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-伊集院邸-
伊集院邸は街の入り口から少し細かい路地を曲がった先に見える、このゴールドグレードでも珍しい「純和風」の大きな建物だ。
住んでいる彼女達も常に和装で、確か実家は極東の和国にあると聞いたことがある。
あいす曰く、俺達がこの街に住むことになる以前から住んでいるらしい。

雨「……こりゃひでぇな……。」

入り組んだ路地を抜け、桃花の家へとたどり着くと、そこは黒い霧によって覆い尽くされていた。
その最も霧の濃い場所が桃花の家だろう。
家の形がギリギリ見える状態だからよく分からないがな。

氷「桃花ちゃん!一体何があったの!?」

あいすは家の前で顔面蒼白になってる桃花を見つけ、話しかけた。
桃花は普段通り、薄紫の色地に桜の絵柄の入った和服を身に纏っている。

桃「あいすちゃん!来てくれたのね!?」

桃花の顔色が若干もとに戻った。
きっとホッとしたのだろう。

雨「で、どうしてこんな事になったか、話せるか?」

俺がそう訊くと、桃花の表情が曇った。

桃「うん……、よくわからないけど……家はセキュリティが厳しいはずなのに、稽古場に魔物が現れたの。
それは何とか倒して、外の様子を見ようと渡り廊下に出たら、もう其処からこの有り様で……。ビスカスと一緒に逃げてきたんだけど、はぐれちゃったみたいで……。」

ビ「ひぇぇぇぇー!おーたーすーけー!」

桃花の声を遮るようにビスカスの叫び声が聞こえてきた。
あの黒い霧の中からだ……。

雨「入るしか無さそうだな…。」

……気は進まないが。

桃「わ、私もいく!! 道中の案内は任せて!」

桃花がいた方が、色々と安心か。
彼女に伊集院邸の案内を任せることにし、俺達は突入した。

〔伊集院 桃花がパーティーに加わりました。〕

-伊集院邸・玄関-

俺達は、中に入るなり絶句した。
何故かって?
そりゃ入り口に入るなり、魔物は何匹も彷徨いているし、夜であることと、この黒い霧も相まって、かなり見通しが悪いってところからだな。
入り口の時点でこれだけ魔物がいるんだ。
まだ更にいると考えても間違いはない。
一応確かに広いとはいえ、単なる邸宅のはずなんだがな……。

雨「……こりゃ……苦労しそうだな……。」

思わずため息をついてしまった。

炎「あーもう!!陰気臭いなー!こういうの苦手ー!」

ひーともこういった場所はあまり得意ではないようだ。
だがひーと、幾らそうでもここは人の家なんだ。
そういう発言は心のなかに仕舞っておけ。

氷「この霧……。」

ポツリとあいすが何か呟いた。

雨「どうした?」

氷「……この霧、湿気を含んでいないの。」

……湿気を含んでない……?
確かに霧特有のベタつきやジトりとした感覚は無い。

桃「……? でも煙とかって感じでもないわよ?」

桃花もそう言って首をかしげる。
そうだ、煙たさも臭いもない。
いや、でもどこか…。

炎「ねぇ〜……、早くビスカス見つけて出ようよー……。なんか嫌だよここー……。」

ひーとが少し怯えた声で、俺の腕にすがりついてきた。
…そうだな、今は考えるよりもそっちの方が優先だろう。
…進むか…。

      * * *

ビ「うぎゃああぁああ!!!」

もう一度ビスカスの悲鳴を聞いたのは、伊集院邸内をしばらく歩きまわった後だった。
声が聞こえてきたのは前方。
そこは黒い霧が一番濃く立ち込めている場所だった。

氷「……あの霧の中からね……。」

桃「この奥は稽古場よ。……こんなところまで戻っていたなんて……。」

炎「やっと見つかった……。」

真剣な面持ちの二人に、少々涙目なひーと。
どうやら彼は、物陰からいきなり飛び出してくる"もの"に免疫がないようで、道中に物陰から飛び出してきた魔物やらなにやらに絶叫していた。
もしかしたら暗い場所自体駄目なのかもしれなかったが、彼自身が何も言わないので何も聞かなかった。
……苦手だったとしても、一人で帰すわけにもいかないし、誰かが入り口まで送っていけるような環境でもないしな。
まぁ、さっさと終わらせてさっさと帰る方が建設的だったわけだ。

雨「……行くぞ。」

そんな彼等に声を掛け、黒い霧の中を進んでいく。
一本道なのが幸いしたな、霧で視界が悪くて思うように動けない。
ビスカスを発見したのは一番奥にあるすべて木材でできた大きな部屋。
なるほど、稽古場だな。
ビスカスは、そのハイビスカスのような体を部屋の隅で震わせていて、さらに周りにはサイのような魔物が三体。
非常にマズイ状況だ。
そして三体の内一体がこちらを振り向いた。
……気付かれたか……。

そこからは速かった。
先に気づいた一体がこちら側に向きを変えると、もう二体もこちら側に向きを変えた。

炎「うわぁ!気付かれた!」

雨「構えろ!こっちに来るぞ!!」

そして俺たちはサイっぽいモンスターとの戦闘に突入した。
後にこの魔物の名前が、ホーンブロンズであると発覚する。

       * * *

炎「くっらえー!」

戦闘に突入するなりひーとはほのおを纏わせたトンファー(ファイアークラッシュと言うらしい)をサイっぽい魔物1体の脳天にぶちこんだ。
どうやら急所に当たったらしく、そのサイっぽい魔物は息絶えた。
おお、すげぇな……ひーと……。
とかひーとの攻撃に見入ってる場合じゃ無かった。

雨「はあっ!!」

俺は商人である父からパクっt……違う。
教えてもらった、三度に渡って敵を斬りつける技、「迅狼斬ジンロウザン」を二匹目のサイっぽい魔物に仕掛けた。
……ちっ……急所は外したか……。
俺の攻撃のあと、サイっぽい魔物達は右下から左上に角を振り上げる技と、突進をしてきたが、すんでのところで往なしたので、そこまでのダメージは無かった。

桃「行けっ!」

桃花が「桜草花オウソウカ」という技を繰り出した。
桜吹雪が舞う衝撃波は先ほど俺が攻撃を仕掛けた奴に当たり、その隣の奴にも当たった。
どうやらこれは全体攻撃らしい。
二度攻撃を当てたサイっぽい魔物は倒れ、残り1体になった。
……ん?
最後の1体が光り出したぞ……。
どんどん光が強くなっていく……。

……まさか!!

氷「……!!まずいわ、爆発する気よ!!」

炎「えぇ!?」

あいすの察したらしい焦りの声に、ひーとが狼狽える。
爆発の規模はわからないが、流石に正面から喰らったら死ぬ。
何か隠れるものを探したが、稽古場にはそういった物はない。

桃「……! 大地よ、壁を成せ!!フェルスヴァント!!」

何かを考えていた桃花が、地術を詠唱し、大体四人がすっぽり隠れられる程度の壁を形成した。
……なるほど、それで爆発を防ごうというわけか。隠れ場所がないなら作ればいいと。

桃「隠れて!!早く!!!」

炎「ほ、ホントに大丈夫なの!?」

雨「つべこべ言うな!!隠れるぞ!!」

驚いてどよめくひーとを抱え、岩壁の影へ滑り込む。
桃花の近くにいたあいすは既に隠れていて、桃花は俺達が隠れたのを確認すると、しゃがみ込んで隠れる。
ドォン、と低い音がし、地面が揺れたのは、その直後の事だった。







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