12
「!?」
周囲を見回す。
音波、真、翼、桃花の四人がいない。
俺は奴の動きに気を取られていたことに後悔した。
奴のあの妙に人間臭い動きは、一種の目暗ましだったんだろう。
雨「四人をどこへやった」
鎧を睨み付ける。
?「さあ、どこだろうね?」
嘲る鎧。
冷「…この駆動の早さ……まさか…
瞬間転送術式……?」
冷音が発したその聞きなれない単語に、音波が消えて狼狽えていたひーとが反応する。
炎「れ、冷音、何それ……?」
冷「…結構古い術式だよ。
…そういう能力とか、そういう素養とかがない人でも、瞬間移動を可能にする術式。
…今で言う、転移術式の先駆け。
…昔戦争があった頃は、兵器や兵を現地に送るのに使われていたって本に書いてあったけど……。
…転移術式が出来た現在は、その転送距離の短さからほとんど使われていないはず……。」
?「へぇ、よく知ってるね。
知ってるの僕の上司くらいなもんだと思ってたけど。」
鎧の声の主はおどけた調子で、しかし感心したように言った。
…流石術式マスターといったところか。
氷「四人を返しなさい」
俺と似たように鎧をにらむあいす。
?「やだなぁ、そんな怖い顔しないでよー……。
死んだりはしてないって。ちょっとおとなしくしてもらってるだけだからさー。」
理「その"ちょっと大人しく"が一番気になるところだって、わかって言ってるな? てめぇ。」
狐「さっさと居場所吐きぃよ、でないと痛い目見るで」
理美火が大鎌を取り出して突きつけ、狐も臨戦態勢へ入る。
?「まぁ待ってってばお姉さんたち。僕とゲームしようよ。」
雪「ゲーム?」
?「そうそう。ルールは簡単、今僕に連れ去られた四人のお客様を、君たちが助け出せたら君たちの勝ち。助け出せなかったら君たちの負け。」
訝しげに首をかしげる小雪に、鎧の声は嬉々として答える。
彼が提示した案は、確かに単純なものだった。
しかし…こちらの戦力に反して相手の戦力は未知数。
些か不利な条件だ。
鎧は"どうするー?"とまたもおどけたような態度をとる。
龍「上等じゃねェか。訊かれるまでもねェ。全員返してもらうぜ。」
龍斗がそう吼えた。
俺としても、仲間を拐われたままで逃げ帰るのは嫌だ。
…敵の策に乗る事になるのは癪だが。
?「それは参加するってことでいいんだね?」
龍「いいよな、オマエ等」
龍斗が全員の顔を見る。
狐「ええやん、乗ったろうやないの。」
雨「それしか手も無さそうだしな。」
狐が答え、俺がそれに頷くと、他のやつらも頷いた。
?「ふふふ、そう来なくちゃ。」
鎧はほくそ笑むようにそう言うと、勢いよく右腕を上に突き上げる。
?「じゃあ早速始めようか。
ミッションスタート〜!」
鎧の声が、洞窟内に反響した。
* * *
-side.???-
?「……ふう。」
洞窟内のある一室で、山吹色の目をした少年が、薄茶色の髪につけていたマイクつきヘッドホンを外して息を吐いた。
どうやら先程の甲冑の声の正体は彼らしい。
「……」
その後ろには時雨達と年の変わらない黒猫の亜獣人が控えており、なにやら複雑そうな面持ちで少年を見ている。
?「どうしたの?」
「あいつらが来るなんて聞いてない。」
振り返って余裕ぶったように微笑む少年に、黒猫の少年はその面持ちのままに答える。
?「いや、予測できてたことでしょう?
意外と来るのが早かったなぁとは思うけど。
ま、僕はそれ以前に、貴方とあの人達が知り合いだって言うことに驚きを禁じ得ないんだけど。
どういうご関係なの?」
背後にある複数のモニター。
その一つに目を向けて少年は言う。
そのモニターには先程まで甲冑と会話していた彼等が写っていた。
「…………話す義理なんて無い」
目を伏せる黒猫の少年。
?「あはは、それもそうか。」
「けど、捕まえるのは納得いかない。」
笑う少年を、黒猫は真っ直ぐに見詰めた。
?「…僕もこういうのはあんまり趣味じゃないんだけどね。
…不法侵入されちゃったら、捕まえないわけにはいかないでしょ。
…まぁ……これも仕事だから。」
少年も少年で、のらりくらりと言ったあと、最後に諦めたような口振りでごちた。
「…………お前、この仕事向いてないにゃ」
黒猫の少年は、少しだけ普段の口調に戻して言う。
?「あはは、上司にもよく言われるよ。 けどここ以外に働き口がなくってね。
でもゲストにまで言われると思わなかったなぁ。 …さてと君にはこれを渡しておこうか。」
空笑いをした後、黒猫の少年に鍵を手渡す少年。
「…これは?」
?「あの人達の仲間が入ってる牢の鍵。 あの人達が辿り着いたらつかっていいよ。
あ、牢の鍵は二本揃わないと開かないから、先に逃がそうとしても無駄だよ。」
少年は、回転する座椅子ごと背を向ける。
「…お前、ホントに何考えてるんだ?」
?「何を考えてるって訳でもないよ。 強いて言えば、僕は直轄の上司の命に従ってるだけさ。
…あ、このゲームが終わったら、貴方も自由にしていいから。 じゃ、聖來さん。
それ持って牢の場所まで行ってねー。」
背を向けたまま、ヒラヒラと手を振る少年を訝しみつつ、黒猫……聖來は牢へと向かう。
?「…ほんっと、僕ってば何考えてるんだろうなぁ。」
一人残った少年は、モニターに写る時雨達を見ながら、自嘲気味に笑った。
時雨達は、どうやら分岐点に差し掛かったらしい。
?「さてと、僕もお仕事しようかな。」
少年はそう呟くと、再びヘッドホンを装着し、マイクに向かって口を開いた。
?「ハロー?お客人、首尾はどうかな?」
少年の声が、分岐点にいる彼等に響いた。
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