14
* * *
-石の巨人-
…結局、数分ほど揉めた後、俺達はこの洞窟を二手に分かれて攻略することにした。
俺、あいす、狐、龍斗は右ルート、ひーと、冷音、小雪、理美火は左ルートを行く。
龍斗と一緒は嫌とごねる小雪を理美火に託したが、あっちは大丈夫だろうか?
…まあ、理美火は割としっかりしてるし、大丈夫だろう。
学園でルームメイトだしな、あいつ等。
……しかし捕まった奴等は一体どこにいるんだ?
今のところそれらしい部屋は発見できていない。
あの分かれ道の真ん中の柱に何か細工でもしてあるんだろうか?
…いや、あれは仕込める厚さじゃない。
人一人も通れるような厚さじゃなかったから、きっとないな……。
こっちのルートは、確かに微妙に道が入り組んではいるが、隠し通路がありそうな感じではない。
となると残るは左のルートの先ってことになるが……そう考えるとあっちを彼女達に任せたのが今一度不安になる。
……いや、正確な不安要素は彼女達ではなく、一緒に行った中二二人だ。
冷音は大丈夫だとしても、何かしかのトラップを踏む可能性はひーとが一番高い。
龍「しっかしよぉ、小雪の奴、あれは言いすぎじゃねェ?まあ軽卒に飛び込んだのはオレが悪いかもしれねェけどよ。」
俺の横でグチグチ言っているこいつもまあ大概だが……今のところ特に何にも引っかかってはいない。
…何やら小雪に言われた一言が刺さっているらしく、頭の後ろに両手を回しながら歩いている。
龍「碌なことないって……」
この何を言われても気にしなさそうな龍斗が、一体何を言われたのかというと、「アンタといると碌なことがないわ!!」「もうさっさと家に帰りなさいよ!!」と言ったものなのだが、龍斗的には前者の一言が引っかかっているらしい。
…家に帰れ≠ヘさほど気にしていないっぽいが、あの場にもし翼がいたなら、「僕としてもそれが一番助かるんですけどね?」くらい言いそうだ。
狐「んー、まあ、ご愁傷様としか言いよう無いんやけど……これを機に小雪の言うスケベとかそういうの、直してみたらどうなん?」
龍「そいつは無理だな!」
そのボヤキを聞いて、率直な意見を述べる狐。
龍斗は全くそのあたりに関しては反省も改善もしようと思っていないらしく、逆に開き直った様子だった。
おおん……≠ニ狐は若干引いたような、もしくは手遅れだなと言いたげな様子で龍斗を見やる。
…本当、やれやれだな……。
氷「でもきっと、小雪も小雪で今頃言い過ぎたってしょんぼりしているはずよね。」
くすくすと愉快そうにあいすが笑う。
まあ、あいつの性格的にそうだろうな……。
龍斗には聞こえてないようだが。
…まったく、後悔するなら言わなきゃいいのにと思わんでもないが……きっとそれは言わぬが花って奴なんだろうな。
それに俺自身、言って後悔したことがないわけでもないし。
人の事は言えない。
狐「ん、何や話してるうちに、奥に着いてもうたみたいやで?」
見ると、石造りで出来た少し広めの空間に、ぽつんと石の人形みたいな奴が鎮座している。
狐の言った通り、如何やら俺達は右ルートの最奥に着いてしまったらしい。
その人形の、両肩に一本ずつ付いた角のような部分に、鍵が引っ掛かっていた。
おそらくあれが二本ある鍵のうちの一本だろう。
そこまで見たあとで、ふと、昔何かの小説で読んだことがあるのを思い出した。今目の前に鎮座するそれと容姿の似た、石の巨人の話を。
あれは…確かゴーレムとかいう奴だったか……?
…待てよ、よく見るとこいつ、俺んちの地下道で戦った鉄の人形みたいなやつと形状が似てるような……?
龍「おお?あれが鍵か?」
雨「おい龍斗、不用意に近づくな……」
揚々とゴーレムに近づいていく龍斗を止めようと声をかける……が、一歩遅かったらしい。
ゴーレムが目に光を宿し、その石の体が動き出す。
龍「うおおおおお!?なんだこれ!!すっげぇ!!」
龍斗はやや興奮気味にゴーレムを見上げる。
その体躯はおおよそ3mほどで、どこぞで戦ったギガントロスほどのデカさではない。
しかし額に埋め込まれた輝石からフォルトが循環されているらしく、その巨体が振り回す腕の速さは、そいつらとは段違いだった。
狐「うわっとっと!!!なんて力や!!!」
振り下ろされたその岩の拳は、狐の方に行ったらしい。
狐はすんでのところでそれをよけたが、拳の当たった地面は軽くクレーターができていた。
…当たったら無事じゃあ済まなそうだな……。
龍「こ、こいつはすげえ破壊力だな……」
地面に空いた穴を見て、冷や汗を垂らす龍斗。
流石に不味いと悟ったらしい。
氷「でもあの肩に掛かった鍵を取らないことには、向こうに合流できないわ。」
剣を取り出してあいすが言う。
確かにその通りだが……どうやって奪う?
狐「当たり前やん、ぶったおして分捕るで!!!」
…だろうな…そう言うと思ったよ……。
狐がそう威勢よく言ったところで、ゴーレムも大きく威嚇の体勢をする。
そうして俺達は、ゴーレムとの戦闘に身を投じるのだった。
* * *
-side.左ルート-
雪「ほんっと龍斗ってば傍迷惑よね!!!」
ふんっ≠ニ鼻を鳴らしながら、むすっとした様子で小雪が言う。
彼女達は現在、時雨達のルートとは反対側のルートを歩いていた。
炎「小雪ってばまだ言ってるのー?」
ひーとはうんざりとした様子で顔をゆがめる。
雪「だってそうじゃない。現にユキ達がこうやって迷惑をこうむっているわけだし。」
理「んー……、かといってあのまま放っておくこともできなかったわけだし、そもそもあたし等も強行突破でいいって言っちまったわけだから、あたし等があいつ一人を責めていいって訳でもないんじゃないか?」
尚も文句を言う小雪に、理美火が考えを述べる。
どうやら龍斗一人の責任ではないだろうと言いたいらしい。
理「て言うかお前、あの話し合いの時に全く話に入って来なかっただろ。」
雪「そ、それは……」
理「入ってこなかったくせにぐだぐだ言うのは、違うと思うな、あたしは。」
言い澱む小雪をまっすぐ見つめる理美火。
こういう時にはっきり言うのが彼女である。
雪「…アンタ時雨さんの前でそのはっきりしたとこ見せたらいいんじゃないの?」
理「は!?し、時雨は今関係ないだろ!?つか話逸らすなし!!今は小雪と龍斗の事を話してるんだろ!!」
小雪の急な話の方向転換に、理美火は頬を赤くする。
炎「っていうか小雪もお姉ちゃんもさあ、素直にならなさすぎなんだよー。
ボクみたいに早く告っちゃえばいいのにー。」
ひーとはこの歳にして彼女持ちであるためこの余裕だ。
相手はもちろん音波である。
雪「う、うっさいわねリア充!!!」
彼がなんともなしに言った一言は、小雪に突き刺さってしまったらしく、彼女は顔を真っ赤にして照れながらに怒った。
理「あ、あああたしは別に、そんな気は全く……」
理美火は対象的に、いつもの彼女からは想像できないほどしおらしくなってしまい、その声も尻つぼみになってしまう。
今にも顔から火が出そうな様子で、頭からは湯気が上がって見えそうである。
炎「でもでも、お姉ちゃん時雨の前だとすっごい緊張するよね? 最近はだいぶ良くなってきたみたいだけど。」
理「そっ…それは…あれだ!あんなにこう、イケメンだと、き、緊張もするだろ!?」
炎「でもすっごいモテる志苑とかには全く緊張しないよね?」
雪「しかもイケメンって言っちゃってるしぃ?」
ニヤニヤする二人。
理美火は確かに時雨を目の前にすると、普段の竹を割ったような性格を上手く出せずに、空回りする傾向にある。
そして彼女の生来の勘違いの多さ、そして思い込みの激しさも災いし、残念な事に時雨からはボケ要員のように思われがちだ。
先の、冷音に斬り掛かった事案然り、彼女は頭に血が上る、もしくは不測の事態が起こると早とちりが多くなる。
彼女本人もそれは治さなくてはと思っており、なるべく落ち着いて物事を考えること、そして緊張しない為の努力も欠かさない。
……と言っても、結局は緊張してしまうのだから、その努力の効果はあるのかと問われれば、それは今の所無いに等しい。
理「こ、こんなくだらない話してないで、さっさと奥に進むぞ!!」
無理やりに話を切り、理美火は早足で先を歩いていく。
理美火はこれ以上誂われるを避けたいようだ。
雪「まったく、ほんっと素直じゃないわねー!」
炎「小雪だっておんなじようなものだと思うけどね?…ホントは言いすぎたって思ってるんでしょ?」
小雪がそんな背中を見ながら肩を竦める。
その傍らからひょこりと顔を出し、ひーとが笑う。
雪「そ!そんなこと、ないわよ!!」
図星だったらしく、上ずった声を出す小雪。
小雪が長々と龍斗に関して口にしている時は、その大体が逆の意味だったり、後悔していたりする。
どうやら今回もその通りだったようだ。
炎「そお〜?ならいいけど。」
にまにましながらひーとが小雪を見る。
雪「〜〜〜〜〜っ!!!」
顔を真っ赤にする小雪。
理「おーい!!置いてくぞ!!!!」
前方から理美火の声。
雪「今行くわよ!!!!!!!!!!!!!!!」
小雪はづかづかと、理美火を追って歩いていく。
炎「うーん、なんでみんな素直になれないんだろう?ね、冷音。」
素直になった方が楽しいのに≠ニ首を振ると、ひーとは少し後ろを歩いていた冷音に話しかける。
冷「…え?う、うん……そうだね。」
困った顔の冷音。
何やら考え事をしていた様子だ。
炎「…また、なんか考え事?」
親友の異変を察知し、首をかしげるひーと。
冷「……(時雨お兄ちゃん達が遭遇した聖來さんとは、まだ遭遇してないな……。さっきの鎧の声の主も気になるし……でも、ひーとに言っても仕方ないし……今は、進むしかないかな……。)ううん、でも何でもないよ。」
炎「うーん、そっかぁ……なんかあったら、言うんだよ?ボクじゃだめなら、お姉ちゃんでもいいからさ。」
冷「…うん、ありがとう。大丈夫。」
冷音はそう言って、また考えながら歩き始めた。
炎「……んー……」
一つ腑に落ちない顔をして、ひーとはそれを追った。
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