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* * *

狐「ひぃー……こりゃしんどかったなー……」

地面に尻餅をつくようにへたり込む狐。
俺達はどうにかあのゴーレムを倒すことに成功し、鍵を回収した。

龍「いやーしっかしよお、あんな恐ろしいもんがこの洞窟にあるとはなぁ。」

龍斗が、くるくると鍵のついたキーリングを指で回して遊んでいる。
全く、そんなことしてどっかにすっ飛ばしたりすんなよ?

龍「ひーとじゃあるまいし、んなことしねェっつの。」

そう言って鍵を仕舞いつつ、彼は不服そうな顔をする。
どうやら彼はまだ体力に余裕があるらしい。
大体体育とかそういう場面でもこいつの体力の多さには感服するんだが…本当に、そのスタミナを是非とも分けてもらいたいものだ……。
そういえば以前、部活の後輩に「どうしてそんなに体力があるのか?」と聞かれたときに、彼は「何もしてない」と答えたらしい。
…毎回思うんだが、こいつの種族は本当に白の天使なんだろうか?
もっと別の何かなんじゃ?

狐「それにしてもあいす、ようあれの弱点が額に付いた石だって気が付きよったな?」

狐が、いまだに息の整わないあいすに話題を振る。
今回ゴーレムを倒せたのは彼女の、「額のあの輝石を狙って!!」という一言があったお蔭だ。
まあ明らかにあの輝石からフォルトが充填されていた様子だったので、もしかしたらとは思っていたが、やはりあいすの一言がなければ、もう少し時間がかかっていただろう。

氷「ふふ…、ゴーレムといえば…、額にある真理の文字が弱点だと相場が決まっているものよ…。
でも、このゴーレムにはその真理の文字はなかった…。
なら同じ位置にある輝石が代わり何じゃないかって…推察してみたの。
以前読んだ小説の知識なのだけれど…ね。」

なるほど、小説の知識だったか。
俺と知識の出所がほとんど一緒だった。
……これも双子の性という奴なんだろうか。
正直読んでるものも割と、昔は似たような方向性だったのを覚えている。
今はそれなりに別の方向だが。

――ガガガガ…

頭上から、あの通信機のノイズのような音が響く。
どうやら部屋の端に付いたスピーカーからのようだ。

?「お疲れ様ー!まさか僕のゴーレムを倒してしまうなんて、びっくりだね!!流石はラザフォードを退けただけはあるってところか。」

あの鎧……否、子供の声だ。

龍「おい!!!こんな面倒くせェことやめて、いい加減姿現しやがれ!!」

狐「せやで!!それに真たちもどこにおるんや!!」

?「やれやれ、せっかちな人たちだねー。もうすぐ会えるよ。
ああ、ゴーレムを倒したんなら、鍵はもう手に入ったみたいだね?」

龍斗と狐が、スピーカーをにらんで吼えるが、相手はどこ吹く風といった様子。
全く怯えてもいないどころか、この剣幕に怯んでさえいないようだった。

?「じゃあこれから、左の道に戻ってもらうよ。」

氷「左の道ですって?」

あいすが訝しげな顔をする。

?「うん、当たり前じゃないか、だってゲスト牢獄は左の道の奥にあるんだから。」

……なんだと……?
いや、やっぱりというべきか。
こっちのルートには隠し通路とかそういう物がなかったからな……。
……ということは……左に行った奴らはもう合流してるんだろうか?

?「そこの翠目のお兄さんはもう察しがついてたみたいだね?」

龍「は!?まじかよ!?」

感心した様子の声に、龍斗が驚いてこちらを振り向く。

雨「…まあ、途中に細工とかがないからそうなんだろうな、とは思っていた。
……しかし左に牢獄があるんなら、鍵はどうしてあるんだ?
あんたは、鍵が二本揃わないと開かないと、さっき言っていたはずだが。」

?「ああ、もう一本の鍵はねー、……まあ行けばわかると思うよ。」

……なんか含みのある言い方だな。

狐「なんやねん、言うんなら最後まで言いいよ。」

?「気にしない気にしない、ま、早く行きなよ。待ってるからさ。
……じゃあね☆」

――ブチッ

狐の追及に答えず、向こうはまた音声を切ったようだ。

氷「なんだか私達だけとてつもない労力を使った気がするわね。」

あいすがぼやく。
……確かに、左に牢獄があるっていうのが初めの時点でわかってれば、また別の作戦を立てたかもしれない。
でもまあ、鍵は手に入ったし、骨折り損というところまでは行ってないか。

龍「でもまだなんかあるんじゃね?さっきの奴の言い方的に。
とりあえず左に行ってみるしかねェって。
んであの調子こいたガキに一発お灸を据えてやろうぜ。」

龍斗は腹の虫がおさまらないらしい。
……魔王軍所属確定な少年をぶん殴れるかどうかはさておき、左に行こうという案には賛成だ。

狐「せやな、左に移動しよか。
んー……それにしても、あの声の奴が何考えてんのか、なんかだんだんわからんくなって来たわ……。」

首を傾げつつ、狐が部屋の入口へ足を向ける。
彼女の言うとおり、俺も、奴が何を考えてるのか全く分からない。
一体何がしたいんだ……?

* * *

分岐した道まで戻り、左ルート側の道を進む。
どうやら道中に現れる魔物以外は、トラップなんかは仕掛けられていないようで、割とすんなりと行くことができた。
そして、道の最奥に部屋の入り口が現れると、その部屋にいる小雪や理美火達の背中が見えた。

……ん?
あの一緒にいる黒い猫耳は……。

龍「お!?あれ聖來じゃねェか!?」

龍斗が言う。
やっぱりそうか……。
……というかなんかあいつ等、妙にのんびりしてるような。
聖來はちょっと離れてるみたいだが……なんか牢獄っていう感じじゃないな。

龍「ともかく合流しようぜ!おーい!!向こうの鍵とってきたぜー」

雪「ちょっと龍斗!!遅いじゃない!!あっ、時雨さんお疲れ様です〜!って何で四人とも割とボロボロなの!?」

合流した途端にこの扱いの差を露呈させる小雪。
猫なで声はさておき、この切り替えの早さは見習うべきかもしれないと思えてきた。
その言い方からして、如何やら四人とも怪我はなさそうだ。

狐「はっはっはー、ちょっと向こうのボスに苦戦してなー。
みんな無事で何よりやわ。
ってか、牢獄組はなんでティーパーティしとるん?」

狐がそう返しつつツッコミを入れる。
……本当だ、部屋に入ってから牢獄の方を見てなかったから気が付かなかったが……丸テーブルにティーポットやらケーキソーサーやらが置いてある。
お前ら何でティータイムしてるんだ……?
仮にも敵地だぞ。
というか何故ティーセット……まさか本当にもてなされてたとでも言うのか……?
魔王軍って一体……。

翼「失礼ですね、ティーパーティもティータイムもしてないですよ。
これは入った時に用意されてて……、ともかく全く手は付けてないですからね。」

鉄格子の内側で翼が言う。
まあ、そうだよな、食わないよな、安心した。
ひーとが後ろで“勿体無いなぁ…”と呟いたのが聞こえた気がしたが…お前…絶対に食うなよ?

翼「ともかく鍵揃ったんならここ開けてくださいよ。」

どうやらもう事情は聞いていたらしい。
しかしこっちの鍵はどこにあるんだ?

理「えっと、それがだな……聖來が持ってるらしいんだ」

理美火が一歩前に出て少し困ったように牢獄の前にいる聖來を見て言う。
彼はなんだか申し訳なさそうな顔をして突っ立っていた。
……なんで聖來が鍵を?
まあそれはいいか。
ともかく四人を牢から出さなくては。

雨「聖來、鍵を渡してくれないか」

聖「……っ、……、これ」

聖來は少しピクリとして、恐る恐るといった様子で鍵を差し出した。
……何か怯えられてるんだが……。
少し困ったので、後ろを振り向いてみると、「自分にも同じ反応だった」というように、理美火が首を振った。
……なるほど、これは俺が話しかけたらマズかったかもしれない。

桃「……聖來、謝りたいことがあるんでしょ?なら謝らないと。」

桃花が牢獄の中から聖來の背後に立って、そう耳打ちしたのが聞こえた。
事情があるっぽいんだが……俺達、いや、それこそ左ルートメンバーが来る前に何かあったんだろうか?

聖「……えっと、その……」

耳を下げた状態で目線を右往左往させる聖來。

聖「さっきは!!逃げてごめんなさい!!!!!」

そして彼は、勢いよく頭を下げた。




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