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* * *
「へっ、もう終わりか?」
リュートがハゲ反り込みの男の手下を一人、踏みつけて吠える。
三人の周りには、無惨にも敗北した手下が散らばっていた。
緑髪の青年が相手をした手下は、完膚なきまでに叩きのめされている。
対照的に、シグマが相手をした手下は、外傷のない代わりに、骨折や内出血が出来ており、ある意味凄まじい。どうやら手下の一人が彼の頬をナイフで斬りつけてしまったのがいけなかった様だ。
リュートはと言えば、手下達にも手加減無しで、顔がたんこぶでボコボコになるほどまでに殴り倒している。
「…だらしねぇなぁ、あんたの手下。」
緑髪の青年は相手に冷たい一瞥をくれた。
「ちっ…よくもやってくれたな…!!」
少なからず傷をおっていた入れ墨の男が、よろよろしながら立ち上がった。
「…まだやるのか?リュート。」
呆れた目でいい放ったシグマ。
「仕方ねぇだろ。オレもコイツやんなきゃ気が済まねぇし。」
この入れ墨の男は何をしたのか、リュートは彼からは久しぶりに見る黒オーラを背後から発しながら、ごく冷静な顔つきで言った。
「…はぁ、さっさと終わらせろよ?」
シグマはこの入れ墨の男に一度だけ喧嘩を売られたことがあり、返り討ちにした過去を持つ。
その為か、少し退屈そうだ。
「おう。」
リュートは短く答え、拳を構えた。
最後の花ぐらいは彼に取らせようと思ったのか、緑髪の青年も、あくびを噛み殺しながら見守っていた。
「すかした顔してんじゃねぇぞゴルァ!!」
入れ墨の男は何を思ったのかそう叫びながら、リュートではなくシグマの方へと殴りかかっていった。
隣にいた緑髪の青年が反応したが、シグマがコンマの差でそれを避け、リュートの方へ膝で蹴り飛ばした。
ヒットしたのは腹。
そのまま真っ直ぐに飛んでいき、リュートが更に殴り飛ばし、その先にあったドラム缶の山に当たりあえなくKOされた。
「…俺の方に飛んでくんなし…。」
心底迷惑そうな表情をしながら、シグマは倒れている相手に言った。
ふと、隣にいた緑髪の青年からの視線が気になる。
「…なんだ。」
「…お前、あったことあるだろ。」
正面を向きながら反応したシグマに、青年が予期せぬ発言をした。
「会うのは…二度目か?」
青年が、依頼で働いていた喫茶店の常連であることを思い出し、シグマが呟いた。しかし青年からは、否定の言葉が返ってきた。
「…三度目だけど?」
青年は訝しげな顔をしている。
「…そうだったか?」
完全に忘れているため、頭の上に疑問符を浮かべるシグマ。
「そうだよ、ずいぶん前に、街の入り口に出た魔物を一刀両断してたろ!!そん時にあってんだけど!!」
苛立ちの声をあげた青年。
数秒考える動作をして、シグマが思い出した。
「…あぁ、そんなことあったな。」
確かに一年ほど前、街に大型の魔物が攻めてきて、それを一刀両断したことが、彼の記憶にあった。
シグマにとっては、どうやらそんなことであったようだが、青年にとっては重要なことらしく、更に声を荒げた。
「そんなことあったな…。じゃねぇよ!!オレあんたに借り有るんだけど?」
「…借り?」
いまいちピンと来ないシグマ。
「だから!!そん時にオレがしくじって、お前がその魔物斬ったんだよ!!」
「…そういやそうだっけか。けど、俺は借りを作らした覚えはねぇから、気にしなくていい。」
さらっと言うシグマ。
しかし青年は下がらない。
「だから、それだとオレが納得いかねぇんだよ!!」
「…はぁ、仕方ねぇな…。」
面倒臭そうに項垂れるシグマ。
そして続けた。
「この先三日で俺を探し出せたら、別に借りを返してくれてもいい。けど、三日で探し出せなかったら諦めろ。」
「このままついて行きゃいいじゃん。」
「それは手抜きだ。そんなことするなら、借り返すのも面倒臭いだろ?」
「うっ…。」
口論の末、シグマは青年を言い負かした。
「…なぁ、思ったんだけどよ。」
リュートが申し訳なさそうに口を挟む。
「なんだよ。」
またもや面倒臭そうに返答をするシグマ。
「お前らさ、名乗りあってもいねぇのに、仲良さそうだよな。」
一抹の沈黙。
「そう言われれば、名乗ってなかったな。シグマリート・レノーだ。」
苦笑いしながら自己紹介するシグマ。
「え、あぁ、俺はカナタ・パウロニア。」
複雑そうに名乗る青年・カナタ。
「次いでにオレはリュート・グラルトールだ!!じゃあカナタ、またな。」
さらりと自己紹介をし、遊び友達とでも別れるかの様に、挨拶をしながら歩き出すリュート。
「…見つけられることを祈ってる。」
そうぽそりといい、リュートのあとを追うシグマ。
またも流れる沈黙。
「……見つけるったって、どこ探せってんだよ……。」
カナタは、そう呟き、項垂れた。
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