13
* * *
あの後、あの喋る鎧をしばらく調べてみたが、特に何の変哲もなく、何の仕掛けもなかった。
中に小型スピーカーでも仕込んであるのかと思ったんだがそんな様子もない。
一体どこから声を流していたんだろうか……?
そんな疑問に頭をひねりつつ、暫く奥へ進むと、二股に分かれた道に到着した。
狐「おお?なんや?分かれ道か?」
狐が後ろから顔をだして、左右にある道を交互に見る。
龍「んだよ、めんどくせェことしやがんなー。」
眉間にしわを寄せる龍斗。
…まあこのあたりは…洞窟の構造上の問題だと思うが……。
──ピーガガガガガガ……
…どこからか機械の起動音のような、古めの通信機の音声ノイズのような音が聞こえてくる。
どうやら分かれ道の真ん中にある柱の壁についた音声装置からのようだ。
?「ハロー?お客人、首尾はどうかな?」
聞こえてきた声は、さっきの鎧と同じ声だ。
?「お?そこは分かれ道だねー、じゃあここからの説明をしなくちゃね!」
…ここからの説明?
何のことだ……?
?「これから皆さんには、お仲間のいる鉄格子の鍵を開けるために、鍵を取りに行ってもらうよ!
鍵は双方に一つずつ用意してあるから、別れるもよし、纏めて行くもよし。
好きにやってねー!
ああ、鉄格子は鍵二本揃わないと開かないから、そこのところよろしく。」
どうやら相手は本当にゲーム感覚らしい。
理「テメェ、本当にゲーム感覚だな」
?「えー、だってゲームだし……」
雪「こっちの仲間連れて行っておいて、ゲーム感覚っていうのがムカつくって言ってるのよ!」
理美火と小雪が音声装置をにらむ。
?「ちょっとーそんな怖い顔で睨まないでよー。なんでそんなに怖いのキミ達…。」
声が少し引いたように言う。
?「そもそもさぁ、キミ達がここに不法侵入してきたのがいけないんじゃない?
勝手に入ってきたんなら、捕まえられたって仕方ないよね?」
……ごもっともだった。
まあ確かに勝手に入ったのは俺達だ。
それを不法侵入だというんなら、確かにそれはこちらが悪いかもしれない。
……だが。
雨「確かに勝手に入ったのは俺達かもしれない。けど勝手に入ったのが悪いって指摘するんなら、なぜ態々ここの入り口に魔物を配備して、ゴールドグレードへの流通を妨害するような真似をした?
そんなことをしなければ、今頃俺達がここに来ることもなかったんじゃないのか?」
?「そりゃあそれが僕たちの仕事だもの。
いわゆるあの街を制圧出来なかったラザフォードの尻拭いってやつでさ。
……あ、そういえばラザフォードの言ってた奴の外見に酷似してるねお兄さん。
もしかしてラザフォードが失敗したのってキミ達のせいなのかな?」
どうやらここにもラザフォードから情報が回っていたらしい。
ってことはもう魔王軍確定か。
?「まあいいや、それを確かめるのは僕の仕事じゃないし。
それはさておき、鍵は一筋縄じゃいかないようになってるから、まあせいぜい怪我しないように気を付けて。
ああ、あと捕虜の皆さんは丁重におもてなしさせてもらってるから、心配しないでね。
じゃあねー。」
──ブチッ
…音声が聞こえなくなった。
雪「何なんなのよあれ」
理「……でもまあ確かに、勝手に入ったのはあたし等だしな……流通のストップ云々は向こうの仕業だって確定したけど。」
腑に落ちない様子の面々。
……かく言う俺も腑に落ちてはいない。
彼はああ言ったが、正直言って勝手に入って来たとかいうんだったら、流通の妨害をしてた時と同じように、魔物でも立てておけばいいのにと思わないでもない。
これに関しては本当に勝手に入り込んだ俺達の過失もあるため、屁理屈と言われても仕方ないとは思うが……。
しかしこの点においてやはり気になるのは、入口がもぬけの殻だったこと。
入口になにもいない状態にしておくのは、重要な施設だとするんなら非常に無防備だ。
どうぞ入ってくださいとでも言っているようなものだろう。
それに、あの鎧のギミックのような大掛かりな装置が作れるんなら、シャッターや門ぐらいあってもおかしくはないはず。
翼が誘い込まれたんじゃないか?≠ニ不安になっていたが、奴らが態と見張りを無くしたんだとすると、あながちその不安は間違いじゃなかったのかもしれない。
そしてこの洞窟の使用が許可のない物……つまり不法占拠だった場合、これはルミナス王国の騎士達の仕事になる。
騎士が動いてすらいないってことは、まさか国が許可を出したんだろうか?
……嫌な予感しかしないな。
雪「まったくもー!!!龍斗が強行突破なんてしようなんて言うから!!」
龍「オレのせいかよ!?」
雪「言いだしっぺがアンタなんだからアンタのせいでしょーが!!」
龍斗と小雪がまた喧嘩を始めた。
……状況を見て喧嘩しろよ…小雪が一言言いたい気持ちもわからなくはないが…。
氷「二人とも、喧嘩してる場合かしら。
ここでぐだぐだ言ってても、四人は戻ってこないでしょう。」
あいすも少し厳しい口調だ。
どうやら呆れているらしい。
まあ正直俺も呆れる。
雪「だって龍斗がいけないんじゃない!突入なんてしなきゃこんなことには……」
理「まあまあまあまあ!!!! 落ち着けよ!! な! ここで喧嘩してもいいことないって!!」
声を荒げる小雪を、理美火が止めに入った。
彼女も一緒に龍斗を責め出すかと思ったが……どうやら冷静な判断はできるらしい。
狐「ともかく、や。鍵取りに別れるか皆で行くか、それ先に決めようやないの。反省会は事が終わってからでもいくらでもできるやろ?」
…そうだな。
とにかく、ここをどうにか越えて四人を助けなくては。
雪「ユキってば龍斗と一緒は嫌ですからね!!」
小雪がまだなんか言ってるが……、スルーで行こう。
* * *
-side.牢獄-
翼「…してやられましたね」
額に手を当てて、翼はため息をついた。
瞬間転送術式で転送された、音波、真、翼、桃花の四人は、岩と鉄格子で囲われた牢獄のような場所に閉じ込められている。
しかし不自然なことにその地面にはカーペットが敷かれていた。
桃「まさか瞬間移動系の術式を使われるとは思わなかったわ…」
翼「…えぇ…完全に用心不足でした…。
…(それにしてもあの術式は…本来よく使われている転移術式とは駆動の早さが違った…。
今は廃止になった術式の一つに…これに該当するものがあったような…)」
困惑した様子の桃花。
翼は自分が不甲斐ないと言いたげな表情で目を伏せていつつ、先程の術式について考察していた。
そのすぐ側で真が、鉄格子を蹴破ろうと奮闘していたりするが、鉄格子はびくともしない。
どうやら相当な強度らしい。
真「…ちっ…固いな…この鉄格子……僕じゃまだ修行が足りないや…ごめんみんな…」
そして彼はそう言って申し訳なさそうにした。
桃「(まさか真君が最初に破壊を試みるなんて)」
桃花は驚きを隠せないようだ。
翼「…真くんが蹴破るの試みるとは思いませんでしたよ。」
真「え、そう…なの?」
翼「えぇ。 そうですね、今のでちょっと元気出ました。 駄目ですね、前向きにいかなきゃ。」
真「な、なんで元気になったのかはわからないけど、元気になってくれたんならよかったよ。」
その行動が翼の反省ムードに区切りをつけたらしく、彼は苦笑した。
対する真はなぜ元気になったのか見当もついていない様子だが、それならいいやと頷く。
音「…提案なんだけど…あたしの音術で真さんの足を強化して、もう一回やってみたらどうかな?」
桃「あぁ…音波ちゃんまでとんでもなくアグレッシブに…。」
?「ちょっとちょっとー、おとなしくしててもらわなきゃ困るよお客人。」
音波の発言に、桃花が軽く頭を抱えたところで、天井際に設置してあるスピーカーから、先ほどの鎧と同じ声が響く。
音「気づかれた!?」
翼「おや、見てたんですね?」
露骨に動揺する音波とは正反対に、静かな笑みを浮かべてスピーカーの方へ視線を向ける翼。
?「そりゃあね?その辺にカメラあるでしょ?そこから見えてるよ、全部。」
翼「それは盲点でしたね。カメラの確認まではしてませんでした。」
翼は、見られているとは気付かなかったということを示しつつ、やや大げさに額を抑える。
?「ふーん?まあ気が付かなかったんなら仕方ないや。
ほら、そこ…キミ達の後ろに、テーブルとお茶とケーキが置いてあるでしょ?
寛いでっていいよ。」
言われて、背後を振り返る一同。
するとそこには、テーブルクロスの掛かった丸いテーブル、人数分の椅子、ティーセット一式と、ケーキの詰め合わせセットが並べてあった。
宛らどこかのカフェのようである。
一同「「…………」」
唖然とする一同。
翼「……(何故ケーキセット……というか半ば術式でここまで無理やり運んできておいて、これはどういうことなんだ?そして寛げ?この状況で?しかしこれはどう見ても罠じゃないか。
ああ、ひーととかがここにいなくてよかった。彼がいたなら真っ先に食べだしていたはずだ。
ホントに良かった。)
……、敵が用意したものなんて、食べられるわけがないじゃないですか」
あれこれと考えつつ、それでも相手のペースに呑まれまいと、翼は言う。
?「ああ。安心してよ、毒とか入ってないからさ。あー、そう言っても信用ならないか。
まあ何でもいいけど、怪我だけはしないでね?お迎えが来るまで待ってたらいいと思うよ。
……さて、そろそろかな?」
その返答を気にも留めない様子で、適当な空気を醸し出す声。
そして何かを待っていたかのような言葉を呟く。
桃「そろそろって一体……」
桃花が問いかけたそれに少し遅い形で、部屋の入口に人影が現れる。
黒髪に黒い猫の耳、そしてネイビーブルーをした瞳。
桃「…聖來…!」
驚いた様子で眼を見開く桃花。
何やら申し訳なさそうに目を逸らす彼。
その様相で、噂の正体が彼らの中で確信になった。
黒猫≠フ正体は、同級生の聖來その人なのだと。
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