足音もしなければ、コウモリの一匹すらいやしない。
そして野生の魔物にすら未だに出くわしていない。
龍「そりゃ小説とかゲームの中でのハナシだろ? 現実なんてこんなもんなんだって、多分」
氷「でも、ゴールドグレードの刑務所が占領されていたとき、重要な場所には魔物の兵隊さんがいたわ? 翼の言うことも一理あると思うの。」
龍斗と翼の会話に、あいすが口を挟む。
すると龍斗が驚いたように、目を見開いた。
龍「はぁ!? オマエ刑務所になんの用事があったんだよ!?」
翼「…いや、まず刑務所が占拠されていたという事実に驚きましょうよそこは……。その話の詳しい説明は後で聞かせてもらうとして、ともかくこの状況から察するに、気付かれてる可能性も十分あるんじゃないでしょうか。」
呆れたように目を細め、龍斗を横目で見て溜め息を吐くと、翼は元の議題を定義し直した。
雪「んー、でも聖來と会ったのって今朝なんでしょ?
なら気付いてても準備する暇なんてないんじゃないの?」
雨「…いや……、腐ってもあいつらは軍だ。元々奇襲の準備くらいしてあってもおかしくはない。」
理「あたしも時雨と同意見だな。何の準備もしてないとは思えない。」
小雪の疑問に俺が首を横に振ると、理美火も賛同してくれた。
龍斗「でもよぉ、もう入っちまったわけだし、このまま行った方が格好も付くってもんだぜ?
もしかしたらその困ってたって言う商店のおっちゃん、店の物安く売ってくれるかもな?」
冗談混じりに笑う龍斗。
それを見て翼は憤慨する。
翼「そんな冗談言って笑ってる場合じゃ……」
"ギギィイイガガガガガガ"
それをそれを遮るかのように、耳障りな音が洞窟内を走った。
音「ひっ……!?」
炎「な、何!?」
振動する地面に、音波が身を竦め、ひーとが狼狽える。
雨「……っ」
俺はその頭に響くような鉄の音を耐えつつ、必死に状況を判断しようとしていた。
鉄……?
そう、これは鉄だ。
言うなれば機械の歯車が擦り合うような……。
雨「(……歯車……?)」
歯車なら考えられるのは何かのギミック。
それもかなり大掛かりな……。
狐「うわぁ!?」
狐が珍しくすっとんきょうな声を上げた。
真「き、狐!?」
狐「上から何か来よるで!!」
揺れの中、狐が指を差した先を見ると、先程まで岩壁だった筈のその天井に、如何にも機械仕掛けの四角い穴があった。
そこから這い出してきたのは、石とも鉄とも銀とも付かない素材でできた、それでいて鉄のような光沢を帯びている、何処かの城にでも飾ってありそうな甲冑。
雪「よ、鎧!?」
龍「か、かっけぇ!!」
目を見開く小雪とは対照的に、目を輝かせる龍斗。
…おいそこの阿呆、今はその反応、間違ってると思うんだが……。
?「あーあー、マイクのテストOK。聞こえてるかなー。侵入者の諸君」
聞こえてきたのは、声変わりを迎えていないひーとよりは低い声だが、おおよそ大人のものではないと言える声だった。
桃「こ、子供……?」
?「その反応、聞こえてるみたいで何よりだよ。音声テストはOKだな。」
眉をひそめる桃花に、何とも緊張感のない返答をしてくる声。
どうやら音声はそこの鎧から流れているらしい。
真「音声テスト……?」
?「おっと、こっちの話さお客人。
それにしてもここに侵入してくるなんて、随分と勇気あるねお兄さん達」
聞きなれない言葉に首をかしげる真。
それを軽く流して、声は話題を変える。
龍「へっ、それほどでもあるぜ」
翼「褒められてないですよ龍斗さん。……やっぱり勘付かれてたんじゃないですか。」
?「あはは、随分と愉快な人たちだね。そこの銀髪のお兄さんはいい推理力してるよ。」
子供らしく一笑する声。
しかし鎧から音声が流れてきているせいか、鎧がしゃべってるようにしか見えない。
?「それにしても数が多いなぁ、僕一人じゃ手に余る。
だから……、」
鎧は声に合わせてやれやれ、と肩を竦めて首を振る動作をする。
そして、人差し指を立て、左へ傾ける。
…妙に人間っぽい動きだな。
?「数を減らさせてもらうね☆」
どうにもふざけてるとしか思えないその一言を聞いたと同時に、鎧が片足をとんっと軽く鳴らした。
そしてその次の瞬間、"俺達の人数が減った"
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